随分前の話だが、外務省の中国課長経験者から聞いた話である。自民党の某元幹事長と某元総裁は、どちらがより親中かを競い合い、片方が訪中するとすぐにもう一方もはせ参じた。元課長は嘆じた。「そして時の日本の首相の悪口を言う。中国側は彼らを歓待するが、心の底では軽蔑していた」。
▼訪中して王毅共産党政治局員兼外相らと会談した公明党の山口那津男代表の場合はどうだったのか。「山口氏は今さら何で中国へ行くのかな。習近平国家主席と会えるかどうかは分からない」。公明党関係者が事前に漏らしていた通り、過去に4度会っている習氏との会談は今回は実現しなかった。
▼山口氏は一連の会談で「(対中)国民感情を友好的にするための一つの手立て」として、仙台市へのジャイアントパンダ貸与を要請した。だが、中国との間で邦人拘束、日本産食品輸入規制、日本の排他的経済水域内での中国ブイ設置…と懸案が山積している中で、なぜ対中感情を和らげる必要があるのか。
▼歴史的に中国はパンダを外交ツールとして使い、文字通り日本に「貸し」を作ってきた。平成30年10月の安倍晋三首相訪中の際も、事前にパンダ貸与で合意するとの報道が出たが、安倍氏自身は否定した。「勝手に外務省がやっていることで、パンダなんて頼みたくもない」。
▼もともと公明党と中国の蜜月は昭和49年、党創立者である創価学会の池田大作会長と周恩来首相との会談に始まる。それから半世紀近い歳月が過ぎ、池田氏の死去直後のタイミングで訪中した山口氏に、習氏が直接弔いの言葉をかけることはなかった。
▼公明党は中国にさまざまな配慮を重ねてきた。そうした特別な関係も、過去の歴史になっていくのか。
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