映画でも有名になった
「ホノカア・ピープルズ・シアター」
アロハ・エンジェル・カフェとしても紹介されるカイナリウの
「アロハ・シアター」
アカカ滝に向かう途中にある小さな町の
「ホノム・シアター」
アメリカ最南端の町の
「ナアレフ・シアター」
この4つの映画館は、いずれも日系移民の谷本初蔵さんが、
4人の子供たちにために、島の東西南北に一軒ずつ建てたという。
小説『ホノカアボーイ』にも挿入されているこのエピソードを知ったとき、
ぼくは、
9年前、ツアーガイドをしながらハワイ島で働いていた、
ミクロネシア出身のTさんのことを思い出しました。
Queen Ka'ahumanu Hwy.を走りながら、車中でこんな話を・・・
Tさんは、ハワイ島に仕事を求めて数年前に家族で移住してきたのだそうだ。
はじめは、アリィドライブ沿いの安いコンドミニアムを買って暮らしていたという。
折から、ハワイ島で不動産ブームが起こり、
自分たちの住んでいるコンドミニアムの価格もみるみる上がり、
購入時の数倍の値段になったそうだ。
そこで、Tさんは思い切ってコンドミニアムを売り、
それを元手に、まずは10エーカーの土地を買ったのだという。
「10エーカー?」
聞いた瞬間、その広さも価格も把握できなかったぼくは、ただ驚くだけ。(1エーカー=1220坪)
「ハイ。でも、ホントウは、30エーカー買いたい。」
と真剣に答えるTさん。
「そんなに?どうして?」
思わずそう問いかけると、Tさんは言いました。
「ワタシ、3人の息子がいます。その息子たちに土地を残してやりたい。
3人仲良く、ケンカしないよう10エーカーずつね。
それが、ワタシの夢。
だから、一生懸命働く。」
故郷を遠く離れ、縁もゆかりもない異国の地で働き、
子供たちが苦労しなくても済むよう、出来る限りの財産を残してやりたい。
時代や出身国が違っていても、
おそらくその根底にある思いは、谷本さんもTさんも同じはず。
ハワイに限った話ではないけれど、そんな父親たちの思いもまた、
この島には刻まれているような気がしました。
残念ながら、その後Tさんがどうしているかは知らないのですが、
あの時、「だから、一生懸命働く。」といった横顔には、
父親としての強い決意があらわれていました。
だから、きっと・・・。
Aloha nui loa.