そんななか、ある1人の漫画家の、X(旧Twitter)への投稿が話題となっている。 《インボイスに反対してる個人事業主のクリエイターについて酷い事を仰ってる方がいますが、三流のクリエイターとはそもそも何でしょうね。私は初の連載時はスタッフに払うお金がなくてサラ金で200万ほど借金してました。スタート時にお金の苦労をしない漫画家は私の知る限りいません》 9月28日、そう投稿したのは、松本潤主演でドラマ化もされたヒット作『バンビ~ノ!』で知られる漫画家・せきやてつじ氏(53)だ。1969年生まれのせきや氏は、大学中退後、映画専門学校を卒業し、CM制作会社に就職。2000年に漫画家デビューを飾ると、2005年に連載が開始された『バンビ~ノ!』が大ヒットし、現在の地位を確立した。 せきや氏は冒頭のポストに続けて、 《漫画でちゃんとメシが食えるようになったのは3年目ぐらいでしょうか。それまではずっとサラ金にお金を借りたり返したりを続けてました》 と、驚きの告白とともに《今、正に、そんなご苦労をされてる方もいると思います。その中から、世を照らす光のような漫画が出てくるのだと思います》と投稿。その後も投稿を続け、かりにいま、自分が食うや食わずの新人漫画家だったとしても、めげずにやっているだろうとしながらも、《後輩の新人の漫画家の意欲を削ぐような世の中には、なってほしくないです》としめくくった。 せきや氏の一連のポストに対して、三流のクリエイターの定義を議論する声が多く寄せられ、 《(三流のクリエイターとは)アマチュアやアマチュアレベルのプロ(セミプロでさえない人)の事じゃ? 個人的には、そう言う自称プロ?はやめた方が良いと思う》 《会社から三流の報酬しか貰えないクリエーターのことでしょ「実家に住んで親に養って貰え」と言われるアニメーターとか、漫画家の原稿料を計算するときに勘定に入れて貰えないアシスタントとか》 《インボイス程度で破綻するならもう最初から破綻している定期》 など、クリエイターに対する厳しい声も多くあがったが、 《デビューから5年くらいは、多摩川の草を食べとったとです(本当)》 といった複数の著書を持つフリーライターの声や、 《とんでもない成功者たちも最初は破綻、綱渡り状態から始まるんですよ。その綱渡りに追い打ちかけるのがインボイス制度。まともな国なら絶対採用しないです》 など、せきや氏の主張に賛同する声も見られた。 実業家で元ZOZO広報担当執行役員の田端信太郎氏(48)は9月26日、《イラストレーターとか、夢を追うのも自由だが、そもそもインボイス導入で困る人って作品に需要がない。つまり才能がない。介護・外食など人手不足な業界は幾らでもある。イラストは趣味でやれ。プロ辞めろ》と痛烈な投稿をおこなった。 これに物申したのが、17歳のときにデビューした、人気漫画家の栗原正尚氏(54)だ。『怨み屋本舗』シリーズなどのヒット作で知られる栗原氏は、 《僕は売れない時代が10年以上あったので、売れないからやめろと散々他人に言われてきたけど、今は漫画界で5本の指に入る執筆量の多さだと編集者に言われています。人生はどこで一発逆転するかわからない。こういうものの言い方をする人を執行役員にしている企業は色々ヤバいと思う》 と、田端氏の投稿を批判。インボイス制度開始をめぐって、導入待ったなしにもかかわらず、さまざまな議論が巻き起こっている状況だ。 岸田文雄首相は、9月29日に開催された「インボイス制度円滑実施推進に関する関係閣僚会議」のなかで、「事業者の立場に立って税務執行上、柔軟かつ、丁寧に対応し、事業者の悩みを的確に把握し、きめ細かく取り組む」と指示を出した。はたして、首相はどこまで現場の声に「聞く耳」を持っているのか……。
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