「それにしても、その子どうするんだ?」
鍛冶の作業をしながら、親父さんがガトーに問いかける。
「じじぃに相談して決めようと思っていたが、明日にする」
予定が狂い、やるせない気持ちを押し殺しながら奥へ進もうとした。
「泊めるんだろ?」
「ああ。迷子だってさ」
「だったら、左奥の部屋。あそこ、貸してやれ」
それまで受け流すように答えていたガトーが、血相を変えて奥から戻ってきた。
「あの部屋だけは、ダメだって言っているだろう!」
「もういいだろう、いい加減」
「よくない!」
すると、ガトーは私の右手首をやや強引に引っ張っていった。
「リリーは、オレの部屋に泊める」
それはそれで、また問題があるような……。
奥へ連れてこられると階段があり、急にもかかわらず早足で登らされた。
二階まで登りきると、今度は右の部屋に連れてこさせられた。恐らくこの部屋の反対側が二人の言う『左奥の部屋』なんだろう。外見は、なんの変哲もない木製のドアだった。それは、ガトーの部屋と同じものだった。
「悪い。変なところを見せて」
「う、うん。いいよ、気にしていないし」
本当は、いろいろ気になるが。そんなこと、言える雰囲気じゃない。
「そ、そうだ。その……『おじいさん』ってガトーのおじいさんか誰かなの?」
しばらくガトーは首を傾げた。
「あ! じじぃのことか!」
ちょっと待ってよ。『じじぃ』って言わないと通らないの?
「この町の町長。いろいろ知っているから、リリーの帰り方が分かると思って」
ちゃんと私のことを考えてくれたんだ。
「ただ最近ボケ気味だから、しっかり答えてくれるかな?」
悪い冗談はやめて!
食事の準備は当番制らしく、この日は親父さんが作ってくれた。
いつの間にか、二人のお兄さんも帰ってきて、計五人で食卓を囲んだ。このお兄さんたちはガタイがしっかりしていて、男臭い環境だった。ガトーもああなるのも納得できた。
宣言通り、ガトーの部屋で一緒に寝ることになったが、なぜか寝付けなかった。場所は違うが昨晩と同じなのに。
ガトーを起こさないように、部屋の外に出て下に降りてみた。
作業場の方が明るかったので、恐る恐る入ってみると、親父さんがまだ作業をしていた。
「どうした? 眠れないのか」
「まあ、そんな感じです」
「ガトーのことは悪く思わないでくれ。昔はあれでも少しは女の子らしかった」
最初からじゃないんだ。意外だな……。
「どうしてああなったか、気になるか?」
知りたいような、どうでもいいような。
すると、カギを私に手渡してきた。
「それが『左奥の部屋』のカギ。知りたいなら、見てくるがいい。もちろん、ガトーにばれないように」
私は迷った。あまり人に干渉したくなかった。でも、ガトーがなぜ立ち入りを拒むのか。それが気になった。
意を決して、左奥の部屋に入ってみた。
中はガトーの部屋を鏡越しに見たように反転しているだけで、ほぼ同じ間取り。定期的に掃除された、至って普通の子供部屋だった。
≪ 第4話-[目次]-第6話 ≫
------------------------------
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鍛冶の作業をしながら、親父さんがガトーに問いかける。
「じじぃに相談して決めようと思っていたが、明日にする」
予定が狂い、やるせない気持ちを押し殺しながら奥へ進もうとした。
「泊めるんだろ?」
「ああ。迷子だってさ」
「だったら、左奥の部屋。あそこ、貸してやれ」
それまで受け流すように答えていたガトーが、血相を変えて奥から戻ってきた。
「あの部屋だけは、ダメだって言っているだろう!」
「もういいだろう、いい加減」
「よくない!」
すると、ガトーは私の右手首をやや強引に引っ張っていった。
「リリーは、オレの部屋に泊める」
それはそれで、また問題があるような……。
奥へ連れてこられると階段があり、急にもかかわらず早足で登らされた。
二階まで登りきると、今度は右の部屋に連れてこさせられた。恐らくこの部屋の反対側が二人の言う『左奥の部屋』なんだろう。外見は、なんの変哲もない木製のドアだった。それは、ガトーの部屋と同じものだった。
「悪い。変なところを見せて」
「う、うん。いいよ、気にしていないし」
本当は、いろいろ気になるが。そんなこと、言える雰囲気じゃない。
「そ、そうだ。その……『おじいさん』ってガトーのおじいさんか誰かなの?」
しばらくガトーは首を傾げた。
「あ! じじぃのことか!」
ちょっと待ってよ。『じじぃ』って言わないと通らないの?
「この町の町長。いろいろ知っているから、リリーの帰り方が分かると思って」
ちゃんと私のことを考えてくれたんだ。
「ただ最近ボケ気味だから、しっかり答えてくれるかな?」
悪い冗談はやめて!
食事の準備は当番制らしく、この日は親父さんが作ってくれた。
いつの間にか、二人のお兄さんも帰ってきて、計五人で食卓を囲んだ。このお兄さんたちはガタイがしっかりしていて、男臭い環境だった。ガトーもああなるのも納得できた。
宣言通り、ガトーの部屋で一緒に寝ることになったが、なぜか寝付けなかった。場所は違うが昨晩と同じなのに。
ガトーを起こさないように、部屋の外に出て下に降りてみた。
作業場の方が明るかったので、恐る恐る入ってみると、親父さんがまだ作業をしていた。
「どうした? 眠れないのか」
「まあ、そんな感じです」
「ガトーのことは悪く思わないでくれ。昔はあれでも少しは女の子らしかった」
最初からじゃないんだ。意外だな……。
「どうしてああなったか、気になるか?」
知りたいような、どうでもいいような。
すると、カギを私に手渡してきた。
「それが『左奥の部屋』のカギ。知りたいなら、見てくるがいい。もちろん、ガトーにばれないように」
私は迷った。あまり人に干渉したくなかった。でも、ガトーがなぜ立ち入りを拒むのか。それが気になった。
意を決して、左奥の部屋に入ってみた。
中はガトーの部屋を鏡越しに見たように反転しているだけで、ほぼ同じ間取り。定期的に掃除された、至って普通の子供部屋だった。
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