インドのカタック舞踊☆東京ガラナ

インド古典舞踊「カタックダンス」舞踊家、振付家の前田あつこのブログです。カダムジャパン主宰。atsukathak.com

もう1ヶ月。

2012-05-08 | インド日和~旅日記~
気付けばこの5月のスーパームーン(満月)でインド公演から1ヶ月でした。
忙しかったのでもうずっと昔の事みたいな気持ちがしますけれど。

そう、4月の満月が私のAhmedabadでの公演日でした。
夕方の熱風の中、Nataraniの赤煉瓦に囲まれた劇場には小さな白い花の咲く巨木が差しかかり
煙った空に月が浮かんでいたのでした。

私は姉弟子Nandhini didi の車でSanjuktaと三人で劇場へ向かい、
あまりに素敵なグリーンルーム(楽屋)にウキウキしながら
ミュージシャンの到着を待ってサウンドチェックが始まったのでした。

この夜は少し後ろの河からの風があって、半円劇場の熱が拡散されている様で
あぁ良かった。と思いました。
風が吹く度に白い小花がぱらぱらと落ちて来て、それが何とも素敵な演出の様な気がしたのでした。
Abhinayaを舞うのに、ムードはいちばん大切。
インドにいてこれが何よりいちばん素晴らしいと思うのです。
私の踊る頃にはあの大きな満月が背景の黒い幕の上にぽっかりと浮かぶと思うと胸が高まる気がしました。

私はちょっとあがってしまっていて、スペースチェックと床のコンディションを見ながら
コンポジションをおさらいしていたのですが、これが上手く思い出せなくてちょっと間違えそうで危険!と思ったりしていました。
でも滑ったり、床に落ちた花や枝が気になるかと思ったけれど、意外と私もインド舞台に馴らされているもので、特に問題は感じず。
サウンドチェックは無事終了。

楽屋にはもう既に同じ日に公演をするモヒニヤッタムの若手女性舞踊家さんと
クチプディの男性舞踊家さんが到着し、メイクアップを始めていました。

私は彼らのハイテンションが少し鬱陶しくて、高すぎるカフェチェアと
素敵すぎる6灯のライトが配された鏡の前には座らずに
床に座ってメイク道具を広げたのでした。

すぐ近くをちょっと落ち着かないSanjuktaが行ったり来たりしていて
Kumibenから指示のあった「私の結婚式の写真の様なちょっと和風メイク」
=「日本人の考えるところのちょっと洋風ぱっちり目メイク」を再現すべく
ホテルのメイクさんがしてくれたから分かんないよ~と思いながらチャコットの化粧品を駆使して
手早く仕上げて。

皆様の手を借りてあたらしいチャニヤ&チョリスタイルのコスチュームを身に着け
ドパタを身に付け。
ジュエリー、そしてグングル。

ひとり目の舞踊家さんがバタバタと公演を終え、
ふたり目の舞踊家さんが舞台に上がった頃

私達は出演者全員が集まって、シークエンスを再確認。
今朝出来上がったばかりのアビナヤのことはもう舞台でまとめあげる事にして
兎に角自信もって、コンフィデンスに!と言われながら
出番がやって来たのでした。


アララカのサーランギーが夜風とともに自分の上に下りて来た時
あー、はじまる。って神聖な気持ち。
静かに舞台に上がり、ゆっくりと光が強くなってゆき。
大好きなタートを舞う。
ウッパチでタブラのジョビが間違えた。
つられて次のコンポジションにひきずった。
立て直さなくちゃって大好きな新しいコンポジションで大きくステージを使う。
意外な展開になる筈のジャパニーズパンカ=扇子をSanjuktaより受け取り
Kumibenが特別に創って下さったコンポジションと、
私が初めてkadambに留学した頃に教わったコンポジションの特別Ver.を舞う。
拍手。
すごくカタックっぽい強いフットワーク、
回転の強いコンポジション,
ボルを言って、
新しい美しいパラン。
ちょっと息抜きにボール遊びのコンポジション、
拍手。
グッと後ろに下がって、チャール。劇場が見渡せて、気持ちを落ち着けて集中。
ガタニ・ガース。
ホーリーのabhinayaは?と問われて、「日本人の季節の感覚で言うと先取りは美しいけれど後追いはナシ。
私は日本人だから、これから来る雨のムードを舞うのはいいと思うけれど、終わったばかりのホーリー祭のムードを舞うのはNG」って
私の我が侭を聞き入れてもらったパート。
雷が鳴って、雨がぱらぱらと落ちて来て。クジャクが羽を伸ばして、舞い上がる。
拍手。
日本人らしくお辞儀。(これもKumibenのアイディア!)
フラメンコみたいにスカートをふわっふわさせたフットワーク,
クルクルとチャッカール回転がいっぱいつまったコンポジション,
そしてまたいっぱいチャッカール。
最後はとってもキュートなラリーで終わった。
このラリー,Sanjuktaがとっても大切にしているだろうひとつ。
ちょっと短いverに仕立て直してくれて、これがとってもいい雰囲気に仕上がった。
またひとつお辞儀をして
すっと幕の後ろに下がった。

一呼吸。

夜風と満月、そしてサーランギー。
美しい少しスモーキーなミランデのアーラープが一気にムードをつくってくれる。
あとは何も考えずに
舞うだけ。

贅沢な空間と、
今日この一瞬の為に力を貸してくれた全てのひとに感謝しながら。

クリシュナにスピリチュアルな愛を捧げるミラという女性の唄。
昨年の秋に沢山日本で踊った詩。

前日Rupanshiが「あれは簡単よね」と言ったけれど、
アビナヤに簡単もむずかしいも私は無いと思っていて
彼女には何も言わなかったけれど「簡単」といってのけるのは100年早いんじゃないかと思った。
そこには深い深いどこまでも深まりがあって追求しても追求しても終わりは無いと思う。
その人の今の年齢,精神状態,経験、色々な事がオーバーラップしてくる世界。

私はヒンズー教徒じゃないし、クリシュナ神に信仰心があるわけではないけれど
「愛する気持ち」とか「恋いこがれ待ちこがれる気持ち」とかそういう事は国籍とか宗教とか
多分関係がないと思うから。私の視点で取り組むのですけれど、
これがインドの人たちのどう伝わるのかはこの度の挑戦でもあったと思います。

本番はそんな事どうでも良くて、まったく考えていないわけですが
終演後、Kumibenが「敦子、よかったわよ!」と言って下さった事がもう本当にすべてで。
Sanjuktaの無言の笑顔と、この夜の共演者達のハグが物語っていました。

Ahmedabadに住まう数少ない日本人のNaisha,Aizenka,Tomoko親子も観に来て下さり
Kadambの生徒達もJayも。

それから遠くから見守ってくれた人たちにも。


ありがとう。


あたたかい気持ちになった瞬間でした。


夜、そのままJayとSanjuktaの車に飛び乗り、さらっと着替えてロードサイドのカフェへ。
アルーパラタとハッカヌードルがこんなに美味しかったのは初めてね!
その後行ったチャイで溶けたのでした。


またインドでソロできるチャンスがあったとしたら是非取り組みたいと思いました。
こんな体験はきっと一生に一度なんだと思いますけれど。
すてきなすてきな時間、でした。


ダンニャワード、シュクリア。

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