「お前の負けだよ」
剣先をタトリーニに向けて言い放った。
「くそっ……」
背後に刺さる己の剣を見て、気を落としていた。
「師匠がアレだから、勝てると思ったが……」
「アレと一緒にするな!」
最後になっても、嫌なことをいうやつだ。
「しかし、今回は調子がいいという、噂は聞くがな」
オレにとってはどうでもいい情報。会う気も無いから、当たらないように避けている。
タトリーニは、自身の剣を取りに起き上がった。ふらつきながらも拾い上げる様を見届けると、オレも鞘にしまった。
「じゃあな。もう会わないかも知れないが」
「……ああ」
こちらに手を振ると、よほどショックだったのか、そのまま森の奥へ消えていった。
勝ったのに思い出したくないアレの話題を出され、苛立ちが募り、気分が悪かった。
タトリーニもいなくなったので、改めて自分専用の湯治場へ向かった。
荒らさせてしまった湯船のゴミを取り除いて、元の状態に戻した。
やっとの思いで綺麗になった湯船に入った。心身共に回復して、気持ちが良かった。
今日は、他に候補者が来ないことを祈りつつ、ゆっくりすることにした。
空をのんびり眺めた。太陽の位置からすれば、もう昼過ぎか……。
木々の葉がなびく音を聞きながら、穏やかな時間が流れた。
今回の対戦は、修行の手応えを感じた。
しかし、実戦に投入するには、まだ修行の余地があるな。
『twenty』に入るためには、もっと圧倒しなくては……。
実戦できるまでに怪我も回復した。そろそろ、次を求めて旅に出るか思案していた。
ふと気配を感じ、手元に置いた愛剣を鞘から抜き、振り構えた。
「きゃあああぁぁぁ!!」
「やっぱり、お前か……」
「あたしだと分かっているんだったら、構えないでよ……」
ちょっと遊んでやろうとしたら、今にも泣きそうなコトミが腰を抜かしていた。
「パスクさんのイジワル!」
報復しようと桶を手に取り、殴りかかろうとしてきた。
「お前も監視員なんだから、そのくらいの危険を対処しておけよ」
そもそもルールを犯して、候補者の前に現れるのがいけないんだ。
「だって……。本当に斬られると思ったんだもん」
「さっきまで監視していたの、お前じゃないだろ。何の用だ?」
「暇だから、ちょっかい出しに来た」
それで返り討ちに遭ったのなら、自業自得だろ。
「ねえ、パスクさん。いつになったら旅に出るの?」
「なんでだ?」
「ここずっと同じ場所だから、飽きてきた」
「こっちは、お前の都合で旅しているんじゃない!」
「パスクさんの実家、ネビナから離れているようで、程よく近いから嫌なんですけど……」
「お前の上司の愚痴を聞く気は無いからな」
「もう、いい!」
構えていた桶からお湯を汲むと、オレの頭の上からかけてきた。
「パスクさんのばぁかあぁ!」
泣き顔が一転、やりきったかのような満足げな顔をしていた。
「じゃあ、東の方に行ってみるか?」
そして、子供のような笑顔になった。
≪ 第40話-[目次]-第42話 ≫
------------------------------
↓今後の展開に期待を込めて!
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剣先をタトリーニに向けて言い放った。
「くそっ……」
背後に刺さる己の剣を見て、気を落としていた。
「師匠がアレだから、勝てると思ったが……」
「アレと一緒にするな!」
最後になっても、嫌なことをいうやつだ。
「しかし、今回は調子がいいという、噂は聞くがな」
オレにとってはどうでもいい情報。会う気も無いから、当たらないように避けている。
タトリーニは、自身の剣を取りに起き上がった。ふらつきながらも拾い上げる様を見届けると、オレも鞘にしまった。
「じゃあな。もう会わないかも知れないが」
「……ああ」
こちらに手を振ると、よほどショックだったのか、そのまま森の奥へ消えていった。
勝ったのに思い出したくないアレの話題を出され、苛立ちが募り、気分が悪かった。
タトリーニもいなくなったので、改めて自分専用の湯治場へ向かった。
荒らさせてしまった湯船のゴミを取り除いて、元の状態に戻した。
やっとの思いで綺麗になった湯船に入った。心身共に回復して、気持ちが良かった。
今日は、他に候補者が来ないことを祈りつつ、ゆっくりすることにした。
空をのんびり眺めた。太陽の位置からすれば、もう昼過ぎか……。
木々の葉がなびく音を聞きながら、穏やかな時間が流れた。
今回の対戦は、修行の手応えを感じた。
しかし、実戦に投入するには、まだ修行の余地があるな。
『twenty』に入るためには、もっと圧倒しなくては……。
実戦できるまでに怪我も回復した。そろそろ、次を求めて旅に出るか思案していた。
ふと気配を感じ、手元に置いた愛剣を鞘から抜き、振り構えた。
「きゃあああぁぁぁ!!」
「やっぱり、お前か……」
「あたしだと分かっているんだったら、構えないでよ……」
ちょっと遊んでやろうとしたら、今にも泣きそうなコトミが腰を抜かしていた。
「パスクさんのイジワル!」
報復しようと桶を手に取り、殴りかかろうとしてきた。
「お前も監視員なんだから、そのくらいの危険を対処しておけよ」
そもそもルールを犯して、候補者の前に現れるのがいけないんだ。
「だって……。本当に斬られると思ったんだもん」
「さっきまで監視していたの、お前じゃないだろ。何の用だ?」
「暇だから、ちょっかい出しに来た」
それで返り討ちに遭ったのなら、自業自得だろ。
「ねえ、パスクさん。いつになったら旅に出るの?」
「なんでだ?」
「ここずっと同じ場所だから、飽きてきた」
「こっちは、お前の都合で旅しているんじゃない!」
「パスクさんの実家、ネビナから離れているようで、程よく近いから嫌なんですけど……」
「お前の上司の愚痴を聞く気は無いからな」
「もう、いい!」
構えていた桶からお湯を汲むと、オレの頭の上からかけてきた。
「パスクさんのばぁかあぁ!」
泣き顔が一転、やりきったかのような満足げな顔をしていた。
「じゃあ、東の方に行ってみるか?」
そして、子供のような笑顔になった。
≪ 第40話-[目次]-第42話 ≫
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最近、コロナが爆発的に拡大していて怖いですね。
船津選手も回復して欲しいですね。
パスクの連載を楽しく読ませていただいてます。
今は1話からまとめて読み返ししております。
yunaさんは作家さんなのですか?
とてもお話が面白いです!
これからも更新を楽しみにお待ちしております!
それでは、お体にお気をつけください。
舩津選手はまだ退院できないみたいですが、他の選手・スタッフには感染していなくて良かったです。
パスクを読んで下さいまして、ありがとうございます。
商業作家ではないですが、シナリオライターは少しやらせていただいています。
ひなさんも、お体にお気をつけください。