あれは、十年前の秋のことだった。
日中から天気がよく、夏に逆戻りしたかのように暑かった。日が暮れて、気温もだいぶ下がり一変して肌寒く感じた。半月の夜、星もきれいに輝いていた。広い草むらの中、北から吹く風を背に受けてじっと一人の男を待ち構えていた。
そう、最大の宿敵。そして、親友 ——コリエンテ。
お互い十九歳同士。腕はコリエンテのほうが上だった。でも、どうしても勝たなければならない。
「パスク、こうやってお前と剣を交えるなんて最高だよ」
「オレもだよ、コリエ」
「恨みっこなしで」
「もちろんだとも」
この広い国は何十ものの地域に分かれており、その中で大小の街があったりする。それぞれごく普通の生活があるわけだ。大きな戦乱もなく、国内だったら自由に行き来できる、至って平和過ぎる日々が続いている。
というのも、全国にちりばめられた、選ばれし二十人の騎士がいる。これに選ばれたら、そりゃあ名誉で子供たちからは憧れの的だ。
しかし、公平性と健全性を守るため、毎年数名ずつ入れ替えている。その選出方法が、候補者同士で争い、成績上位に入ったものが入れる。
志願者も多く、この候補者の中に入れること自体、奇跡みたいなところがある。
この候補者の中に入るため、オレとコリエンテで争っている。そういえば、あともう一人いたな……。名前、なんて言ったかな?
オレは、もともとは山奥の小さな村で生まれ育ったが、候補者に入るため里を降りて大きい街に出てきて暮らし始めた。
住み慣れた村が非常に都合がよくって、ここでの生活に慣れるのに時間がかかった。
でも、この街も実家の村のように思えてきた。
だからこそ、最高の場所で最高の決戦にしたい。
「コリエっ! 勝負!」
力は下でも、ここだったら負けないんだよ!
金属同士が重なり叩き合う音。悪くない響きだ。ややコリエンテに押され気味になった。
やっぱり、コリエンテは強い。
「どうした、コリエ。もっと来いよ!」
「安心しろ。すぐに終わらせてやるよ」
ここからコリエンテの猛攻が続いた。必死に耐えたが、今日は妙に落ち着いていた。
大技を出すところを見逃さず、間合いに入って不発に終わらせた。
「やるな……。でも、そう何回も止められるか」
「悪いな。今日は調子がいいんだ」
こちらも攻めに出る。むやみやたらに振りかざすことなく、的確に腕を振った。
互角の戦いにやがて、月光に照らされた一方の剣が夜空を舞った。
二人の間では、歴史上最高と語り継ぐ、決戦の終止符の瞬間だった。
≪ 第1話-[目次]-第3話 ≫
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日中から天気がよく、夏に逆戻りしたかのように暑かった。日が暮れて、気温もだいぶ下がり一変して肌寒く感じた。半月の夜、星もきれいに輝いていた。広い草むらの中、北から吹く風を背に受けてじっと一人の男を待ち構えていた。
そう、最大の宿敵。そして、親友 ——コリエンテ。
お互い十九歳同士。腕はコリエンテのほうが上だった。でも、どうしても勝たなければならない。
「パスク、こうやってお前と剣を交えるなんて最高だよ」
「オレもだよ、コリエ」
「恨みっこなしで」
「もちろんだとも」
この広い国は何十ものの地域に分かれており、その中で大小の街があったりする。それぞれごく普通の生活があるわけだ。大きな戦乱もなく、国内だったら自由に行き来できる、至って平和過ぎる日々が続いている。
というのも、全国にちりばめられた、選ばれし二十人の騎士がいる。これに選ばれたら、そりゃあ名誉で子供たちからは憧れの的だ。
しかし、公平性と健全性を守るため、毎年数名ずつ入れ替えている。その選出方法が、候補者同士で争い、成績上位に入ったものが入れる。
志願者も多く、この候補者の中に入れること自体、奇跡みたいなところがある。
この候補者の中に入るため、オレとコリエンテで争っている。そういえば、あともう一人いたな……。名前、なんて言ったかな?
オレは、もともとは山奥の小さな村で生まれ育ったが、候補者に入るため里を降りて大きい街に出てきて暮らし始めた。
住み慣れた村が非常に都合がよくって、ここでの生活に慣れるのに時間がかかった。
でも、この街も実家の村のように思えてきた。
だからこそ、最高の場所で最高の決戦にしたい。
「コリエっ! 勝負!」
力は下でも、ここだったら負けないんだよ!
金属同士が重なり叩き合う音。悪くない響きだ。ややコリエンテに押され気味になった。
やっぱり、コリエンテは強い。
「どうした、コリエ。もっと来いよ!」
「安心しろ。すぐに終わらせてやるよ」
ここからコリエンテの猛攻が続いた。必死に耐えたが、今日は妙に落ち着いていた。
大技を出すところを見逃さず、間合いに入って不発に終わらせた。
「やるな……。でも、そう何回も止められるか」
「悪いな。今日は調子がいいんだ」
こちらも攻めに出る。むやみやたらに振りかざすことなく、的確に腕を振った。
互角の戦いにやがて、月光に照らされた一方の剣が夜空を舞った。
二人の間では、歴史上最高と語り継ぐ、決戦の終止符の瞬間だった。
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