筋トレ沼にハマッた男女の結末…筋肉が溶けた、気づけば借金400万

日刊SPA

筋トレ沼にハマッた男女の結末…筋肉が溶けた、気づけば借金400万

 サウナやキャンプと並び、いま人気の趣味「筋トレ」。街中にはフィットネスジムが林立、コロナ太り解消の一環としてテレビや雑誌でも特集が組まれている。  もともと今年開催予定だった東京五輪は、「健康増進に取り組む弾みとなるもの」(平成27年11月27日、東京オリンピック競技大会・東京パラリンピック 競技大会推進本部における内閣総理大臣発言)であり、スポーツや健康にかかわる業界のテコ入れ戦略が功を奏したという見方もある。ところが、筋肉を得ようとしたあまり、本末転倒になってしまった人々もいる。

筋トレを重視するあまり本末転倒に

 東京都内在住の会社員・泉翔太さん(仮名・30代)は、ヒョロヒョロだった体型に嫌気がさし、およそ1年前から筋トレを開始。トレーナー付きのジムへは週3のペースで通い、半年も経つ頃には格闘家のような肉体を手に入れたことで考え方が変わった。

「街を歩いていても、全員に勝てるような気がしてきて、例えば誰かがぶつかってきてもムカつかない。こっちはいつでもお前のことヤレるんだ、みたいな(笑)」(泉さん、以下同)

 自信がみなぎり、異性にも積極的に話しかけるようになると、数年ぶりに彼女もできた。嫌味ばかり言ってくる上司も、泉さんの肉体を見て気後れしたのか大人しくなり、仕事もしやすくなったという。まさにいいことづくめ、のはずだったが……。

「やればやるほど筋肉がつくから、毎食ブロッコリーと鶏胸肉のみ、あとはプロテインを飲んで鍛えて。トレーニングを1日でもやらないと不安になり、糖質や油ものを見るだけでも吐き気がしてくる。仕事の時もデートの時もトレーニングのことばかり考え、いいサプリがないか、いいジムがないか、寝る間も惜しんでスマホで検索したり」

 筋トレを始めて8か月が経過した頃には、毎日筋トレをしないと気が済まなくなっていた。さらに、食事も過度な制限をかけ、糖質をほとんど摂らなくなったせいか、頭が回らなくなったと話す。それを紛らわすべく、トレーニングの時間を増やして体に負担をかけた。そうしているうちに、体調を崩してしまったのだ。

「せっかくできた彼女とも別れ、会社にいてもぼーっとして仕事ができない。とにかく、筋肉のことばかり考えていて、ある日高熱が出て、会社で倒れちゃって。筋トレのやりすぎによる横紋筋融解症、食事の偏りによる栄養失調、重度の風邪と診断されました」

 まさか「健康増進のための筋トレで体を壊すとは思ってもみなかった」と泉さんは振り返る。

 横紋筋融解症とは、骨格筋の組織が壊死・融解して、筋由来成分が血中に流れ出し、時には死に至る病。原因は、過度の運動や、重度の熱中症、薬剤の副作用など様々である(国立研究開発法人・日本医療研究開発機構のサイトより)。

SNSで反応をもらいたくて…

「海外セレブはみんな鍛えており、それをインスタでチェックするのが日課でした」

 都内在住のフリーター・丸尾真美香さん(仮名・20代)は、そもそもダイエットの必要がないほどの細身体型で、痩せたいとも、筋トレをしたいとも考えたことがなかった。ところが、海外の女性歌手やモデルの「ボンキュッボン」な体型をSNSで見て憧れを抱くようになり、2年前から筋トレを始めた。

「男性みたいに体を鍛えるというよりは、体にメリハリをつけるんですよ。胸は出す、ウエストは絞る、お尻は上向きに大きく、みたいな」(丸尾さん、以下同)

 トレーナー付きの都内の高級ジムに通うようになると、2か月ほどで目に見えて成果が現れ始めた。しかし、そこに思わぬ落とし穴が。

「SNSにあげるとものすごい反応がもらえるし、胸はもっと大きくしなきゃ、ウエストはもっと細くして……でも顔はどうにもならないなと……」

パーソナルジムに通うためキャバクラでアルバイト

 さらに自分に合ったジムを探したところ、パーソナルトレーニング(マンツーマン)の高級ジムの存在を知り、入会を決意した。

 とはいえ、普通の会社員だった丸尾さんに払える会費ではなかったため、なんと自宅近くのキャバクラで夜のアルバイトを始めた。が、今度は自分の顔が気になり始めた。 「SNSで顔は出していなかったんですが、顔を出せばもっと反応もらえるかなって」

 キャバクラの同僚を通じて、美容整形代を支払ってくれる「パパ活」にも手を出すと、体も顔も、そして生活までもが一変した。そしてそれは、悪夢のような生活の始まりだった。

「トレーニングと違って、整形はお金さえかければどうにでもなるんです。だから、パパ活だけじゃ足りなくなって、昼の仕事を辞めて夜一本に。半年で500万くらい手術代につぎ込みました。夜を続けていると、どうしても周囲がそういう人ばかりになり、ホストクラブにも通うようになって。仕事を辞めたことも整形も親には言ってなくて、もう切り出せないくらい顔も変わってしまいました」

整形とホスト遊びで借金400万円に…

 ホスト遊びがヤメられなくなり、今ではトレーニングを全くと言っていいほどやらなくなった。そして、人生で初めて太り始めたという。しかし、ダイエットやトレーニングをする暇はない。ホスト代と整形代を捻出するために、400万円ほどまで膨らんだ借金返済のために、とにかく夜の仕事を続けるしかないのだ。丸尾さんがふっと呟く。 「筋トレのせいでこうなった、というわけじゃないですけど、やっぱり、物事の本質を見誤ったとは思います。元の生活に戻れるなら、そう思わない日はありません」 <取材・文/森原ドンタコス>

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