イスラエルのネタニヤフ首相が米議会で演説し、パレスチナ自治区ガザでイスラム組織ハマスに「完全勝利」するまで戦闘を続けると改めて表明した。停戦協議の道筋は示さなかった。ガザ攻撃の際限ない長期化と市民の犠牲拡大を食い止めなければならない。
ネタニヤフ氏との首脳会談でバイデン米大統領は早期の停戦合意を促した。ハリス副大統領もガザの人道状況に深刻な懸念を伝え、会談後に「戦争を終わらせるときが来ている」と明言した。イスラエルは耳を傾けるべきだ。
バイデン氏は11月の大統領選出馬を断念したばかりだ。米政権の求心力の低下で、膠着状態が長引くことがあってはならない。
すでに戦闘は9カ月間に及び、ガザでの死者は3万9千人を超えた。バイデン氏は停戦と人質解放に向けた案を示し、停戦交渉を仲介してきたが、妥結はみえない。ネタニヤフ氏が条件をつり上げ、政治的延命のため停戦を先送りしているとの見方がある。
ネタニヤフ氏の米議会演説は4回目で、英国のチャーチル元首相を抜き外国首脳で最多になった。しかしワシントンでも抗議デモがあり、ハリス氏を含む民主党議員の一部が議会演説を欠席した。
イスラエル国内でも人質解放を願う市民の批判にさらされる。今回の演説で戦争の正当性を強調し、武器支援の加速を求めたのは、政権浮揚の狙いもあったろう。イランの脅威を訴え「我々の勝利は米国の勝利だ」と主張した。
ハマス打倒後には「非武装化、非過激化したガザ」ができるとし「非武装化、非過激化は第2次大戦後のドイツと日本に適用され、平和をもたらした」と述べた。
だが当時の米国は西独や日本の戦後復興を助け、冷戦下の防波堤としてであれ友人として共存しようとした。同じようにパレスチナに接する用意があるのか。
今回の訪米では秋の大統領選で返り咲きを狙う共和党のトランプ前大統領とも会談した。バイデン氏とバランスを取った形だが、前政権時の蜜月関係の再現を望んでいるとの観測は絶えない。
ただしトランプ氏はガザの戦闘の速やかな終結を求めると米メディアに述べている。停戦へ決断を促す姿勢は、大統領選で民主党の候補指名を確実にしたハリス氏と共通する。いずれにせよ停戦圧力がやむことはない現実を、ネタニヤフ氏は直視する必要がある。
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