Kitten Heart BLOG -Yunaとザスパと時々放浪-

『きとぅん・はーと』でも、小説を公開している創作ファンタジー小説や、普段の日常などの話を書いているザスパサポーターです。

【小説】「パスク、あの場所で待っている」第42話

2020年04月15日 06時41分54秒 | 小説「パスク」(連載中)
「あのばばあ。せっかく書いた書類、いちいちケチつけるんだもん」
 結局、コトミの愚痴を聞かされる羽目になった。
 タトリーニとの対戦翌日、荷物をまとめると、対戦相手を求めて東の方へ旅に出た。
 交代があるので四六時中ではないが、時折現れてはコトミの上司の愚痴を打ちまけていた。
「永遠に話し続けて、説教が終わらないだもん。嫌になってくる……」
 その愚痴を、永久に聞かされるオレの方が嫌になってくる。
「そして、お腹がすいた……」
「もう、奢らないからな!」
 コトミには、もう貸しはないはず。
「別にいいもん。交代になったら一人で探すもん」
 不満そうに頬を膨らませていた。
「おいしい甘味があっても、パスクさんには教えてあげない!」
「教えてくれなくて、構わないけどな」
 コトミほど、甘いものには興味がない。

 日もまだ真上にある時間帯。林を抜けると、急に開けた場所にたどり着いた。
「どこかの庭園みたいだな」
 人の侵入を塞ぐ柵がなかったから、私邸ではなく公園か何かだろう。
「甘味処とか、ないかな?」
「お前……さっきからそればっかりだな」
「だって。甘いものが、とにかく食べたいだもん」
 ふて腐れて、またも不機嫌になる。
「でも、これだけ広かったらあるのかなと思っただけなのに……」
「まあ、梅の木があるからな。花見で栄えたりするんじゃないか」
「そうだよね。なにかあるかな」
 コトミは、完全に遊びに来ている感覚だ。
「気楽でいいな……」
「あたしだって、ちゃんと仕事しているよ。こうやってパスクさんを常に監視しているもん」
「だったら、コトミ。そろそろ、持ち場に着いた方がいいんじゃないか?」
「なんで?」
「さっきから、オレを付けてくるやつがいる」
 庭園に入った頃から気配を感じていた。ここが私有地で監視する者がいるのであれば、真っ先に注意しに来るはずだ。しかし、それもなくコソコソ付け回っている。なにかの機会を探っているようだ。
「……候補者みたいだね」
「ああ、恐らく」
 愛剣に手をかけ、警戒を強めた。
「えー、だったら早く終わらせてね。そうじゃないと交代の時間が延びる……」
「お前の都合で、そんなことできるか! こっちは真剣勝負なんだぞ」
「じゃあ、あたしはこれで。パスクさん、頑張ってね」
 芝と梅が続く庭園で、どこに隠れるのか見届けていると、適当な生け垣を見つけ隠れた。
 隙間から姿が見え、あれでも隠れているつもりなんだろう。
 しかし、肝心の候補者が見つからない。なんとなく、コトミが走った方角とは違うのはわかるが、その影を見つけられない。
「くそっ。どこだ!」
 必死に辺りを見渡す。
 背後から何かが投げ込まれたのを感じ、振り返るが辺りは一気に暗くなった。
「煙幕か!」
 すぐさま愛剣を抜き取り、襲撃に備えた。
「そっちか!」
 気配を感じ取り構えると、愛剣からかなり重量感を受けた。相手は大剣の可能性がある。強度を強めてあるので、前のように簡単には折れたりしない。
 相手は一度離れた。なかなか煙幕が晴れず、見失った。
 この中で戦うのは不利だ。警戒しながら外に出ることを試みた。
「兄貴のカタキ!」
 再度、奇襲をかけてきた。またも作戦通りにさせないと、愛剣で受ける。
 しかし、こいつ。オレを知っているやつか。


≪ 第41話-[目次]-第43話 ≫
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