2024年7月5日(金)
きょうの潮流
障害者を劣った存在として国が不妊手術を強いた旧優生保護法はいまも被害者の「重石(おもし)」となっている―。映画「沈黙の50年」の制作に携わった大矢暹(すすむ)さんは、そう指摘します。被害を受けて50~60年と声を上げられずにきたと
▼旧法は「立法時点で違憲だった」。最高裁大法廷は、国を断罪する判決を言い渡しました。「不良な子孫」の淘汰(とうた)を目的に不妊手術を強制したことは憲法13条(個人の尊重)に反する。障害者だけを手術の対象としたのは差別的取り扱いだとし、同14条(法の下の平等)違反だとしました
第十三条すべて国民は、個人として尊重される。 生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。
第14条すべて国民は、法の下に平等であって、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。 華族その他の貴族の制度は、これを認めない。 栄誉、勲章その他の栄典の授与は、いかなる特権も伴わない。
▼「この判決が第一歩。私たちが当たり前に暮らせるようにしていきたい」。原告で脳性まひのある鈴木由美さん(68)は喜びの涙で言葉をつまらせました。小島喜久夫さん(83)は「国は私の体にメスを入れたのだから、謝罪してほしい」と改めて訴えました
▼岸田文雄首相は賠償する方針を示し、加藤鮎子こども政策担当相はきのう、原告らに直接謝罪しました。被害者の多くは高齢です。最高裁判決を受けた対応は、遅きに失しています
▼「課題が残っている」と、原告の北三郎さん(81)。2万5千人といわれる被害者全員の救済を望みます。藤原精吾弁護士は「旧法をつくったときから国会は優生思想を持っていた。国会議員も十分に反省を」と訴えます
▼優生思想がはびこる社会もまた、被害者に沈黙を強いてきました。私たちは被害者から「重石」を取り除く努力をしなければなりません。安心して声を上げられるように。
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