lilyalley*路地裏で逢いましょう

おだやかにゆるやかにたゆたう日々の記録
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夜をあつめる

2021年05月27日 | poetry(散文詩)

 

 

 

 

近所のお花屋さんには

いつもたくさんの

白いお花たちが並んでいます

 

 

わたしがそのお店を

好きな理由のひとつです

 

 

そういえば

通勤途中の道にも

梔子の花は咲いていました

 

 

朝はわからなかったのに

夕暮れの帰り道では

思わず振り返るほどに濃密な香り

 

 

白い花は

うす闇に浮かぶように

 

 

どんな色の花よりも

美しく芳しく咲くのだそうです

 

 

まるで

夜をあつめるようにひそやかに

咲いているのだそうです

 

 

帰り道

小さな花束を買って

お店を出る頃には

 

 

夕暮れの雨が

もう降りはじめていました

 

 

 

 

 

 

 

 

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雨の名前を数えましょう

2021年05月18日 | poetry(散文詩)

  

 
 
 
 

 

   

雨の名前が好き

 

 

五月雨(さみだれ)

夕立(ゆうだち)

通り雨(とおりあめ)

 

 

午後遅く

うたた寝をして

 

 

夢から醒めて

ぼんやりしていると

 

 

窓の外で

雨の音がしていました

 

 

青雨(せいう)

緑雨(りょくう)

街路樹に雨の糸

 

 

こんな日は

雨の名前を数えましょう

 

 

美しい雨音は

この世界をそっと濡らしていく

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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Eau Sauvage (野生の水)

2018年11月11日 | poetry(散文詩)

 

 

 

 

メロディや香りは

ときに暴力的ともいえる強引さで

わたしたちを連れ去ろうとするのです

 

 

通り過ぎてしまった

とうに忘れてしまったはずの場所へ

 

 

それはせつなく

煙るように雨が降る夜でした

 

 

スクランブル交差点で

懐かしい香りとすれ違いました

 

 

 振り向いた時にはもう

誰なのかさえわかりませんでした

 

 

びっくりして

ちょっと泣きそうになる

 

 

メロディや香りは

いつも

記憶のトリガーとなって現れる

 

 

あの頃のわたしから

いまのわたしへ

 

 

まるでそれは

過去から届く忘れもの

 

 

 



 

 

 Eau Sauvage っていうのは

香水の名前なんですよ。

むかしむかしそのむかし。

それくらい前に好きだった人の香りです。

まだ憶えてたことにびっくりしました

 

 

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夜をあつめて。

2017年08月11日 | poetry(散文詩)
 
 
 
 
 
 
 
 
白い花は。
 
他のどんな色の花よりも
 
芳しいのだそうです。
 
 
 
 
色とりどりで華やかな、
 
たくさんの美しい花たちに
 
負けないように。
 
 
 
 
その香りで
 
虫たちを誘うのだそうです。
 
 
 
 
今夜の帰り道
 
わたしが見た梔子の花も、
 
夜に浮遊するように咲いていました。
 
 
 
 
 
 
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