私は葛飾北斎が大好きです。長野県小布施町には北斎美術館もあり何回となく訪れています。北斎「富嶽三十六景」には一図一図に、北斎の意図や見どころがあります。北斎は、LIFE誌が選ぶ「この1000年で最も重要な功績を残した世界の人物100人」に選ばれた唯一の日本人。「富嶽三十六景」及び「北斎漫画」は、世界のゴーギャン、ゴッホ、セザンヌ、モネ、など多くの印象派画家に影響を与えています。まさに世界の「北斎」です。
「江戸日本橋(えどにほんばし)」
「富士山が遠くに見えて忙しく 江戸の始まり日本橋こそ」
日本橋は、長さ約二八間(約五十メートル「江戸名所図会」 )で、橋の上は人々が絶え間なく往来、橋の下は、一日中船が出入りするなど、喧噪に満ちていました。本図は両岸に立ち並ぶ蔵が透視遠近法で描かれています。画面手前に日本橋を描き、奥に一石橋、その上に江戸城、そして左前方に富士を描いています。欄干には擬宝珠が付けられています。橋の上には、大きな荷物を満載した大八車、天秤棒、材木など様々なものがあります。人々は、荷物をかついで忙しげに歩き、荷物を下ろしたりするなど、一日が今始まったか
のようです。
「江都駿河町三井見
世略図(こうとするがちょうみついみせりゃくず)」
「富士山が正面見える駿河町 三井が占める江戸の繁栄」
https://www.adachi-hanga.com/ukiyo-e/items/hokusai023/
「三井見世」とは、江戸屈指の呉服屋越後屋のことです。両側を三井が占める駿河町の通りからは、この図のように富士が正面に見通せました。看板にありますように、越後屋は現金掛け値なしで大評判となり、一日千両もの商いで江戸名所の一つとなりました。
この大店を下から見上げるような構図で大屋根を強調、動きの素早い瓦職人と空を飛翔する凧の動きが絶妙です。富士の三角形、屋根の傾斜も三角形と北斎らしいバランスとなっています。めでたい寿の字の凧は、三井のお正月の売り出し広告なのでしょう。
「東都駿臺(とうとするがだい)」
「高台の富士の眺めは素晴らしく 江戸の景観神田駿河台」
駿台とは神田駿河台のことです。地名の由来は、この土地が駿河城在番衆に与えられたためといわれます。この一帯は高台で富士の眺望によく、幕臣の屋敷が多く、いかにも江戸らしい景観を呈していました。坂道を武士や行商人、巡礼者などが行き交っています。坂道のわきに流れる川は神田川でしょうか。右側の大きな屋根と川向こうの家並みの小さな屋根との対比、その遠方には富士が白く、小さくそびえています。北斎らしい画です。
「東都浅草本願寺(とうとあさくさほんがんじ)」
「浅草は近くに見える本願寺 遠くの富士に凧がのんびりと」
東本願寺は天正19年(1591)、光瑞寺として建立され、明暦3年(1657)に起きた明暦の大火以後、浅草に移転し浅草御坊と称しました。画面近景に浅草の東本願寺本堂の大屋根、遠景に小さく富士。屋根の大きさを、屋根の上の職人たちを小さく描いて、強調しています。屋根と富士で三角形の相似が遠近の対比と重なっています。たこがのんびりと舞い踊っています。対角線上に配置された両者の緊張を凧がほぐしているようです。北斎得意の構図です。
参照
https://media.thisisgallery.com/20208048
https://www.adachi-hanga.com/ukiyo-e/category/8
https://fugaku36.net/free/nihonbasi
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