常磐自動車道を走っていると、谷田部付近で綱火の絵が描かれた看板があります。
最初にそれを見た頃は「伊奈の綱火」と記されていましたが、2006年3月27日に筑波郡谷和原村と合併して現在は「つくばみらい市の綱火」と言うようになりました。
常磐道を通るたびにその看板を見てはいつも気になって、もう20年以上が経ちました。
そして今回やっと念願の綱火を見ることができました。
このつくばみらい市の綱火は二流派あって、一つは高岡流綱火、もう一つは小張松下流綱火と言い、どちらも400年以上も昔から伝わる国指定重要無形民俗文化財で、空中に綱を張りその上で人形芝居を演じます。
そしてその人形などには花火が仕掛けられているというのが特徴です。
今回私が見てきたのは、小張地区の愛宕神社例祭で奉納される松下流綱火です。
こちらは毎年8月24日と決まっていて、もう一つの高岡流は毎年第4土曜日と決まっているそうです。
小張松下流は、綱火を考案した戦国時代の小張城主松下石見守の名に由来するもので、もともとは戦勝祝いなどに陣中で演じられたのが始まりといわれています。
現在では火難を払い天下泰平、五穀豊穣を祈願するもので、この奉納祭を行わなかった年には不幸な事が起こったりするため、毎年欠かさず行っているそうです。
10メートルほどの大柱3本を立て、3本の大綱と数本の小綱を張り巡らして、笛や太鼓などのお囃子にあわせ仕掛け花火と空中で人形芝居を演じるので別名「三本綱からくり花火」とも言われています。
この貴重な技術は、家元の大橋家に伝わり小張松下流綱火保存会とで今日まで守り伝えられているそうです。
演目は「二六三番叟」「舟遊山」「桃太郎と鬼ヶ城」など御伽噺から創作された出し物が3つ披露されるそうです。
と、前置きはこれくらいにして
私が見て来た松下流綱火の様子を、拙い写真と文章ですが・・・
小張地区の愛宕神社までは決して交通の便が良いとは言えず、つくばみらい市の駅から20分ほど歩いて行きました。
そこまでの道は歩道らしい歩道もなく、街灯もほとんどないような道でした。
そしておまけに、お祭り会場の神社に向かって歩いている人がいません!誰も・・・。
往きはまだ少し明るかったのですが、自分の向かっている道が正しいのかどうかもよくわからず、ちょっと不安を抱えたままひたすら歩きました。
神社の近くになると、近辺の家にはそれぞれ手作りの行燈が飾られていました。
それぞれ違うデザインだったり、書かれている言葉も違っているのですが、一つ一つに地域の人たちの心が込められていて、それだけでもこの行事を大切に守っている地元の人の心が伝わってきました。
それほど派手な感じではありませんが、こじんまりとした屋台の灯りがとてもほんわかした温かさで迎えてくれました。
神社は鳥居をくぐって、階段を上ったところです。
鳥居はすぐ目の前でしたが、う~~ん、私の目に飛び込んできたこちら。
「クリーム1個くださ~い!」
誘惑に負けました。
はい、前に進みます。
大きな切株。ご神木でしょうか。
大切に祀られていました。
昼間には神輿も繰り出したのでしょうか、丁寧に飾られていました。
境内の奥の方に行くと、なにやら舞台のようなものが作られていました。
その台の上に人が7~8人くらい乗っていて、その人たちが綱で人形などを操っていたのですが、その技術はすごいと思いました。
中に入らないようにロープが張られ、その周りには運動会の見学席のようにブルーシートが敷かれいて、家族などでしっかり席をとっているのです。
スペース的にちょっともったいない気もしましたが、おじいちゃんからお孫ちゃんまで、家族揃って見学している姿は微笑ましいものです。
こちらは、その後ろに立っての見物です。
第1幕が19時頃から始まりました。
面白いことに、始まる時にはっきりとしたアナウンスがあるわけではなく、
おもむろに何かが動いたな、という感覚から始まりました。
どうやら人形が動きだしたようでした。
その人形らしきものが、お囃子などに合わせて綱を伝って動きだしたのですが、実はよく見えていませんでした。
すると、いきなり火がついたのです。
もう、びっくり!
その火は色が変わって、大畑のからかさ万灯を思い出すような花火になってきました。
またいきなり爆発するみたいに、火がさらに燃えだし花火の様子は変わっていきます。
火が上に吹き出しました。
そろそろ鎮火といったところですね。
と、思った瞬間に空の方でド~ンと大きな音と共に打ち上げ花火が咲きました。
2~3発上がって、第1幕が終わりました。
次の第2幕は20時頃の予定らしいです。
幕と幕との間に、3発ほどの奉納打上げ花火が上げられました。
その時の奉納者の名前を読み上げる口調がなんとも言えない節回しで、独特のものがありました。
そして舞台の方では次の演目の準備をしているようです。
ここでは、先ほどもお伝えしましたが、スケジュール等のアナウンスがありません。
でも、地元の人達はちゃんと心得ているようでした。
それでブルーシートなんだぁ・・・と思いましたね。
皆さん、気長に次までを待っているのです。
この待っている間もそうなのですが、
とても困ったことがありました。
やぶ蚊というのでしょうか、普通の蚊とは思えないほどの深い刺し方。
私の足を狙って、何匹もチク~ッと吸い付いてきましてこれは辛かったですね~。
ひざ下ばかりなのですが、両足とも数十か所と刺されました。
半端ないかゆみと腫れと・・・
かなりひどいことになってしまいました。
これも、おもむろに第2幕が始まりました。
すぐに火がついた状態で動き出しました。
どうやら船のようです。
船にお人形さんが乗っています。
火がまた何かに点火されたようです。
船の屋根から火の雨が降っているような花火です。
船の中の様子も見えてきました。
船から横に伸びた綱に火がついて、瞬時にその火は移動して少し離れたところに点火されました。
そして現れてきたのが、筑波山の形の仕掛け花火でした。
片方の船の花火はだんだん燃え方を変えていきました。
ゆっくり、ゆっくり綱を伝って移動していました。
船と、筑波山。
筑波山の色がまた変わってきました。
ナイヤガラの滝のように、白い炎に変わって周りを明るく照らしました。
船の上には女性と男性が乗っていたのですね。
船は方向もいろいろに変えてゆっくり移動します。
女性は踊りを踊っているように見えます。
おやまぁ最初はよく見えませんでしたが、どうやら子供も乗っていて4~5人いるようでした。家族だったのでしょうか・・・。
そして、これもまた打ち上げ花火で第2幕終了です。
本当は第1幕も第2幕も何かのお伽噺で、それをお囃子と一緒に独特な節回しの口上が流れるのですが、よくわかりませんでした。
ということで、ここからまた第3幕まで待ちます。
第3幕は21時頃だそうです。
仕掛けの準備を見ながら、やぶ蚊に刺されながらの待ち時間、約40~50分です。
いつの間に、このような仕掛け。
さっきまでは、どこにも姿形なかったはずです。
時刻は21時になりました。
また、何やら動きがあるのですが始まっているのかどうかわかりません。
あの大きな仕掛けのところに火がつきました。
一瞬にして桃がパカッと割れて桃太郎が産まれる様子を表していました。
第3幕は、桃太郎のお話のようです。
これは、すぐにわかりました。
だんだん色がついてきました。
なかなか凝っています。
お~~~、桃太郎!!
また、綱に火がついてピュ~ンと横の方に火が走り出しました。
真ん中あたりの何かに火がつきました。
確か人形が立っていたと思いました。
新たにまた火が点火。
そして右と左で同時に火が広がり始めました。
左の方は桃太郎や家来が船に乗っている様子で、右のオレンジ色の火はキジだそうです。
言われて見れば確かに・・・と思いました。
更に、動いて行きます。
どうやら、これは鬼が島のお城のようです。
また点火され赤い炎になり、桃太郎が鬼が島退治行った様子を表現していました。
赤い炎は、白い炎に変わり、また筑波山が浮かび上がってきました。
筑波山、見る見るうちに変身です。
筑波山の花火に気をとられてるうちに、桃太郎たちの船は繰り手の人達の方へ帰っていきました。
お約束の打上げ花火で終了ですね。
白い煙だけが余韻を残すように辺りを包んでいました。
2時間にわたって第1幕から第3幕までの仕掛け花火や人形を綱で操る技術。
そしてこれが400年も続いているなんて、とてもすごいと思いました。
道路脇にちょっと入った目立たない神社での奉納祭ですが、さすがに国の重要無形民俗文化財だけあると思いました。
なかなか見られるものではありません。
20年以上待ち続けてやっと見た甲斐がありました。
なのに・・・
ブルーシートを敷いて見学していた地元の人たちは、あっという間にシートを片づけてさ~っと帰る素早さ。慣れたものです。
私にしたらちょっと驚きでした。
最後、帰る前に神社へのお参りをして・・・。
境内の隅では、この日の反省会でしょうか消防団の人たちがミーティングをしていました。
皆さん、ご苦労さまでした。
ついさっきまでの様子とは打って変わって、シ~ンとしてしまった境内です。
嵐の後の静けさと言った感じでした。
お腹がすいてしまっていたのですが、この様子ではもう屋台のお店も終わってしまっているかもしれないと思いつつ階段を下りていくと・・・・
まぁ、こちらは賑やかにまだ営業していました。
(良かったあ)
きれいに並んだ広島焼き。
アツアツの広島焼きを一つ購入!
それと喉も乾いてしまったので、かき氷を購入。
最近の縁日のかき氷、写真をすっかり忘れてしまいましたが、器が変わっていました。
私の知っていた容器はカップラーメンのような発砲スチロールでできた白い容器でしたが、
この時のは透明のプラスチックで、ちょっと可愛らしい形のものでした。
時代は変化しているんだなぁ・・・と思った瞬間でした。
そして・・・、
帰りはまたスピードを出した車が通る真っ暗な道を、かき氷を食べながら駅に向かって歩きました。20分!
それにしても、歩いて駅に向かう人はまたしても、だ~れもいませんでした。
みんなどこから、どうやって集まっていたのでしょう?
地元の人だけだったのかしら・・・
あ~~、今でも刺された足が痒い!
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松下流綱火
見事なパフォーマンスですね
伝統が息づいているのでしょう
ありがとうございます
伝統とはすごいものですね。
日本の良いもの、ずっと残していただきたいです。
見応えがあって、良かったです。
国指定重要無形民俗文化財『綱火』すごいですね~
400年以上前から守り伝えられて来たんですよね~
豊富な写真にその場の雰囲気がリアルタイムで伝わって来ます☆
歴史あるこの綱火の魅力、伝わっていただけたら嬉しいです。
動画だったら・・・と思ってしまうくらい、次々と場面が変わり、驚きでした。
口上がまたホントに独特で、これは土地ならではの言い回しなのかな?と思いました。