それは突然の連絡で、呆気ないものだった。
ここ数年は疎遠になっていた事を反省する間もなく、
ただ目の前にある骨壺を眺めるしかなかった。
クリスチャンであった彼の日曜礼拝に一緒に出た事、
厳かな結婚式を教会で行い参列した事、
車が好きな彼と深夜から早朝にかけてドライブした事、
台風が迫る大雨のなか自転車で通学した事、
沢山の思い出があるはずなのに思い出せない。
思い出せないように意識しているのかもしれない。
高校時代から20代という熱い時代を共に過ごしたのに。
近年の彼は、仕事も家庭も上手くいっておらず苦悩していた事を弟から知らされた。
また、母親が2年前から癌で入退院を繰り返していた事、最近ではお酒に逃げ、
暴言暴力を振い手に負えなかった事、どれも高校時代の友人誰一人知らなかった…
「兄は弱い人間だったんですよ」
という弟の言葉が苛立たしくもあり、悔しくて悲しくもあった。
「そんな事ないよ、こいつは強い男だよ」
と返すのが精いっぱいだった。
彼が高校時代に聴かせてくれた、織田哲郎。当時は全くの無名で、斜に構えた雰囲気と歌詞、音が何となく彼に似ていた。
初期のアルバムはどれも素晴らしいものばかりだった。ファン心理とは複雑で、爆発的に織田哲郎が売れてから、
彼も自分も織田哲郎から急速に興味を失っていった。
その頃に彼が起こした事故で、彼の運命は大きく変わった。
でも、彼は大きな試練を乗り越えて、結婚、就職、そして大きな戦いにも勝った。
結婚して京都に移り住み、何もかもが順調に見えていた。
その頃から疎遠になり、顔を合わせる機会もなくなり年賀状だけのやり取りが残った。
その年賀状すら、自分が離婚してから3年はなかった。
そして、再会する事なく、僕らの関係は終わった。
彼は今自分の事をどう思っているだろうか?
ステファノが亡くなって今日で1か月が過ぎた。
ステファノの事を忘れないよう、ここに残す。
また必ず会おう、ステファノ。
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