独協医科大学本院 救急医学(心臓・血管内科)
准教授 菊池 研は、臨床モニター学会2013(奈良)
平成25年4月19日、
「スマホを用いた12誘導心電図伝送システム」をご発表
ラブテック社(ハンガリ国)のラブテックパソコン心電計
(モバイル スマートホン、スマートタブレット)
独協医科大学本院 救急医学(心臓・血管内科)
准教授 菊池 研は、臨床モニター学会2013(奈良)
平成25年4月19日、
「スマホを用いた12誘導心電図伝送システム」をご発表
ラブテック社(ハンガリ国)のラブテックパソコン心電計
(モバイル スマートホン、スマートタブレット)
在宅・遠隔モニタリングの活用例さまざま-臨床モニター学会シンポジウム
医療介護CBニュース 4月19日(金)21時45分配信
在宅・遠隔のモニタリングについて議論(19日、奈良市内)
ICT(情報通信技術)の進歩に伴い、離れた場所からでもモニタリングが可能となり、活用が広がりつつある。19日から奈良市内で開催された臨床モニター学会のシンポジウムでは、4人のシンポジストが自施設での在宅や遠隔におけるモニタリングの実践例を紹介した。
獨協医科大心臓・血管内科の菊地研准教授は、小型心電図とスマートフォン(スマホ)を用いた12誘導心電図電送システムを紹介。小型心電図からワイヤレスでスマホにデータを飛ばし、スマホから病院へメールを送信する仕組みで、このシステムを使えば、12誘導心電図データを救急隊から専門医に事前に提供できるようになり、「ST上昇型急性心筋梗塞」(心電図波形のST部分が上昇する心筋梗塞)の早期診断につながる。このため、救急隊の到着前にカテーテル治療室の準備やチームの招集ができ、2時間以内の実施が推奨されている「再灌流療法」(閉塞した血管を開通させる治療)までの時間を短縮できる。スマホが整っている場合の導入コストは、小型心電図の100万円弱だという。
自治医科大内科学講座循環器内科学部門の星出聡講師は、東日本大震災後に南三陸診療所を医療支援した経験を語った。高血圧の治療では血圧測定が欠かせないが、震災後のストレスのため、医師や看護師の前で緊張して血圧が上昇してしまう「白衣効果増強」や、環境の変化による脱水症状から、診察室で測った血圧だけで判断して治療を行うと、過剰降圧になる恐れがあった。そこで、避難所に据え置き型の血圧計を設置。家庭には25回分の測定データを記録できる血圧計を配布し、データセンターにデータが集積されるシステムをつくった。集積されたデータは、自治医科大の医師が評価。ハイリスク患者を遠隔で同定し、診療所に連絡する。現在も、この支援は継続している。
■再入院率が高い慢性心不全患者のモニタリング
佐賀大医学部循環器内科の野出孝一教授は、再入院率が高い慢性心不全患者へのICTを用いた遠隔モニタリングを紹介した。心不全患者は、薬の服用や水分制限の不徹底などで再入院することが多いため、在宅での看護師や介護福祉士の介入の必要性が指摘されているが、マンパワーや経済的な面から限界がある。そこで野出氏は、病状変化を遠隔で早期発見できるシステムを考案した。病状変化の指標にしたのは、再入院の1週間前から起こるとされる体重増加。また、血圧も同時に測定することにした。導入コストは、体重計、血圧計、無線LANのセットで約8万円。今後の課題として、患者に納得してもらえるだけの費用対効果や安全性の確保などを挙げた。
射水市民病院の麻野井英次病院長は、慢性心不全患者の悪化を早期発見するためのモニタリングを紹介した。心不全患者の多くに「周期性呼吸」や不規則な呼吸が認められることから、麻野井氏は呼吸情報に着目。呼吸の不規則性を定量評価できる呼吸安定性指標(RSI)を開発し、遠隔医療への応用の可能性を、ほかの指標(心拍数、血圧、呼吸数、体重、臥床時間など)と比較・検討した。
その結果、心不全の悪化に最も鋭敏だったのはRSIで、体重増加や自覚症状など、ほかの指標には入院直前までほとんど変化は見られなかったという。このため、呼吸の安定性を指標にして遠隔モニタリングすれば、重症心不全患者の悪化を早期に発見し、適切に治療介入して再入院を予防できる可能性があるとした。【坂本朝子】
日本初!(恐らく世界でも初めてです)
「救急車から12誘導心電図を病院へ伝送」開始
2012年9月10日より、一宮消防の尾西救急車に、救急車から病院へ12誘導心電図を伝送する実証実験が開始となりました。
救急車が病院へ向かって搬送中に走行しながら心電図がとれ、病院へmailで心電図を送ります。院内あるいは宅直の救急担当医や循環器医が心電図を判読し、早期の診断、治療開始が可能となります。現状と心電図伝送システムの利点欠点をまとめました。
現状
• 心筋梗塞では再灌流療法までの時間が生死やその後の生活のQOLを決定する。
• 心肺蘇生のガイドライン1)2)でも、心筋梗塞では早期の再灌流療法が必要で、病院到着から10分以内に心電図をとり、病院到着から90分以内に冠動脈再灌流を行うことが推奨されている。
• 救急車には心電図モニターは装備しているが、12誘導心電図(以下、心電図)を装備している救急車は非常に稀である。
• また、救急隊員や救命士は心電図読影の教育を受けておらず、診断はできない。
• さらに、通常の心電図をとる際には、救急車は停車(アイドリング)しなくてはとれない。(通常の心電図は、基線がブレるため、移動中にはとれない)。
• このため、通常の心電図をとっていると、病院までの搬送時間が従来より延長する。
• 現状では、救急車が病院に患者さんを搬送して、病院内で心電図をとり、救急担当医が心電図を判断し、循環器医へ連絡する。循環器医は必ずしも院内にはいない場合もあり、院外から駆けつけ、心電図を見て、心臓カテーテル検査や経皮的冠動脈形成術(PCI)を行う判断し、さらにそれから他の循環器医と放射線技師を呼び出す。このため、病院到着後60分くらい要することが多い。
• 救急担当医は循環器に精通しているとは限らず、時に判断を誤り、さらにPCIが遅れることも時にありうる。
• 不整脈を現場で認めても、病院到着時には不整脈が消失していることがあり、正確な診断ができない場合がある。
注: 心電図モニター:右胸、左胸、左下肢(左腹部)の3点モニターで、心電図のI.II.IIIの3つの誘導のみ:心筋梗塞の診断は困難
心電図伝送システムの利点
• 伝送システムの心電図は救急車走行中でも基線がぶれずとることができる。つまり、救急車が搬送病院に向かって走行しながら心電図をとることができるため、現場の滞在時間は今までと同等である。
• 病院到着前に病院に心電図を送るため、心筋梗塞の診断、治療が早期に可能である。
• 院外にいる循環器医が直接心電図を見ることができ、専門医による正確な診断が早期に可能である。院外にいるスタッフもいち早く招集し、早期の再灌流が可能となる。
• 当番医だけではなく、多くのスタッフとも心電図を共有できる。
• 現場で認めるも、病院到着時には消失している不整脈も、現場で心電図を記録に残すことができる。
欠点
• 費用:1台につき定価XXX万円と高額である。
(薬事法による申請認可経費、二年半毎の監査経費、医療機器販売の薬事経費、
メーカとして及び販売店としての薬事法経費、医療機器扱い場所の経費、
販売資料経費、販売までのデモ経費、展示経費、バックアップ在庫経費、
一台しかご購入しないのに何回もの立ち合い経費、機器メンテナンスの経費、
一年間無償保証経費、薬事法による補修交換修理部品の在庫等の負担、
社員維持経費、車やパソコンや携帯電話や工具類保持経費、納品時交通費等
一括10台以上の納入ならば価格はさがります)
また、タブレットの通信費などが必要となる。確かに初期投資は必要であるが、維持費はタブレットの通信費くらいと安価である。
• また、年間数名の命を救える、あるいは、QOLを改善することができる可能性が非常に高く、初期投資も決して高いものではないと考えられる。
文献
1) 日本蘇生協議会, 日本救急医療財団 監修: JRC蘇生ガイドライン 2010. へるす出版, 東京,2011.
2) Egan, Chris Ghaemmaghami, Venu Menon, Brian J. O'Neil, Andrew H. Travers and O'Connor RE, Brady W, Brooks SC, Diercks D, et al. Acute Coronary Syndromes: 2010 American Heart Association Guidelines for Cardiopulmonary Resuscitation and Emergency Cardiovascular. Circulation 2010;122;S787-S817