「ちょっと、そこの人」
帰路の途中、一人の虚無僧に声をかけられた。虚無僧って知ってる? 簡単に説明したら、頭から籠を被って寄付を募っている人です。
「金ならオレはないぞ。むしろ恵んでくれ!」
宿代やら治療費で、だいぶ財布事情が厳しくなってしまった。
「そうではない。お主に聞きたいことがある」
「なんだよ」
面倒なやつに絡まれたと、適当に返事をした。
「twenty(トゥエンティ)を知っているか?」
その言葉を聞いた瞬間、全身がぞっとする寒気にも似た感覚を受けた。
この国には、国王を始めとした王族が住む御所がある。政治に対してどうこうオレは言うつもりはないので、特にこれには触れない。この御所を守る2人の騎士。それと全国に散らばる18人の騎士。御所配属は一定期間常駐して、誰かと入れ替わりで当たっている。これがこの国の平和維持の方法だ。
世間的には所属人数を表した愛称のみで呼ばれているが、正式にはこう言われている。
——王室直属騎士団『twenty』
そして、現メンバーの一人こそがコリエンテだ。
「twentyがどうしたっていうんだよ」
「入りたくはないのか?」
ひとつ、深呼吸混じりのため息をついた。
「……声でわかっていたけど、お前……利汰右衛門だろ。いつからコスプレするようになった? 流行らないぞ、それ」
「なあに。他の候補者と無意味に当たらないためだ」
「だったら、オレに声をかけるな!」
山沿いに進めば避けられたが、先を急ごうと海沿いを進んだのがやはり間違いだった。なんとなく、当たるような気がしてならなかった。
「意味は当然ある。パスクさん、あなたを見た瞬間から」
「ケガの状態を見て、決めただろう!」
いや、平常心、平常心。これも作戦だろう。
「では、拙者と騎士団入りを懸けて、勝負願おう」
「……やめておく!」
「おいっ!」
「人のケガ具合を見ろよ……」
「それもまた、運命だ」
どんな運命だよ、それ。
「まあ、そんなに嫌ならさっさと片付けてあげよう」
すると頭に被っていた籠を脱ぎ捨てると、ちょんまげ頭があらわになった。
「絶対に突っ込まない。絶対に突っ込まない。侍のコスプレも流行らないなんて、絶対に言わない!」
「パスクさん。声が漏れていますよ」
絶対にこいつ、笑わせようとしている。
「正直、お前にはやられたよ」
「では、拙者の勝ちということで」
「そういう勝負じゃないだろ」
何でだろう。ものすごい疲労感に襲われた。
「それで、相変わらずあの刀か?」
「左様とも」
利汰右衛門が取り出したのは、片刃の反りがあるものだった。
≪ 第4話-[目次]-第6話 ≫
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「金ならオレはないぞ。むしろ恵んでくれ!」
宿代やら治療費で、だいぶ財布事情が厳しくなってしまった。
「そうではない。お主に聞きたいことがある」
「なんだよ」
面倒なやつに絡まれたと、適当に返事をした。
「twenty(トゥエンティ)を知っているか?」
その言葉を聞いた瞬間、全身がぞっとする寒気にも似た感覚を受けた。
この国には、国王を始めとした王族が住む御所がある。政治に対してどうこうオレは言うつもりはないので、特にこれには触れない。この御所を守る2人の騎士。それと全国に散らばる18人の騎士。御所配属は一定期間常駐して、誰かと入れ替わりで当たっている。これがこの国の平和維持の方法だ。
世間的には所属人数を表した愛称のみで呼ばれているが、正式にはこう言われている。
——王室直属騎士団『twenty』
そして、現メンバーの一人こそがコリエンテだ。
「twentyがどうしたっていうんだよ」
「入りたくはないのか?」
ひとつ、深呼吸混じりのため息をついた。
「……声でわかっていたけど、お前……利汰右衛門だろ。いつからコスプレするようになった? 流行らないぞ、それ」
「なあに。他の候補者と無意味に当たらないためだ」
「だったら、オレに声をかけるな!」
山沿いに進めば避けられたが、先を急ごうと海沿いを進んだのがやはり間違いだった。なんとなく、当たるような気がしてならなかった。
「意味は当然ある。パスクさん、あなたを見た瞬間から」
「ケガの状態を見て、決めただろう!」
いや、平常心、平常心。これも作戦だろう。
「では、拙者と騎士団入りを懸けて、勝負願おう」
「……やめておく!」
「おいっ!」
「人のケガ具合を見ろよ……」
「それもまた、運命だ」
どんな運命だよ、それ。
「まあ、そんなに嫌ならさっさと片付けてあげよう」
すると頭に被っていた籠を脱ぎ捨てると、ちょんまげ頭があらわになった。
「絶対に突っ込まない。絶対に突っ込まない。侍のコスプレも流行らないなんて、絶対に言わない!」
「パスクさん。声が漏れていますよ」
絶対にこいつ、笑わせようとしている。
「正直、お前にはやられたよ」
「では、拙者の勝ちということで」
「そういう勝負じゃないだろ」
何でだろう。ものすごい疲労感に襲われた。
「それで、相変わらずあの刀か?」
「左様とも」
利汰右衛門が取り出したのは、片刃の反りがあるものだった。
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