「あの女について……どう思いますか?」
「あの女って、なんだよ、それ。急に……」
「決まっているじゃない、王室直属騎士団参謀総長『ケイ』に」
「ケイくらい、オレでも分かる」
場所を移し、元の茶店に帰ってきた。
「そもそも、こんな話をしていていいのかよ。監視員が見ているぞ」
「だからって、彼らはそのこと自体は報告しない。するのは対戦結果と適正かどうか。陰口を言ったところで、何も影響されない」
「そういえば……前にじいさんと対戦したときも、そんなことを話していたな……」
コトミも、愚痴とかは報告しないって言っていたか。
「じいさんって、子連れのセーキ? なんて言っていたの?」
「『子連れのセーキ』なんて今誰も言わないぞ。いくつなんだよ」
「わたくしに年を聞くつもりなの!」
「……申し訳ございません」
確か、オレより年上だった気が……。キョウコの目が、あまりにも怖すぎて、思わず引いてしまった。
「それで! なんて言っていたの!」
「『騎士団になりたかったら、逆らうな』って」
失言で鬼のような表情だったが、柔らかな顔に戻った。
「まあ、正論ね。そもそも逆らえないでしょ。王室直属にも関わらず、王室の人間すら彼女に口出しは出来ない。この国にはいないでしょ? 事実上この国のトップだし」
「国の英雄様だからな……」
荒れた国を平和な国に変えた中心人物こそケイで、大所帯だった旧騎士団を変え、現在の『twenty』にした。その功績が認められて、『王室直属騎士団参謀総長』の肩書きが与えられた。
これだけの力を有しながら、クーデターのひとつを起こさないのが不思議なくらい。といっても、この国の政治は国王の独裁政治だが、裏で糸を引いているのが彼女だと言われており、その必要性はないのも事実。
「今の平和な国にしたのがケイ。その平和が保たれている間は、彼女に逆らうのは国王でも不可能でしょうね」
「でも、二十年も王室に仕えているってことは、もうばばあだろ」
「『ばばあ』ねぇ……」
頭は動かさず目だけを動かして、何かを気にしているようだった。
「……今のは、さすがにまずかったか?」
どこに隠れ潜んでいるか分からない監視員を目で探す。
「いいえ。そうじゃなくってね……」
何かを言いたそうだったが、ため息以外のものは口から出なかった。
「一方で、かなりの我が儘なのは事実かもね」
「人の言うことなんて聞かないのは有名だから、オレもそれは知っている」
「セーキさんの言うとおり、逆らわないことね」
「そうだな……」
「陰口を言っても影響ないっていうのも、公式にはそうなっているけど、本当かどうかまでは分からないし、これくらいにしましょう」
「最後に聞きたいんだが、この選考会の最後って何だ?」
「自分の目で確かめなさい。まあ、セーキさんの言っていることが核心を突いているかもね」
「でも、じいさんはこの選考会は初めて参加したって言っていたが……」
「ケイのことをよく知っているからね……」
「そうなのか……?」
「じゃないかしら。そんな話を聞いたことがありますよ」
茶屋に戻ってきたのは昼前だったが、いろいろ話し込んで日が傾き始めてきた。
候補者同士、情報交換することは優位に進めるためよくあるし、認められている。
「わたくしは、北の方を向かうつもりですわ」
「オレはあいつと再会して、ちょっと考える。いるといいが……」
「たぶん、こっちで見たって言う情報はないから、少なくてもあの近辺じゃないかしら」
「そうか……。ありがとうな」
長居した茶屋を出て、キョウコとも別れを告げた。
キョウコを背にして、西の方へ歩き始めた。
「パスクさん!」
突然、キョウコが叫んだので振り返った。
「……死んじゃ、ダメだよ」
「コリエとの約束があるから、そう簡単に死なないよ」
キョウコはそれ以上は発しなかった。なんだか寂しげそうでもあった。
日が暮れる前に、今夜の寝床を探すか。
≪ 第24話-[目次]-第26話 ≫
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「あの女って、なんだよ、それ。急に……」
「決まっているじゃない、王室直属騎士団参謀総長『ケイ』に」
「ケイくらい、オレでも分かる」
場所を移し、元の茶店に帰ってきた。
「そもそも、こんな話をしていていいのかよ。監視員が見ているぞ」
「だからって、彼らはそのこと自体は報告しない。するのは対戦結果と適正かどうか。陰口を言ったところで、何も影響されない」
「そういえば……前にじいさんと対戦したときも、そんなことを話していたな……」
コトミも、愚痴とかは報告しないって言っていたか。
「じいさんって、子連れのセーキ? なんて言っていたの?」
「『子連れのセーキ』なんて今誰も言わないぞ。いくつなんだよ」
「わたくしに年を聞くつもりなの!」
「……申し訳ございません」
確か、オレより年上だった気が……。キョウコの目が、あまりにも怖すぎて、思わず引いてしまった。
「それで! なんて言っていたの!」
「『騎士団になりたかったら、逆らうな』って」
失言で鬼のような表情だったが、柔らかな顔に戻った。
「まあ、正論ね。そもそも逆らえないでしょ。王室直属にも関わらず、王室の人間すら彼女に口出しは出来ない。この国にはいないでしょ? 事実上この国のトップだし」
「国の英雄様だからな……」
荒れた国を平和な国に変えた中心人物こそケイで、大所帯だった旧騎士団を変え、現在の『twenty』にした。その功績が認められて、『王室直属騎士団参謀総長』の肩書きが与えられた。
これだけの力を有しながら、クーデターのひとつを起こさないのが不思議なくらい。といっても、この国の政治は国王の独裁政治だが、裏で糸を引いているのが彼女だと言われており、その必要性はないのも事実。
「今の平和な国にしたのがケイ。その平和が保たれている間は、彼女に逆らうのは国王でも不可能でしょうね」
「でも、二十年も王室に仕えているってことは、もうばばあだろ」
「『ばばあ』ねぇ……」
頭は動かさず目だけを動かして、何かを気にしているようだった。
「……今のは、さすがにまずかったか?」
どこに隠れ潜んでいるか分からない監視員を目で探す。
「いいえ。そうじゃなくってね……」
何かを言いたそうだったが、ため息以外のものは口から出なかった。
「一方で、かなりの我が儘なのは事実かもね」
「人の言うことなんて聞かないのは有名だから、オレもそれは知っている」
「セーキさんの言うとおり、逆らわないことね」
「そうだな……」
「陰口を言っても影響ないっていうのも、公式にはそうなっているけど、本当かどうかまでは分からないし、これくらいにしましょう」
「最後に聞きたいんだが、この選考会の最後って何だ?」
「自分の目で確かめなさい。まあ、セーキさんの言っていることが核心を突いているかもね」
「でも、じいさんはこの選考会は初めて参加したって言っていたが……」
「ケイのことをよく知っているからね……」
「そうなのか……?」
「じゃないかしら。そんな話を聞いたことがありますよ」
茶屋に戻ってきたのは昼前だったが、いろいろ話し込んで日が傾き始めてきた。
候補者同士、情報交換することは優位に進めるためよくあるし、認められている。
「わたくしは、北の方を向かうつもりですわ」
「オレはあいつと再会して、ちょっと考える。いるといいが……」
「たぶん、こっちで見たって言う情報はないから、少なくてもあの近辺じゃないかしら」
「そうか……。ありがとうな」
長居した茶屋を出て、キョウコとも別れを告げた。
キョウコを背にして、西の方へ歩き始めた。
「パスクさん!」
突然、キョウコが叫んだので振り返った。
「……死んじゃ、ダメだよ」
「コリエとの約束があるから、そう簡単に死なないよ」
キョウコはそれ以上は発しなかった。なんだか寂しげそうでもあった。
日が暮れる前に、今夜の寝床を探すか。
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