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アクアが入院してから何日経っただろう?その後も病院と店長は朝昼晩とマメにアクアの経過を報告しあい、突然言われた。
「もう大丈夫だろう。あいつ、生き延びたぞ。実は俺も病院も正直なところ本当はダメだと思っていた。しかし、奇跡的に生き延びたぞ。そこでだ、パルボはもう大丈夫だ、問題はその次の合併症のジステンバーが発症しないかどうかだ・・・
ジステンバーはパルボよりひどい、パルボは生き延びる確立があってもジステンバーは絶命的だ。
それを合併してないことを祈ろう。そしてもう少し病院で様子見させてくれ」
と言われた。
数日後、ジステンバーの疑いもなく退院できると報告を受けた。
その時の喜びは忘れない。きっとアクアが居なくなった期間は2週間ほど。
その日々がとんでもなく長く辛かった。何度も死の宣告をされ、生きた心地がしなかった。
もし、あの発症した日、アクアをほおって仕事へ行ってたら・・・あのとき店長がすぐ病院へ行けって言わなかったら・・・死の宣告をされて安楽死を選んでいたら・・・彼氏に励まされなければ・・・・・
色んな事が頭をよぎった。
そして、毎日アクアを心配してくれたショップの仲間たちのことも忘れない。
アクアは今でも「奇跡の子」と言われている。
当時の仲間に会うと必ず「アクアの奇跡」の話になる。
そして、それを乗り越えた生命力があるからすごく強い子に違いない。
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とりあえず、感染症を乗り越え、退院が決まったのだけれどここで店長と相談をした。
たしかにパルボは乗り越えた。
でも念のため、あと2週間は様子を見る必要があったらしい。
しかし、店長はこちらで管理をする事もできる。
しかしだ、仔犬の2週間とゆうのは貴重なものだ。
どうだ?おまえさえ良ければ家に連れて帰ってしっかり管理するか?と。
もちろんワクチンも打てない無抵抗状態だから私が店から菌を持ち帰ればすぐにアクアにも感染してしまう。
もちろん、反対もありえる。
私がアクアのパルボウイルスを店に持ち込む可能性もある。
とゆうことは、私が店から帰ったときと、家を出て店に行くたびに
自分自身を消毒しなくてはならないのだ。
店長はその危険を承知でアクアを連れて帰るか聞いてきた。
「おまえはもうペットがウイルスによって亡くなる悲しみを経験しただろう?その経験をこれからも生かしてみないか?お客さんの立場になってな。どっちにしても、免疫は出来たがあの子の体からパルボは半年は消えない。だからあの子を飼ってる以上、おまえは最低半年は消毒をしてから出勤しなくてはならない。それならもう今からでもあの子をしっかり管理するか?」
退院が決まった日、アクアを迎えに行って対面したときに驚いたことがある。
箱を開けて、ひょこっと顔を出したアクアの鼻が伸びていたのだ。
ダックスは鼻が長くなるものとは知っていたが、頭の中ではアクアはまだ入院させた当時のままの赤ん坊だと思っていたのに、ちゃんと顔も体も成長して一回り大きくなっていたのだ。
仔犬の時期の大切な2週間を見過ごしてしまったが、病気と闘いつつも、ちゃんと成長をしていたことが解って嬉しかった。
おかえりアクア。
がんばったね。
つらかったね。
のりこえたね。
これからはいつも一緒だよ。いっぱい色んなとこに行こうね。
散歩もいっぱいしようね。
たくさん遊んで思い出作ろうね。
言いたいことはたくさんあったのだ。
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退院後も3度目のワクチンを終わらすまでに普通の子よりも1ヶ月遅れた。
その分、散歩デビューもおあずけだけど、それまでは一緒に我慢した。
ワクチンが完了するまでは、私は店からもらった消毒液を毎日浴びた。
ペットショップで働いてる以上、どんな病気を持ち帰っているかわからない。
かなりキツイ消毒液で肌もボロボロになるとはわかっていたけど、仕事から帰ると、まず服を全部脱いで消毒剤を混ぜて洗濯し、私もバケツ1杯分の消毒液を頭からかぶった。
アクアのためならそれくらい屁でもない。たとえ肌が荒れたっていいさ。。。
その後も動物の病気の講習会に参加したりもした。そして、私はしばらくしてそこのペットショップを辞めて給料の良い職へ転職した。
辞めてもたまにアクアの顔を見せに行ったり、当時励ましてくれた仲間とも今も連絡を取り合っている。
あれから、アクアとも色んなところへ行き、今現在2歳半になりました。
そして、今日みたくワクチン接種をすると当時の事を思い出すのだ。
大切な宝物のアクアよ、生きててくれてありがとう。
そして現在。2歳と6ヶ月。