手術室で働く周麻酔期看護師は、麻酔診療だけでなく、麻酔科医を直接サポートする器械出しと、手術全般のサポートを行う外回りも仕事に含まれる。
外科病棟の勤務とは異なる働き方であり、手術や疾患に関する専門的な知識が求められる職場といえるだとう。
また、手術は患者の命に関わる大がかりな治療が多く、周麻酔期看護師の仕事は精神的にも体力的にも負担が大きく、責任も重い。
さらに、手術室では、病棟看護とは異なる能力が求められることも覚えておこう。
手術室で働く周麻酔期看護師に必要な能力およびスキルは、主に次の3つである。
1つ目は、強さだ。
体力・精神力ともに強くなければ、手術室の仕事は務まらない。
手術は通常で2〜3時間、長い場合では15時間以上におよぶこともある。
その間は一時も集中力を切らさず、任務を遂行しなければならない。
もちろんずっと立ちっぱなしである。
2つ目は、的確に判断できる冷静さである。
事前に綿密な検査をしていても、いざ執刀してみると、予想外の事態が起こることも多い。
どのような事態が発生しても、慌てずに行動しなければならない。
的確に状況を把握し、柔軟に対応できる冷静さが不可欠なのだ。
3つ目は、事前予測を行ってスピーディーに行動するスキルだ。
器械出しでは医師の指示でスピーディーに機械を手渡さなければならない。
状況を先読みし、次に必要な機械を予測するなど、即座に反応できるスキルが求められる。
外回りでも手術室全体の状況を常に把握し、スムーズに手術が進むよう、全体に気配りをしなければならない。
マルチタスクが求められるので、常に先読みをして行動する必要があるのだ。
周麻酔期看護師は、麻酔科医の指示のもと、麻酔診療のサポートする看護師のことをいう。
具体的な業務としては、主の次の7が挙げられる。
1つ目は、手術前の問診や麻酔についての説明。
2つ目は、手術後の対応。
3つ目は、全身麻酔を行った後の、ビデオ喉頭鏡チューブの挿入や取り外し。
4つ目は、全身麻酔時の点滴。
5つ目は、手術中の麻酔薬などの投与。
6つ目は、麻酔中の血圧などの数値確認。
7つ目は、麻酔医の介助だ。
手術中の麻酔診療に関するさまざまなサポートを行うことで、安全で質の高い麻酔診療を提供するのが、周麻酔期看護師の役割である。
麻酔薬は、手術など命に関わる緊急事態における医療に使われている。
また、周麻酔期看護師は優れた技術に加え、薬理学や病態生理学など、麻酔医療の高度な知識を身につける必要があることも覚えておこう。
さらに、麻酔という専門分野に携わる周麻酔期看護師は、日本においては比較的新しい仕事だ。
これまで手術室での看護師の役割は、器械出しと外回りのみで、外回り業務の一環として、麻酔医のサポートを行っていた。
しかし、麻酔医の負担が大きいため、麻酔医専門のサポートが求められていた。
そこで聖路加国際大学が2010年に、麻酔に関するカリキュラムを大学院で開設したのが、周麻酔期看護師の育成の先駆けである。
現在では国内の複数の大学院で、人材育成が行われているが、周麻酔期看護師に関する特別な資格は設けられていない。
周麻酔期看護師の育成を行っている大学が、それぞれ独自に認定する資格となっている。
このため周麻酔期看護師として働くためには、大学院で規程のカリキュラムを修了する必要があるのだ。