今度の事故でテロリストに原発の弱点を公開してしまった

西尾幹二
原発論争

 WiLLの論文には書き落としたことがいくつかある。あまり人は言わないが、気がついている人は気がついているテロの危険である。今度の事故でテロリストに原発の弱点を公開してしまった形だ。爆弾を使わなくても電源設備をこわせばよいのである。

自動車事故や飛行機事故を例にあげているが、これらの事故は限られた死者が出るだけで終わるのであり、原発のように土地を汚し半永久的に人の住めない死の土地を作るのとはわけが違う。原発は国土の歴史への破壊の可能性を孕んでいて、日本のように国土の狭い国には不向きである。

じつは使用済核燃料の処理は世界でどこもまだ成功していないのだと聞いている。アメリカとフィンランドは燃料の残りは全部土中深く埋めこむ計画だがまだ計画の段階である。日本とフランスは再利用する方向で、高速増殖炉は日本特有の技術ではあるが、平成14年4月に停止してしまった。成功していない。他方、六ヶ所村の再処理工場は別の方向だが、ここも最終試験段階でトラブルが発生している。かりに成功してもいっぺんに処理できないので中間貯蔵施設に使用済を何千本と保存しなくてはならないが、その施設がまだ出来上っていないとも聞く。しかも、再処理ができても「高レベル放射性廃棄物」はさいごにどうしても残るのである。これを地下300メートルに埋めこむ計画のようだが、どの自治体も受け入れを拒否している。300メートルといっても日本列島は地震大国である。地殻変動で将来何が起こるか分らない。燃料の最終処理はフランスも成功していない。フランスは日本に望みをかけてきたのだと思う。

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