本日はグルジア映画「放浪の画家ピロスマニ」をご紹介します。1969年製作。2015年にデジタルリメイク版がリリースされ、この時小生は神保町の岩波ホールにて初鑑賞。空いてました(^^;)
この映画はピロスマニに興味がなくても、映画好きなら十分に楽しめる映画です。ただ、エンタメじゃないから、映画にも興味がない人は「つまらない」とか「退屈だ」と感じると思うので、誰かと一緒に見るなら相手の趣味も念のため確認しておいたほうが無難。感性も古いです。
シェンゲラヤ監督は当時の政治的な背景は描いていません。主役はあくまで画家ニコラとその絵画。
テレビもラジオもない貧しい時代のグルジア。当時人々は食べていくだけで生活に余裕がないから芸術に興味など持たない。一生懸命生きている。交流は密ではあるが利害関係が支配的。そういう時代に生きた近代の一人の貧しい独身芸術家ニコラの、揺れる心の軌跡が実に上手く描かれています。全編哀切で限りなく美しいシーンの連続。テーブルを囲む場面では手前に人を配置せず、左右と向かい側に座らせて観客目線で撮影。総じてカメラアクション控え目な演劇的正面撮影。音声も少なく静謐な基調で貫かれています。
よくあることですが、監督の画家に対する思い入れが強いと、ついつい日曜美術館みたいに「ニコラは実はモデルをこう使っていた!」とか、「制作手順は実はこうだった!」とか、余計なうんちくを盛り込んでしまいがち。でもこの映画にはそういう説明的な描写によるうんちくはありません。この割り切りが重要で、凡人の監督にはなかなかできないことだと思います。
推奨環境はカップル、そして夫婦。(子連れ鑑賞はNG。同性の友人との鑑賞もいまいち・・・)
KAZU一押しの名画。