Kitten Heart BLOG -Yunaとザスパと時々放浪-

『きとぅん・はーと』でも、小説を公開している創作ファンタジー小説や、普段の日常などの話を書いているザスパサポーターです。

【小説】「パスク、あの場所で待っている」第41話

2020年04月08日 06時03分29秒 | 小説「パスク」(連載中)
「お前の負けだよ」
 剣先をタトリーニに向けて言い放った。
「くそっ……」
 背後に刺さる己の剣を見て、気を落としていた。
「師匠がアレだから、勝てると思ったが……」
「アレと一緒にするな!」
 最後になっても、嫌なことをいうやつだ。
「しかし、今回は調子がいいという、噂は聞くがな」
 オレにとってはどうでもいい情報。会う気も無いから、当たらないように避けている。
 タトリーニは、自身の剣を取りに起き上がった。ふらつきながらも拾い上げる様を見届けると、オレも鞘にしまった。
「じゃあな。もう会わないかも知れないが」
「……ああ」
 こちらに手を振ると、よほどショックだったのか、そのまま森の奥へ消えていった。
 勝ったのに思い出したくないアレの話題を出され、苛立ちが募り、気分が悪かった。

 タトリーニもいなくなったので、改めて自分専用の湯治場へ向かった。
 荒らさせてしまった湯船のゴミを取り除いて、元の状態に戻した。
 やっとの思いで綺麗になった湯船に入った。心身共に回復して、気持ちが良かった。
 今日は、他に候補者が来ないことを祈りつつ、ゆっくりすることにした。
 空をのんびり眺めた。太陽の位置からすれば、もう昼過ぎか……。
 木々の葉がなびく音を聞きながら、穏やかな時間が流れた。
 今回の対戦は、修行の手応えを感じた。
 しかし、実戦に投入するには、まだ修行の余地があるな。
 『twenty』に入るためには、もっと圧倒しなくては……。
 実戦できるまでに怪我も回復した。そろそろ、次を求めて旅に出るか思案していた。
 ふと気配を感じ、手元に置いた愛剣を鞘から抜き、振り構えた。
「きゃあああぁぁぁ!!」
「やっぱり、お前か……」
「あたしだと分かっているんだったら、構えないでよ……」
 ちょっと遊んでやろうとしたら、今にも泣きそうなコトミが腰を抜かしていた。
「パスクさんのイジワル!」
 報復しようと桶を手に取り、殴りかかろうとしてきた。
「お前も監視員なんだから、そのくらいの危険を対処しておけよ」
 そもそもルールを犯して、候補者の前に現れるのがいけないんだ。
「だって……。本当に斬られると思ったんだもん」
「さっきまで監視していたの、お前じゃないだろ。何の用だ?」
「暇だから、ちょっかい出しに来た」
 それで返り討ちに遭ったのなら、自業自得だろ。
「ねえ、パスクさん。いつになったら旅に出るの?」
「なんでだ?」
「ここずっと同じ場所だから、飽きてきた」
「こっちは、お前の都合で旅しているんじゃない!」
「パスクさんの実家、ネビナから離れているようで、程よく近いから嫌なんですけど……」
「お前の上司の愚痴を聞く気は無いからな」
「もう、いい!」
 構えていた桶からお湯を汲むと、オレの頭の上からかけてきた。
「パスクさんのばぁかあぁ!」
 泣き顔が一転、やりきったかのような満足げな顔をしていた。
「じゃあ、東の方に行ってみるか?」
 そして、子供のような笑顔になった。


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コメント (2)    この記事についてブログを書く
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2 コメント

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Unknown (ひな)
2020-04-10 07:18:33
yunaさん、こんにちは!お久しぶりです!
最近、コロナが爆発的に拡大していて怖いですね。
船津選手も回復して欲しいですね。
パスクの連載を楽しく読ませていただいてます。
今は1話からまとめて読み返ししております。
yunaさんは作家さんなのですか?
とてもお話が面白いです!
これからも更新を楽しみにお待ちしております!
それでは、お体にお気をつけください。
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Unknown (yuna mee)
2020-04-10 21:45:47
ひなさん、いつもコメントありがとうございます。

舩津選手はまだ退院できないみたいですが、他の選手・スタッフには感染していなくて良かったです。

パスクを読んで下さいまして、ありがとうございます。
商業作家ではないですが、シナリオライターは少しやらせていただいています。

ひなさんも、お体にお気をつけください。
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