Kitten Heart BLOG -Yunaとザスパと時々放浪-

『きとぅん・はーと』でも、小説を公開している創作ファンタジー小説や、普段の日常などの話を書いているザスパサポーターです。

【小説】「パスク、あの場所で待っている」第30話

2017年01月09日 11時19分56秒 | 小説「パスク」(連載中)
 バランスを崩しかけながらも、ナランの動きを読み、体を捻らせた。
『間に合うか……』
 顔の横をすり抜ける風圧を感じた。危ない所を免れた。
 そして、舌打ちするナランを、目の当たりにした。
「この程度で、やられるかよ……」
 ここまで力が対抗していると、小さなことが命取りになる。
「倒れていただければ、お互い楽になれたのに」
「そうだな……。だったら……代わりにお前がやられろ!」
 上がる息を抑えながら石畳を蹴り、一気に間を詰める。振り抜くが、いずれもナランに避けられる。それでも斬りかかったが、余裕で避けられる。
「随分と息が上がっているじゃないですか。不甲斐ない負け方をするくらいだったら、降参もありですよ」
「……バカだろう。そっちの方は恥だろ!」
 ナランには体力に余力があるせいで、気持ちにも十分ゆとりがある。
「恥にならないような終わり方にしてあげますよ!」
 珍しくナランの方から仕掛けてきた。体力を存分に使い、降りかかってくる。オレは寸前で避けていった。しかし、切り返しが早い。すぐに斬りつけてくる。
「これでケリをつけます!」
 ナランが大振りに来たのを見計らうと、鮮やかにかわして後ろに回った。そして、引き戻す動作に移る前に、突き倒した。
「うっ!」
 倒れかかる体勢を戻そうと体を捻らせるが、すぐさま詰める。石畳に打ち付けられたナランの喉元に剣先を向けた。
「これで終わりだ!」
 勝った達成感よりも、終わりにできた喜びの方が大きかった。それだけ、激烈な戦いだった。
「まあ、悔いはないですよ……」
 ナランも疲れか、しばらくは起き上がろうとはせず、徐々に明るくなる空を見上げていた。
「余裕がなさそうに演技して……」
 オレもその場に座り込み、ナランを見つめた。
「体力ってものは、決戦までギリ残しておくもんだよ」
 途中から体力が尽きたように見せたじいさんの戦い方を真似ようとしてみたが、コントロールしきれずだいぶ体力を使いすぎた。
 やっと起き上がってきたかと思うと、言い放った。
「僕らは、いつか『twenty』に入れるのだろうか……?」
「さあな……」
 王室直属騎士団に入るのは簡単なことではない。それは選考会に何度も参加していれば、実感することだった。
 そして、不思議なものがある。他の候補者は倒さなければならない『敵』であると共に、同じ頂を目指す『仲間』でもある。

 ナランの家には、本人ご自慢の灰色の石で敷き詰められた大浴場がある。戦いでかいた汗を流しつつ、体を温めた。実家のものが最高だと思っているが、ここの湯も悪くはない。
 しばらく二人で語り合った後、旅立つことにした。
「またな!」
「パスクさんもお気をつけて!」
 今度会うときは、王室直属騎士団で会いたいものだ。そう願いながら別れた。

 ナランがそのうち蓋名島を離れ、東の方へ行くと話していたので、西の方を目指すことにした。

 次の候補者を求めて、歩み出した。次も勝ってやると。


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