日本に来て間もない彼はトルコ語とフランス語のみしか扱えず、対する私と言えば日本語以外の言語は全く扱えず、電子辞書片手に英単語のみを駆使して一日を過ごしました。
日本文化に触れて貰おうと鷹狩りを見て、お抹茶をご一緒したのですが、チョイスが渋すぎたのか全く盛り上がることなく(そもそも鷹狩りの英訳すら出来なかったから意味不明だったに違いない)、実に気まずい一日を過ごした記憶があります。
今思えばダーツとかボーリングとかにしとけば良かったのですが、その時の自分は日本の良さと奥ゆかしさを伝えようと必死だったのです。
結局、私がどれだけ奥ゆかしく渋い趣味で、若者のデートに向かない人間かが伝わっただけのようで、その後一緒に遊ぶ事はありませんでした。
日本語を扱う者同士でも上手く気持ちが伝わらないのに、言葉が通じないとなると伝える難易度というのは遥かに高くなります。
しかし、それ故にコミュニケーションへの努力が何よりも強く出たりして、そういった努力や気持ちがちょっと伝わるだけで、とてもとても幸せになれる事もあります。
さて今回物語にするのは、そんなコミュニケーションに難のある女たちと、そんな女たちに恋愛と婚姻、そして子作りを強いられてしまう男たちの話です。
演劇という、役者と役者、役者と演出、そして作り手と観客という双方のコミュニケーション無くしてはあり得ない手法で舞台を作れるという最高の幸せを数年ぶりに噛みしめつつ、ネット社会で近くなったのか遠くなったのか、よく判らない人と人との距離を、バカバカしくてくだらない物語をもって、もう一度測り直したいと思います。
作・演出/早川あゆ より
最新の画像もっと見る
最近の「公演へのご招待」カテゴリーもっと見る
最近の記事
カテゴリー
バックナンバー
人気記事