ショートなはなし

実際に体験したことをもとに、ショートな話をお聞きください。

石占いの女~その2~

2018-09-14 18:46:11 | 日記
「そう長くは続かないわ」

女が言った

僕が的を得ない表情をみせたからだろうか



女は続けた

「あなたの今の状況ってことよ」

~今すぐに借金がすぐになくなるとは到底思えない~


「まあ、少し先を見ることね」


女は、そう言いながら

赤い布をたたみ、折りたたみ式の台を片付け

後ろの格子戸に手をかけた




「ここがあたしの家なのよ」


黒い手袋が手招きする


僕は、だいぶ躊躇したけれど

彼女の家に足を踏み入れた



小さな玄関、上がり框との距離があまりない

靴を2、3足置いたらいっぱいになってしまう



玄関の左側には、階段があって、その奥に小さな居間があった

バスルームもトイレもキッチンも1階にあるようだ

昭和感が漂う


石占いの女~その1~

2018-09-11 21:05:22 | 日記
川崎あたりを歩いていた

~次がダメだったら諦めるしかないな~

冷たい風が頬を切るように吹き付ける


狭い路地をぬけて
大学時代の友人が経営する通信機器の会社に着いた

「用立てしたいのは山々だけど、うちも精一杯なんだ・・・すまん」

暗い階段をあがったその部屋には
覇気は感じられなかった


狭い路地を戻る
焼き鳥の煙に包まれる

腹がなった
しかし、ここで一杯やる金もない


行き交う人々の笑い声が、僕をさらに不幸にする

迷路のような狭い路地をぐるぐると回る
何度も同じ道を通っているような感覚になった

~迷ったな~

前を見たり、振り返ったり、右を見たり、左を見たり



「ちょっと、あなた」

その声は後ろからやってきた


声の方向に目をやると
黒いベールに黒い服を着た女が
赤い布をかぶせた台を前に置いて座っていた

~占いか~


「僕のことですか?」

「そう、こちらにいらっしゃい」

黒い手袋が僕を手招きした

「すみません。占ってもらうだけのお金がありません」

「わかっているわ」

女の表情がわからない


「この中に手を入れて」

女は、黒い天鵞絨の袋を僕の前に差し出した

「石を6つ取り出して」

僕は、赤い布の上に、6つの石を転がした



「なるほどね」

ベールの奥の目が笑ったように見えた