第三章 不安
伊都子「もしもし、おはようございます。今日、10時に渋谷のハッチスタジオに伺えばよろしいですね。」
電話の向こうは、もうにぎやかな仕事場の音が飛び交っていた。
編集長「おお!!帰ってきたんだな!こきつかうぞ。覚悟しろよ!じゃ、10時に待ってるから。」
伊都子「はいっ!では、後ほど。。」
伊都子はスタイリストの仕事をしていたのだった。雑誌「CAM CAM]のスタイリストとして活躍している伊都子。
伊都子は、身支度をしながら修を思い出していた。
修と行った北海道での、弟修二との再会にくすっと笑い。。修が心臓が悪かったと聞いて、一瞬涙ぐんだこと。。
そう・・だれの詩だったかしら?
「微笑みと涙の間」
そんな詩があったけ。と思いながら、さぁ、仕事に出かけなくては、と玄関を飛び出したのであった。
久しぶりの現場仕事に、少しワクワクする気持ち押さえながら、会社前からタクシーに乗った
「すみません、ちょっと急いで代官山Kスタジオまで行って下さい。」
週明けのせいか思いのほか、都内は込んでいた
= タクシーの中 =
<今日のお仕事の相手は、・・・今話題の女性占い師だったわね>
と、心の中で呟きながら黒革の手帳に目を通す
<この方の衣装集めには、本当参ってしまったわ>
仕事での愚痴は決して言わない伊都子であったが・・・
この仕事だけはやりたくなかった
しかし、女性占い師たってのご指名で、しかたなくOKを出した伊都子だった
<ああ~修さんにあいたい。。。>
車の窓から見える青空を見上げながら呟いた
「お客さん、着きましたよ」
はっ、と我に返る伊都子
伊都子「ありがとう」
と、言い残し、Kスタジオの中へと足早に消えていった
その伊都子の横顔は もうすっかり業界人の顔であった。
= Kスタジオ内 =
伊都子「太木数子先生、はじめまして。スタイリストの綾小路伊都子と申します。よろしくお願いいたします 」
太木数子先生「あなたなの!?今売り出し中のスタイリストは!?」
伊都子「はっ!?・・・はい!」
太木数子先生「ちょっとあなた! 生年月日は!?」
伊都子「はっ!?・・・はい!昭和47年4月10日生まれです。」
太木数子先生「わたくしの六星占術で占ってあげるわ」
伊都子「はっ!?・・・はい!」
太木数子先生「あなた、星数=8だから 土星人ね」
伊都子「はっ!?・・・はい!」
太木数子先生「あなた、それより大変な星の下に生まれた人ね」
伊都子「そ、そ、それはどういう意味なのでしょうか!?」
太木数子先生「まっ、いいわ・・・さあ~今日のわたくしの衣装はどれ!?」
その言葉のあとは、ひたすら 駒使いのように働く伊都子であった
その仕事の帰り道・・・伊都子は 太木数子先生のあの言葉を考えながら
<そうだわ。。。修さんに相談してみよう>・・・と思った
太木数子と言えば、誰もが知っている・・・
その人に言われた言葉・・・
大変な の下に生まれたって・・・
伊都子は、熱いシャワーで疲れた身体をほぐしながら、自分の生い立ちを思い返してみた・・・
大手企業の役員の娘として何不自由なく育った。
幼い頃、テレビや映画で華やかな女優を見、その身に着けている物に憧れを持った。。。
両親の反対を押し切り、大学への進学の代わりにパリでファッションの勉強をした・・・
沢山のファッションがある中、デザイナーよりスタイリストの方が合う、そう自分で決めて始めた仕事だった。。。
人を引き立たせる為の仕事は楽しかった・・・
いつしか、伊都子をスタイリストにと言う芸能人が増え、今では、毎日、分刻みの仕事をこなすようになっていた。
「どうしたの?疲れた?」
バリトンボイスが優しく聞こえていた。。。
「い、いいえ、、、、実は今日ね、太木数子先生の仕事だったのだけれど、その時に・・・」
修が好きなボルドーの赤ワインを手に伊都子は話はじめた。
「そうなのか、僕はそういう事にうといんだ、で、今度は、いつ太木先生に会うの?」
「来週なの、お話を聞くまでちょっと不安だわ」
「大丈夫だよ、僕がいるじゃないか!心配ならそういう事に詳しい大阪のオバチャンに聞いてみたらいいよ」
「そうね、明日にでもオバチャンに電話してみるわ」
伊都子「もしもし おばさん?」
大阪のおばちゃん「オボセヨ もしもし いっちゃん?どないしたん あれからみんな 元気やったか?」
伊都子「えぇ 先日は ありがとうござました。おかげさまで皆元気にしております。修さんのお母様との 再会にまで立ちいることができて、本当におばさんのおかげです」
大阪のおばちゃん「そうかあよかったなあ。おばちゃんも嬉しいわ」
伊都子「おばさん。今日電話したのはね、ご相談したいことがあって・・・」
大阪のおばちゃん「どないしたんいうてみ。いうっとくけどな、お金はないで。ははははは」
伊都子「ううんおばさん。この前ね、仕事であの太木数子氏がね、私の事をみてくれて、あんたは大変な星 の下に生まれたって言われたんです。修さんは、気にするなというんだけど、なんか心配になって・・・」
大阪のおばちゃん「そうなんや。伊都子ちゃん、おばちゃんな、何十年も前にな、自分がどう進んでいいか、どの方向にいけばいいんか立ち止まっていた時に、太木数子女史の本を読んだんよ。そうしたら、大阪へ行けってかいてあった、それから迷うことなく大阪にきたんよ。伊都子ちゃんも 何を言われるか心配だろうけど、案外いいことも悪いことも素直に受け止めてみたらいいよ。また新しいみちが開けるかもしれんよ。心配せんと、言われるとおりにやってみ。大丈夫だからね」
伊都子「はいおばさんわかりました。なんか気持ちが落ち着きました。ありがとうございます。また連絡しますね」
伊都子は、思いがけない大阪のおばちゃんの言葉に、なんかほっとするものを感じた。
あれから、1週間・・・時間の経つのは 早いものだ
今日はまた太木先生と一緒にお仕事をする日だった
伊都子は、大阪のおばちゃんの言葉や 修さんの言葉を思い出しながら Kスタジオに向かった
そして ミスのないように事無く仕事を終えた
帰り際に・・・
太木数子先生「あなた、帰っちゃあ~ダメじゃあないの!」
伊都子「。。。先生。。。」
太木数子先生「伊都子さん、あなた大変な星の下に生まれた人って私、言ったわよね、!大事なこれからの事、聞きたくないの!?」
伊都子「先生、あれから私、気持ちが揺れて、いったりきたりなんです! 」
太木数子先生「まあ~座りなさい!あなたが大変な星の下に生まれた人って言ったのはね・・・女としてこれほど幸せは人はいないって事なのよ」
伊都子「女として、ですか!?」
太木数子先生「そうよ、今あなた好きな人がいるでしょう。その人とは運命的な出会いで巡り会えた人だから、何があってもその人について行きなさい!私が言いたかったのは、それだけよ」
伊都子「あ、ありがとうございました」
御礼の言葉を残し、伊都子は早足で修の待つ部屋へと急いだ
夜空を見上げると 東京には珍しく満天の星が光っていた
伊都子は足早と家に向かう途中で、バッグの中で携帯電話の鳴る音に気付いたのであった。
伊都子「もしもし、おはようございます。今日、10時に渋谷のハッチスタジオに伺えばよろしいですね。」
電話の向こうは、もうにぎやかな仕事場の音が飛び交っていた。
編集長「おお!!帰ってきたんだな!こきつかうぞ。覚悟しろよ!じゃ、10時に待ってるから。」
伊都子「はいっ!では、後ほど。。」
伊都子はスタイリストの仕事をしていたのだった。雑誌「CAM CAM]のスタイリストとして活躍している伊都子。
伊都子は、身支度をしながら修を思い出していた。
修と行った北海道での、弟修二との再会にくすっと笑い。。修が心臓が悪かったと聞いて、一瞬涙ぐんだこと。。
そう・・だれの詩だったかしら?
「微笑みと涙の間」
そんな詩があったけ。と思いながら、さぁ、仕事に出かけなくては、と玄関を飛び出したのであった。
久しぶりの現場仕事に、少しワクワクする気持ち押さえながら、会社前からタクシーに乗った
「すみません、ちょっと急いで代官山Kスタジオまで行って下さい。」
週明けのせいか思いのほか、都内は込んでいた
= タクシーの中 =
<今日のお仕事の相手は、・・・今話題の女性占い師だったわね>
と、心の中で呟きながら黒革の手帳に目を通す
<この方の衣装集めには、本当参ってしまったわ>
仕事での愚痴は決して言わない伊都子であったが・・・
この仕事だけはやりたくなかった
しかし、女性占い師たってのご指名で、しかたなくOKを出した伊都子だった
<ああ~修さんにあいたい。。。>
車の窓から見える青空を見上げながら呟いた
「お客さん、着きましたよ」
はっ、と我に返る伊都子
伊都子「ありがとう」
と、言い残し、Kスタジオの中へと足早に消えていった
その伊都子の横顔は もうすっかり業界人の顔であった。
= Kスタジオ内 =
伊都子「太木数子先生、はじめまして。スタイリストの綾小路伊都子と申します。よろしくお願いいたします 」
太木数子先生「あなたなの!?今売り出し中のスタイリストは!?」
伊都子「はっ!?・・・はい!」
太木数子先生「ちょっとあなた! 生年月日は!?」
伊都子「はっ!?・・・はい!昭和47年4月10日生まれです。」
太木数子先生「わたくしの六星占術で占ってあげるわ」
伊都子「はっ!?・・・はい!」
太木数子先生「あなた、星数=8だから 土星人ね」
伊都子「はっ!?・・・はい!」
太木数子先生「あなた、それより大変な星の下に生まれた人ね」
伊都子「そ、そ、それはどういう意味なのでしょうか!?」
太木数子先生「まっ、いいわ・・・さあ~今日のわたくしの衣装はどれ!?」
その言葉のあとは、ひたすら 駒使いのように働く伊都子であった
その仕事の帰り道・・・伊都子は 太木数子先生のあの言葉を考えながら
<そうだわ。。。修さんに相談してみよう>・・・と思った
太木数子と言えば、誰もが知っている・・・
その人に言われた言葉・・・
大変な の下に生まれたって・・・
伊都子は、熱いシャワーで疲れた身体をほぐしながら、自分の生い立ちを思い返してみた・・・
大手企業の役員の娘として何不自由なく育った。
幼い頃、テレビや映画で華やかな女優を見、その身に着けている物に憧れを持った。。。
両親の反対を押し切り、大学への進学の代わりにパリでファッションの勉強をした・・・
沢山のファッションがある中、デザイナーよりスタイリストの方が合う、そう自分で決めて始めた仕事だった。。。
人を引き立たせる為の仕事は楽しかった・・・
いつしか、伊都子をスタイリストにと言う芸能人が増え、今では、毎日、分刻みの仕事をこなすようになっていた。
「どうしたの?疲れた?」
バリトンボイスが優しく聞こえていた。。。
「い、いいえ、、、、実は今日ね、太木数子先生の仕事だったのだけれど、その時に・・・」
修が好きなボルドーの赤ワインを手に伊都子は話はじめた。
「そうなのか、僕はそういう事にうといんだ、で、今度は、いつ太木先生に会うの?」
「来週なの、お話を聞くまでちょっと不安だわ」
「大丈夫だよ、僕がいるじゃないか!心配ならそういう事に詳しい大阪のオバチャンに聞いてみたらいいよ」
「そうね、明日にでもオバチャンに電話してみるわ」
伊都子「もしもし おばさん?」
大阪のおばちゃん「オボセヨ もしもし いっちゃん?どないしたん あれからみんな 元気やったか?」
伊都子「えぇ 先日は ありがとうござました。おかげさまで皆元気にしております。修さんのお母様との 再会にまで立ちいることができて、本当におばさんのおかげです」
大阪のおばちゃん「そうかあよかったなあ。おばちゃんも嬉しいわ」
伊都子「おばさん。今日電話したのはね、ご相談したいことがあって・・・」
大阪のおばちゃん「どないしたんいうてみ。いうっとくけどな、お金はないで。ははははは」
伊都子「ううんおばさん。この前ね、仕事であの太木数子氏がね、私の事をみてくれて、あんたは大変な星 の下に生まれたって言われたんです。修さんは、気にするなというんだけど、なんか心配になって・・・」
大阪のおばちゃん「そうなんや。伊都子ちゃん、おばちゃんな、何十年も前にな、自分がどう進んでいいか、どの方向にいけばいいんか立ち止まっていた時に、太木数子女史の本を読んだんよ。そうしたら、大阪へ行けってかいてあった、それから迷うことなく大阪にきたんよ。伊都子ちゃんも 何を言われるか心配だろうけど、案外いいことも悪いことも素直に受け止めてみたらいいよ。また新しいみちが開けるかもしれんよ。心配せんと、言われるとおりにやってみ。大丈夫だからね」
伊都子「はいおばさんわかりました。なんか気持ちが落ち着きました。ありがとうございます。また連絡しますね」
伊都子は、思いがけない大阪のおばちゃんの言葉に、なんかほっとするものを感じた。
あれから、1週間・・・時間の経つのは 早いものだ
今日はまた太木先生と一緒にお仕事をする日だった
伊都子は、大阪のおばちゃんの言葉や 修さんの言葉を思い出しながら Kスタジオに向かった
そして ミスのないように事無く仕事を終えた
帰り際に・・・
太木数子先生「あなた、帰っちゃあ~ダメじゃあないの!」
伊都子「。。。先生。。。」
太木数子先生「伊都子さん、あなた大変な星の下に生まれた人って私、言ったわよね、!大事なこれからの事、聞きたくないの!?」
伊都子「先生、あれから私、気持ちが揺れて、いったりきたりなんです! 」
太木数子先生「まあ~座りなさい!あなたが大変な星の下に生まれた人って言ったのはね・・・女としてこれほど幸せは人はいないって事なのよ」
伊都子「女として、ですか!?」
太木数子先生「そうよ、今あなた好きな人がいるでしょう。その人とは運命的な出会いで巡り会えた人だから、何があってもその人について行きなさい!私が言いたかったのは、それだけよ」
伊都子「あ、ありがとうございました」
御礼の言葉を残し、伊都子は早足で修の待つ部屋へと急いだ
夜空を見上げると 東京には珍しく満天の星が光っていた
伊都子は足早と家に向かう途中で、バッグの中で携帯電話の鳴る音に気付いたのであった。
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