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コラムVol.6 ノートパソコン等の身近な製品に内蔵されるバッテリーの火災に注意! ―こどもの学習用端末も―
ノートパソコンやタブレット端末等(以下「端末等」といいます。)の持ち運びが可能な情報通信機器には、リチウムイオンバッテリーがよく使われています。リチウムイオンバッテリーは、小型で大容量かつ繰り返し使える電池であり、端末等の長時間使用に役立っています。一方で、落下による衝撃や、水分の付着などがきっかけで、内蔵されているバッテリーやその周辺に不具合が生じ、発火する等の事故もみられます。
なお、2023年3月の内閣府「消費動向調査」によると、2022年度末のタブレット端末の普及率(二人以上の世帯)は44.9%となっており(※1)、近年では、これらの機器をこどもの学習に活用するなど、利用の幅が広がっています。2021年10月の文部科学省の資料によると、小中学校に整備された約946万台の学習用端末のうち、2021年4月から7月までの4か月間において破損・紛失した端末は、約2万台でした(※2)。また、こどもがタブレット端末を自宅へ持ち帰ることもあり、保護者からは壊したりしてしまうのではないかとの不安の声も聞かれます(※3)。
これらの端末等は、持ち運ぶ機会が多いだけに、商業施設や学校など大勢の人が集まる場所や、公共交通機関の中でも発煙・発火等の事故が発生しており(※4)、状況によっては周囲に及ぼす影響も大きくなるため、その取扱いには注意が必要です。
新学期をまもなく迎えるこの時期、新たにこれらの製品を持つ方もいることから、火災等の事故を防ぐために、どのように端末等を取り扱えばよいかをお伝えします。
新学期をまもなく迎えるこの時期、新たにこれらの製品を持つ方もいることから、火災等の事故を防ぐために、どのように端末等を取り扱えばよいかをお伝えします。
【身近にある様々な製品に内蔵されるリチウムイオンバッテリー】
リチウムイオンバッテリーは、リチウムイオンが正負極間を移動することにより充放電できる二次電池です。エネルギー密度が高いため小型で大容量であり、繰り返し使用が可能、保管時の容量低下が少ないなどの特徴があります。リチウムイオンバッテリーは、端末等だけでなく、モバイルバッテリーやポータブル電源、電動アシスト自転車、コードレス掃除機、電動工具、ワイヤレスイヤホン、携帯用扇風機など、身近にある様々な電気製品に使用され、現代の便利な生活を支えています。
通常、バッテリー及び製品本体には保護回路が組み込まれており、電圧や温度等を監視・制御し、安全に動作するように設計されていますが、正しく取り扱わない場合や、バッテリーや製品本体に欠陥や不具合がある場合等には異常発熱・発火することがあります。バッテリー内部に使用されている電解液には引火性があるため、発火の際は電解液や可燃性ガスに着火し噴き出します。
バッテリー充電中の火災の様子 出典:東京消防庁(※5)
(非純正の充電器を使用してビデオカメラ用のバッテリーを充電中、
何らかの要因でバッテリーが内部短絡して出火した事例)
バッテリーの発火は、外部からの圧力や衝撃、内部の劣化等により、正極と負極がショート(短絡)すること等で発生します。また、消耗品であるバッテリーにとって、過充電・過放電のほか、高温環境での使用等は、劣化が進み、発火のリスクが高まります。なお、バッテリーパックの膨張は、内部で発生したガスによるもので、電解液等の材料の劣化が進行したバッテリーにみられる症状の一つです。
主な事故事例
消費者庁には、端末等の内蔵バッテリーに関する火災等の事故情報が寄せられています(※6)。
- 「ノートパソコンを充電中、異臭がしたため確認すると、当該製品及び周辺を焼損する火災が発生していた。焼損部付近に、加糖系飲料の成分に近い特徴の液体が付着した跡がみられ、それによりバッテリーコネクター接続部での短絡が生じ、出火したものと考えられた。」
- 「電車内で9歳のこどもが落ちたタブレットを拾い上げ、抱えて下車しようとしたところ、当該製品を溶融する火災が発生し、胸部に火傷を負った。調査の結果、落下させた際に、内蔵の電池に外力が加わり、異常発熱して出火に至ったものと推定された。」
- 「娘の入学時に高校で購入したタブレットが2か月後に発火した。調査で、混入したネジがバッテリーパックに刺さったことに起因すると推測された。」
- 「充電保管庫内で保管していたタブレット端末に煤や側面溶解が生じた。」
取扱いのポイント
【衝撃や圧力を与えない】
投げたり叩いたりしないのはもちろんのこと、机の端に置いて落下させてしまったり、床や椅子に置いたままで踏み付けてしまうなど、衝撃や圧力を加えないよう、注意しましょう。
【高温の場所に放置しない】
機器の使用・充電・保管には適切な温度の範囲があります。特に暖房器具のそばや直射日光の当たる場所などの高温環境、布団の中など熱のこもりやすい場所では使用・充電・保管しないようにしましょう。寒い時期にカイロや暖房器具で温めることも避けてください。また、充電・保管時には、燃えやすいものを近くに置かないようにしましょう。
【液体を付着させない】
飲み物をこぼしたり、水がかかる場所では使用・充電・保管しないように注意しましょう。なお、防水性能は製品により異なるため、取扱説明書を確認しましょう。
【異物を差し込んだり、分解・改造したりしない】
機器の端子差込口などの隙間に物を差し込んだり、機器を分解・改造することは危険です。
【異常を感じたら使用を中止する】
使用していて端末が熱い場合は、使用を中止し、電源を切り、涼しい場所で温度が下がるのを待ちましょう。その際、保冷剤や冷蔵庫などを使って急冷すると、端末内部に結露が生じるおそれがあるため避けましょう。
その後もすぐに熱くなる、充電できない、バッテリーパック部分が膨張している、異音や異臭がするなどの異常が見られたら、使用を中止し(※7)、購入店又は製造・輸入事業者の修理窓口に相談してください。不要になった製品・バッテリーの処分に困った場合は、事業者や地方公共団体に問い合せ、正しい回収・リサイクル方法にしたがってください。
その後もすぐに熱くなる、充電できない、バッテリーパック部分が膨張している、異音や異臭がするなどの異常が見られたら、使用を中止し(※7)、購入店又は製造・輸入事業者の修理窓口に相談してください。不要になった製品・バッテリーの処分に困った場合は、事業者や地方公共団体に問い合せ、正しい回収・リサイクル方法にしたがってください。
【万が一、発煙・発火した場合】
発煙・発火した場合、充電中であればコンセントから充電プラグを抜きましょう。端末近くの可燃物は遠ざけてください。火花が飛び散っている時には近寄らず、火花が収まってから消火器や大量の水で消火するとともに119番通報してください(※7)。
リチウムイオンバッテリーは、スマートフォンやモバイルバッテリーのような小型の製品にも内蔵されています。これらの製品を取扱う際も、同様に注意しましょう。また、充電器やケーブルの取扱いに起因する火災も発生しているので、あわせて注意が必要です(※8)。