『観光』というタイトルだけど、短編集です。ちなみに発行は2010年8月(文庫版)。
作者はタイ系アメリカ人作家のラッタウット・ラープチャルーンサップという男性。
訳者あとがきに「本書がガイドブックのようなタイトルになったのは原題Sightseeingの通りということもあるが、(中略)"光を観る"とも読める「観光」にした」とあります。
私が堕ちたタイの沼は多分、あの国の中の〈光〉の部分。
それはうっすら気づいていて。
俳優さんたちみんな大卒だけど、苦労して大学に行った人も少なからずいるし。
度々報じられるニュースで、政治情勢の不安定さも知っている……。
私は何となく、ドラマで描かれる世界だけを見てるのはフェアじゃない気がして、この本を読みました。
美しいです。
静かで、しっとりとした情景が、映像として浮かんでくるような文章です。
ほろ苦さはありますが、つらすぎないので、読み手が多少疲れたり弱っていたとしても大丈夫。これも作家に流れるタイの血のおかげなのでしょうか。追い込み過ぎず、どこか〈赦し〉を感じる語り口です。
ジュンパ・ラヒリが好きな人なら読みやすい作品だと思います。
〈光〉があれば〈影〉もある。
もちろん、人それぞれ見たいものを見ればいいのですが。
この本は作品として良いですよ。
よろしければ。