十数年前まではこの国は荒れていた。そもそも治安が悪く、略奪といったことが頻発していたくらいだ。
そこへひとりの人間が考えたシステムにより、劇的に変わった。それは王室直属騎士団のあり方だった。それ以降というもの国は安定を保ち、今となっては平和な国へと変わった。そして考案者は『天才的英雄』と称され、地位と名誉を手にした。
導入当初は、なかなかうまくはいかなかった。しかし、五年後くらいには成功への兆しが見え始めてきた。
その頃だったか。
「利汰、遅れるのじゃあねえぞ!」
「はっ! 申し訳ありません」
当時の『twenty』のメンバーのひとりに、弟子入りする形でついて回っていた。これには、いろいろメリットがあった。実戦の中で経験を積むことができ、何より『twenty』の活動を見て学べる。
「ところで、本日はどちらへ」
「海を渡ったところに島があり、そこに城がある。ここいらで悪さをしとる山賊の住み家だ」
まわりは海なのに山賊なんだと、ちょい疑問に感じた。活動の際、海を渡り暴れるので概ね間違ってはいない。
師匠を先頭に兄弟子の二人の後をついて行った。
この兄弟子たち、仲がよろしくない。犬猿の仲と言うべきか。ほとんどのことはくだらない力争いだった。仮にどっちかが上と決まっても、師匠の跡継ぎにはなれない。何故なら推薦はあっても、最終決断している人間が違うから当然である。
一行は、船着き場から一隻の船を借りることとした。小さな帆船ではあるが、それほど窮屈ではなかった。行き先も肉眼でも見える距離、これで十分だ。
順調に船を進めると目的の島が見えて来た。
「利汰、ちいと様子を見てきてくれ」
やっぱり一番下っ端が行くのか……。
夕暮れになるのを待ち、人影がなさそうなところから上陸した。400mほどの山頂にその城はそびえ立っていた。
城といっても大きくて立派なものではなく、こぢんまりとした屋敷といったところだ。そこへ迷路のように石垣で取り囲んでいる。平屋建ての屋敷で造りもしっかりしていてなかなか良いところを拠点にしている。
「そんな感じで、敵は五十人くらいですかね」
「とりあえずだな――」
船に戻ると作戦会議が行われた。
日の出前、例の石垣を通り抜け本丸へと突き進む。警備体制は緩くあっさりと中まで入れた。
「これって奇襲作戦ですよね……。王室直属騎士団なのに」
「黙れ。それにな、その肩書きは効力がねえ」
名乗って素直に聞いてくれたら、確かに苦労はないな……。
「頭はおるかー! わしと勝負せー」
取り囲まれたが、師匠は威風堂々とした振る舞いだった。
「王室直属騎士団が、何用だ」
奥から体格のいい大男が出てきた。右手には金棒を携えていた。
「わしたちを知っとるなら、心当たりがあるじゃろう」
「おのれー!」
突然、群衆の中から数名飛び出してきた。
「オレの方が、斬った人数が多い!」
「お前より、オレの方だ!」
その群衆をあっさりと片付けたのはいいが、またいつものように兄弟子二人が斬った人数について言い争っていた。
「こうやって慌てるじゃけど、なんよりの証拠だ」
「王室直属騎士団がなんだ!」
すると師匠は群衆をかき分けるように斬りつけ、頭と名乗る大男までの距離を詰めた。
「王室直属騎士団がどうゆうもんか、力の差を見せてあげるよ」
「しかし。師匠、見事でしたね」
師匠の刀を前に、大男の金棒は太刀打ちできなかった。その後は制圧も難なく進めていった。
帰りの船は大いに盛り上がった。
だが、師匠と兄弟子たちと過ごした日々はそう長く続かなかった。
≪ 第5話-[目次]-第7話 ≫
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そこへひとりの人間が考えたシステムにより、劇的に変わった。それは王室直属騎士団のあり方だった。それ以降というもの国は安定を保ち、今となっては平和な国へと変わった。そして考案者は『天才的英雄』と称され、地位と名誉を手にした。
導入当初は、なかなかうまくはいかなかった。しかし、五年後くらいには成功への兆しが見え始めてきた。
その頃だったか。
「利汰、遅れるのじゃあねえぞ!」
「はっ! 申し訳ありません」
当時の『twenty』のメンバーのひとりに、弟子入りする形でついて回っていた。これには、いろいろメリットがあった。実戦の中で経験を積むことができ、何より『twenty』の活動を見て学べる。
「ところで、本日はどちらへ」
「海を渡ったところに島があり、そこに城がある。ここいらで悪さをしとる山賊の住み家だ」
まわりは海なのに山賊なんだと、ちょい疑問に感じた。活動の際、海を渡り暴れるので概ね間違ってはいない。
師匠を先頭に兄弟子の二人の後をついて行った。
この兄弟子たち、仲がよろしくない。犬猿の仲と言うべきか。ほとんどのことはくだらない力争いだった。仮にどっちかが上と決まっても、師匠の跡継ぎにはなれない。何故なら推薦はあっても、最終決断している人間が違うから当然である。
一行は、船着き場から一隻の船を借りることとした。小さな帆船ではあるが、それほど窮屈ではなかった。行き先も肉眼でも見える距離、これで十分だ。
順調に船を進めると目的の島が見えて来た。
「利汰、ちいと様子を見てきてくれ」
やっぱり一番下っ端が行くのか……。
夕暮れになるのを待ち、人影がなさそうなところから上陸した。400mほどの山頂にその城はそびえ立っていた。
城といっても大きくて立派なものではなく、こぢんまりとした屋敷といったところだ。そこへ迷路のように石垣で取り囲んでいる。平屋建ての屋敷で造りもしっかりしていてなかなか良いところを拠点にしている。
「そんな感じで、敵は五十人くらいですかね」
「とりあえずだな――」
船に戻ると作戦会議が行われた。
日の出前、例の石垣を通り抜け本丸へと突き進む。警備体制は緩くあっさりと中まで入れた。
「これって奇襲作戦ですよね……。王室直属騎士団なのに」
「黙れ。それにな、その肩書きは効力がねえ」
名乗って素直に聞いてくれたら、確かに苦労はないな……。
「頭はおるかー! わしと勝負せー」
取り囲まれたが、師匠は威風堂々とした振る舞いだった。
「王室直属騎士団が、何用だ」
奥から体格のいい大男が出てきた。右手には金棒を携えていた。
「わしたちを知っとるなら、心当たりがあるじゃろう」
「おのれー!」
突然、群衆の中から数名飛び出してきた。
「オレの方が、斬った人数が多い!」
「お前より、オレの方だ!」
その群衆をあっさりと片付けたのはいいが、またいつものように兄弟子二人が斬った人数について言い争っていた。
「こうやって慌てるじゃけど、なんよりの証拠だ」
「王室直属騎士団がなんだ!」
すると師匠は群衆をかき分けるように斬りつけ、頭と名乗る大男までの距離を詰めた。
「王室直属騎士団がどうゆうもんか、力の差を見せてあげるよ」
「しかし。師匠、見事でしたね」
師匠の刀を前に、大男の金棒は太刀打ちできなかった。その後は制圧も難なく進めていった。
帰りの船は大いに盛り上がった。
だが、師匠と兄弟子たちと過ごした日々はそう長く続かなかった。
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