Kitten Heart BLOG -Yunaとザスパと時々放浪-

『きとぅん・はーと』でも、小説を公開している創作ファンタジー小説や、普段の日常などの話を書いているザスパサポーターです。

【小説】「パスク、あの場所で待っている」第50話

2020年07月01日 06時49分27秒 | 小説「パスク」(連載中)
「ごちゃごちゃ言いやがって。黙らせてやる」
 一息吐くと、地面を蹴り上げてホオンを斬りかかった。
 ことごとく避けられてしまうが、チャンスをうかがっていた。
「やりなすな!」
 一時的に逃してしまったが、それでも攻撃の手を緩めず攻め続けた。
 スピードを上げて、愛剣を振りかざした。
「ううっ……」
 剣先が、僅かにホオンをかすめた。
「かわすのもギリギリみたいだな!」
 休む間のなく振り続けたが、ホオンのフェイントに引っかかってしまった。その隙に逃げられた。だが、ホオンの呼吸は荒く、手応えがあった。
「随分とバテているみたいだな。そろそろ降参か?」
 長く息を吐き、呼吸を整えた。そして、ホオンに挑発をかけて追い込ませる。
「そっちこそ、息が荒かね」
 激しく肩が上下するホオンの方が、体力の限界を感じる。
 オレは大きく息を吸った。そして、吸ったときよりもゆっくり吐き出した。
「悪いが、休憩時間は長めに取ってやらないからな!」
 まだ呼吸が整わないホオンに襲いかかった。オレの方が余力があったみたいだな。
「ちきしょう……」
 一段階速度を上げて、ホオンに近づく。そして、振り抜く。
「くっ……」
「だいぶ遅れてきたな!」
 容赦なく攻撃を続けた。一瞬の勝機が来るのを待った。
「そこか!」
 右足を大きく踏み込み、腕を振り上げた。
 金属音が鳴り響いたのち、ホオンの剣が舞い上がった。
 地面に突き刺さるのを見届けると、安堵のため息が漏れた。
「間違いなく、勝負あったな!」
 愛剣の剣先には、ホオンがうなだれていた。
「グリューンだけでなく、パスクにも負けたか……」
「その名前を出すのだけは、許さないからな!」
 グリューンの名前を出されて、高速で頭に血が上っていくのを感じた。
「一緒にされて、そんなに苛つくか?」
「……!」
 愛剣を持つ右手を強く握りしめた。選考会じゃなかったら、切り刻んでやりたかった。
 ジジイに負けたとか言っていたが、そういうことだったのか。
「お前には関係ない!」
「そうだろうな。あんな人間と——」
「うるさい! 黙れ!」
 つい愛剣を振り抜いた。ホオンには当てずに、目の前で止めた。
「そんなにカッカッしなすなや。監視員が見よるぜ」
 こっちの監視員はコトミじゃなさそうから、ごまかせない。仮にコトミだったとしてもホオンの監視員もいる。結局は隠し通せない。
「……くそっ」
 ホオンから離れて、この場を去ることにした。
「逃げるのか?」
「勝ったのはオレだ! 勘違いするなよ」
 それを言い残したまま、北の方へ歩き出した。
 負けた奴が憂さ晴らしに、こういったことを言ってくるのは、よくある話。気にとめないようにしているが、非常に腹が立つ。
「土筆島に来るんじゃなかった」


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