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くぼじーじるーむ

K-MIXより『年中夢中冷たいちゅう』あたりました

2004年7月1日、その夏の「みかんのお水ちゅう」が既に完売御礼状態だったこの時期、K-MIXでは2005年4月採用予定のアナウンサー試験が行われていた。
 山口県出身で広島の大学に通っていたその受験者の履歴書に目を向けると、特技・趣味欄に「テレサ・テンの『つぐない』を歌うこと」とある。履歴書にそう書くくらいだから、それなりに自信があるのだろう。「じゃあ、サビをちょっと歌ってみようか!」と私が言うと、一呼吸あって、♪愛をつぐなえば別れになるけど こんな女でも忘れないでね♪ときた。まさか、アナウンス試験で歌わされる羽目になるとは思いもしなかっただろうが、それにしても堂々とした歌いっぷり。何故、彼女に歌わせたかと言えば・・・。
その後、彼女は難関(!?)を潜り抜け、K-MIXのアナウンサー試験に合格。彼女の名前は廣木弓子。


  年も改まって2005年1月。今年もちゅうの発売が決定、セールス・プロモーションの中心に昨年同様、オリジナル・ソングのCD制作とプレゼントを行うことも決定し、自然と関係者のミーティングで、「今年は誰にどんな歌を歌わせるのか?」ということが話題になる。2004年のオリジナル・ソング『みかんでちゅう!』は杉山藍を起用したのだが、彼女は2005年3月でK-MIXを卒業する予定なので、別のパーソナリティの起用を考えなくてはいけない。「誰にする?」と聞かれ私は何のためらいもなく、「4月に来る新人がいい。」「でも、その子、歌、歌えるの?」「大丈夫、かなりイケる。少なくとも杉山藍よりは全然・・・。」「何で歌がイケるって知ってるの?」「だって、試験で歌わせたから・・・。」そして、何よりも彼女には度胸があるように思えた。新人離れしたこの度胸!これこそこの企画に何よりも必要なことなのです。

 歌う人間は決まった。次は曲。まずは今回の曲のコンセプト。前回の『みかんでちゅう!』は「おニャン子風アイドルポップス」だったが、今回はズバリ「ムード歌謡」。「FM局なのにムード歌謡」。このアンバランスな取り合わせが◎と信じて疑わなかったのは、頭の中に廣木弓子の歌う『つぐない』のイメージが鮮明にあったから。加えて、当時個人的ヘビーローテーションだった奥村愛子の『冬の華』のイメージがあったから。「レトロブームで結構イケるかも・・・。」
 「制作時間がたっぷりあるというわけではない」「県内のアマチュア・ミュージシャンとコラボレートした」という条件は昨年と同じ。昨年はこれ以上ないという絶妙なアーティスト「みかん」の3人が我々の目に留まったのだが、さて、今年は・・・。
 1月末、「神谷幸恵の独立宣言」で県内アマチュア・ミュージシャンとコネクションを持っている神谷幸恵に相談。すると、神谷は県東部で活動しているオジサン(失礼!)バンド、2ストライク1ボールの『風雪破れぞり』という、「演歌のクリスマスソング」というコンセプトの、なんとも破天荒な音源を聴かせてくれた。バンドのリーダーは三島市でスナックのマスターをしているらしい。「もしかして、この人たちなら・・・。」と思い、早速リーダーの横田さんに電話で連絡。事情を話し、「持ち歌の中に、ど演歌ではなくてムード歌謡テイストの曲はありますか?」と聞くと、「1曲あります。忘年会に歌うような男と女のデュエット・ソングです。」とのこと。「つまりそれは『3年目の浮気』とか『別れても好きな人』みたいな曲ってことだろうか? いいんじゃないの、その感じ!」思わず期待が高まる。そして、送られてきたのはイメージしたとおりのデュエット・ソング『カクテルナイト』だった。

  曲はこの『カクテルナイト』で決定。次はこの曲に「ちゅう」のイメージにあった新しい詞を2ストライク1ボールの詞担当、森野さんに依頼する。2月中旬のことだった。実はこの時点では詞のコンセプトがあまり明確になっていなかったため、森野さんへの説明も中途半端。ところが出来上がってきたのは「夏」「車」「FM」といったキーワードが入った『Magical Beat』というタイトルの詞。個人的にはこの大人びた感じが無茶苦茶気に入ったのだが、一部のスタッフから「廣木が歌うのなら、もっと女の子っぽい感じ、例えば『いろいろ大変だけど、ちゅうを飲んで頑張っちゃう!』みたいな感じの詞の方がいいんじゃないの?」という意見。「なるほど、そういうのもありか?」と私。というわけで、無理を承知で森野さんに再依頼。そこで、私は「曲はムード歌謡、詞の方は『アタック・1』みたいな世界でお願いできますか?」と説明。自分でも「こんな説明でいいのかよ?」と思いつつ、森野さんからの詞を待つ。すると、どうでしょう!1週間も経たないうちに森野さんから送られてきたのは『奮闘中』という仮タイトルのついた詞。「夢を追いかけて」「つらくても歩いて行こう」「流れる 涙の数と きらめく 額の汗を」そして、「癒してくれる 冷たい みかんのお水 ちゅう~♪」など、まさに『アタックNO.1』の世界。「森野さんって、凄い人!」と思わず感嘆。「この歌詞がムード歌謡調の曲にのる。ちょっとないんじゃないの、こんな曲!! これは『青春ムード歌謡』と呼ぶにふさわしい!!!」
 さらにリーダーの横田さんによれば、カラオケの方も『カクテルナイト』には入っていなかったブラスのトラックなども付け加え、もっとゴージャスになるよう、作・編曲担当の三浦さんが頑張ってくれている、という話。本当に2ストライク1ボールの皆さんには頭が下がる。

 一方、2月14日、いよいよ、廣木弓子がK-MIXでの新人研修をスタートする。そう、ここまでの一連の流れを、この企画の主役、廣木弓子はまったく知らなかった。自分の知らないところで、CDデビューの計画が進められているなど、夢にも思っていなかった、というわけだ。ずいぶん、無茶なことをする会社ですね、K-MIXは・・・。研修がスタートしてから数日後、4月からの担当番組の説明を終えた後、「実は、もうひとつ君に頼みたいミッションがあるんだけど・・・。」ひとしきり企画内容と今後のスケジュールを説明した後、廣木から出てきた言葉は「大変そうだけれども、楽しそう!頑張ります!うれしいです!」 最近の若い子は何事にも前向きで大いに結構!
 そして『奮闘中』という仮タイトルも、もう少し軽い感じがいいだろう、ということで、『年中夢中冷たいちゅう』に決定!

 レコーディングの日程は3月12日、13日の2日間、場所は昨年に引き続き相良町のスタジオ・ロッソ。12日は廣木の肩慣らし。歌をレコーディングするなんて当然初めてのことだから、廣木もさすがに緊張する。それに、この『年中夢中冷たいちゅう』は結構音域が広い。下の方の音域がなかなか安定しない。初日の出来は70点くらい。「まだまだ声は出そうだし、もっと感情を込めて、情景を頭に描いて歌えばもっと良くなる。」と本人を励まして、初日終了。 
 2日目は2ストライク1ボールのメンバーも迎えた本格的なレコーディング。ここで廣木も含めた我々スタッフと2ストライク1ボールは初対面。作詞の森野さん、「廣木さん、結構かわいいじゃん!」とテンション上がり気味。2ストライク1ボールの皆さんに、コーラス・パートを検討していただいている間に、廣木のメイン・ボーカルを収録。すると、どうでしょう!昨日の出来が嘘のような仕上がり。声はしっかり出ているし、感情もうまくのっている。一体、この12時間の間に廣木に何が起こったのか?

 少し部分的に取り直しは必要だが、メイン・テイクの録音は終了。続いては2ストライク1ボールの皆さんのコーラスパート、この曲の作・編曲者で、バンドのボーカリストでもある三浦さんと廣木のデュエット・パートなどを収録。順調に録音は進む。そして、最後にこの曲のポイントでもある「「癒してくれる 冷たい みかんのお水 ちゅう~♪」という部分を取り直し、全録音を終了。取り敢えずの仮ミックスを全員で試聴し終わると、スタジオに拍手が鳴り響く・・・。
 この後、最終的なエフェクト調整、トラックダウン、マスタリングに1週間ほど時間をかけ、3月23日に『年中夢中冷たいちゅう』は完成。後はCDプレスを行うだけに・・・。
 さぁ、皆さん、青春ムード歌謡の傑作『年中夢中冷たいちゅう』はお気に召していただけましたか

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