「痛っ。なにすんだよ!」
久々に実家のある村に帰ってきたが、オレの顔を見るなり村の子供たちが突然石を投げつけてきた。
「弱ーんだよ!」
とっちめてやろうと追いかけ回したが、怪我と疲労を背負って逃げ足の速い子供を捕まえるのは容易ではなく、まんまと逃げられてしまった。
懲らしめるのは後にして、帰宅を急ぐことにした。
「おやおや、まあまあ。どうしたんだい、その怪我は?」
「まあ……いろいろとな。生傷は、さっきガキ共にやられた」
ようやく一息つける場所に来れたが、油断はできない。この間にもどこかで対戦しているかもしれないし、スキを狙ってやってくるものもいる。
「しかし。いつからこの村は、人に石を投げつけてもよくなった?」
「みんな、あんたに期待しているのよ」
「期待をしていたら、石を投げてもいいのかよ!」
むちゃくちゃだな、オイ。
「どうだい、今のところは?」
「一勝二敗ってところだ」
確かにこれだと子供たちの方が正論だな。もし騎士団に入れば、村のとっては初めて。期待が集まるのは当然か。
「しばらくはここにいるつもりだ。怪我を治しに来た」
「そうかい。じゃあ、二、三週間はいるのかい?」
「そうだな……。そのつもりだ」
この村は山奥に温泉が湧き出るところがある。ここの効能が評判で、噂を聞きつけてわざわざ遠くからここへ訪れるものがいるくらいだ。小さな村だが、温泉のおかげで村人は裕福でいられる。もちろん入浴料を取るわけだが、村民はタダで入れる。ここで静養を決めたのは、実家のそばで金銭的に安くすむからだ。
いくつか共同浴場があるのだが、その中でも一番奥に当たる浴場を選んだ。湯治客に紛れて襲われても困る。できるだけ人が少ないところにした。
昼過ぎだったが、予想通り誰もいなくガラ空きだった。湯煙の中をかき分けて湯船を探す。さほど大きくはないが、人もいないことだし具合がよかった。
ここの源泉は温度も高く、強酸性でもある。そのまま入ったら茹でタコみたいになる前に、まず体が持たない。そこで、ここではまず源泉を冷ます巨大な池があり、ここから各浴場へと流れていく仕組みになっている。
それでもまだ熱い。だが、ここで生まれ育ったオレにはちょうどよかった。温度は申し分なかったが、強酸性の湯が傷口を刺激して顔を歪める。でもこれが効くんだ。
東屋の中に湯船があり、そこから濁りのないきれいな川が見える。そこの景色を楽しみながら、時折吹き下ろす山風に当たり体を休めていた。
突然のことだった。浴場ものども切り刻まれるように崩れ落ちた。そして隠れる場所なんてなくなった。
やっぱりな……。無防備状態である今こそチャンスだろう。オレにだってそこは分かっており、剣だけは手元に抱えておいた。
「出てこいよ! 勝負してやるから!」
≪ 第12話-[目次]-第14話 ≫
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久々に実家のある村に帰ってきたが、オレの顔を見るなり村の子供たちが突然石を投げつけてきた。
「弱ーんだよ!」
とっちめてやろうと追いかけ回したが、怪我と疲労を背負って逃げ足の速い子供を捕まえるのは容易ではなく、まんまと逃げられてしまった。
懲らしめるのは後にして、帰宅を急ぐことにした。
「おやおや、まあまあ。どうしたんだい、その怪我は?」
「まあ……いろいろとな。生傷は、さっきガキ共にやられた」
ようやく一息つける場所に来れたが、油断はできない。この間にもどこかで対戦しているかもしれないし、スキを狙ってやってくるものもいる。
「しかし。いつからこの村は、人に石を投げつけてもよくなった?」
「みんな、あんたに期待しているのよ」
「期待をしていたら、石を投げてもいいのかよ!」
むちゃくちゃだな、オイ。
「どうだい、今のところは?」
「一勝二敗ってところだ」
確かにこれだと子供たちの方が正論だな。もし騎士団に入れば、村のとっては初めて。期待が集まるのは当然か。
「しばらくはここにいるつもりだ。怪我を治しに来た」
「そうかい。じゃあ、二、三週間はいるのかい?」
「そうだな……。そのつもりだ」
この村は山奥に温泉が湧き出るところがある。ここの効能が評判で、噂を聞きつけてわざわざ遠くからここへ訪れるものがいるくらいだ。小さな村だが、温泉のおかげで村人は裕福でいられる。もちろん入浴料を取るわけだが、村民はタダで入れる。ここで静養を決めたのは、実家のそばで金銭的に安くすむからだ。
いくつか共同浴場があるのだが、その中でも一番奥に当たる浴場を選んだ。湯治客に紛れて襲われても困る。できるだけ人が少ないところにした。
昼過ぎだったが、予想通り誰もいなくガラ空きだった。湯煙の中をかき分けて湯船を探す。さほど大きくはないが、人もいないことだし具合がよかった。
ここの源泉は温度も高く、強酸性でもある。そのまま入ったら茹でタコみたいになる前に、まず体が持たない。そこで、ここではまず源泉を冷ます巨大な池があり、ここから各浴場へと流れていく仕組みになっている。
それでもまだ熱い。だが、ここで生まれ育ったオレにはちょうどよかった。温度は申し分なかったが、強酸性の湯が傷口を刺激して顔を歪める。でもこれが効くんだ。
東屋の中に湯船があり、そこから濁りのないきれいな川が見える。そこの景色を楽しみながら、時折吹き下ろす山風に当たり体を休めていた。
突然のことだった。浴場ものども切り刻まれるように崩れ落ちた。そして隠れる場所なんてなくなった。
やっぱりな……。無防備状態である今こそチャンスだろう。オレにだってそこは分かっており、剣だけは手元に抱えておいた。
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