今年の夏ドラマには医療モノが2本ある。TBSの日曜劇場「TOKYO MER~走る緊急救命室~」(主演・鈴木亮平)とフジテレビの月9「ナイト・ドクター」(主演・波瑠)で、どちらも一刻を争う医療現場を描く。一見、似たようなドラマが連日放送されているわけだが、果たしてどちらに軍配が上がるのか。

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 先にスタートしたのは「ナイト・ドクター」だった。

 6月14日に前作「イチケイのカラス」最終回が放送され、間髪おかずに翌週21日から放送を開始した。7月ドラマにもかかわらず6月第3週から開始したことについて、デイリー新潮は「『イチケイ』終わって直ぐ『ナイト・ドクター』 “月9”復活を導く攻めの編成戦略とは」(6月21日)で、攻めの戦略と報じた。民放プロデューサーは語る。

日曜劇場『TOKYO MER~走る緊急救命室~』(TBSテレビ公式サイトより)

フライングスタートの意味

「これが功を奏したのか、『ナイト・ドクター』第1話の視聴率は13・4%(ビデオリサーチ調べ、関東地区:以下同)と上々の滑り出しでした。かつてはトレンディ恋愛路線で一世を風靡した月9でしたが、17年10月期の『民衆の敵~世の中、おかしくないですか!?~』(主演・篠原涼子※平均視聴率6・7%)、18年1月期の「海月姫」(主演・芳根京子※平均6・1%)と歴史的大敗が続いたことで路線を転換しました」

 18年4月期の「コンフィデンスマンJP」(主演・長澤まさみ)ではエンターテインメントコメディとなり恋愛路線とは決裂。その後は「SUITS/スーツ」(主演・織田裕二)や「トレース~科捜研の男~」(主演・錦戸亮)、「ラジエーションハウス~放射線科の診断レポート~」(主演・窪田正孝)、「監察医 朝顔」(主演・上野樹里)、そして前作「イチケイのカラス」(主演・竹野内豊)と、ヒューマン職業モノへと移行した。

「『ナイト・ドクター』は夜間勤務専門の救急医チームの活躍を描いています。通常なら前作が終わったら2~3週空けてから新作となるものですが、前倒しでスタートさせたのは自信の現れと見られていました。チームには主演の波瑠のほか、田中圭、岸優太(King & Prince)、北村匠海、岡崎紗絵、そして沢村一樹となかなかの顔ぶれですからね。もっとも、日曜劇場への恐れもあったかもしれません。『ナイト・ドクター』放送の前日に同じような医療モノが放送されては印象が薄れますからね。少しでも先にスタートして、視聴者を奪っておこうという思いがあったのではないでしょうか」

鈴木を囲むクセの強いキャスト

「7月4日スタートの『TOKYO MER』初回は、『ナイト・ドクター』のさらに上を行く14・1%と今期暫定1位の好発進となりましたからね。フジのスタッフはやられたと思っているはずです」

 同じ医療系ドラマが続けて放送されるとなると、視聴者は両方見るのはなかなか大変だ。

「大方のドラマファンの傾向として、初回は一通り見ます。しかし、彼らは働いているか学校があったりするので、全てを見続けるほど暇ではありません。初回で品定めをして、最終話まで見るべきドラマを2、3作に絞り、残りはパスすることになります。そんな中で、同じ医療モノを2日続けて見る人は少ないでしょう。現状では『TOKYO MER』のほうが有利と見ています」

 どういうことか。

「『ドラゴン桜』(主演・阿部寛)は最終回で20・4%と、前シリーズを凌ぐ数字を取りました。その後番組というプレッシャーに加えて、主演は春ドラマ『レンアイ漫画家』(フジ)で大コケした鈴木亮平でしたが、くせ者揃いの初回の放送を見て驚きました」

 サブタイトル“走る緊急救命室”の通り、動く手術室であるERカーが現場に急行してオペを行うこのドラマ。ERカーに乗り込むチームは、チーフドクターの鈴木はじめ、厚労省医系技官の賀来賢人、研修医の中条あやみ、看護師の菜々緒、同じくフォンチー、麻酔科医の小手伸也、臨床工学技士の佐野勇斗だ。

「こちらも『ナイト・ドクター』同様の医療チームものです。ただし『TOKYO MER』は爆破シーンもふんだんで、医療戦隊ものという新ジャンルができたのかと思うほど。負けん気や根性をウリにしてきた日曜劇場ですが、今回はとにかく派手ですね。キャスティングでいえば、他にも要潤、石田ゆり子、佐藤栞里らがおり、さらに渡辺真起子、鶴見辰吾といった怪演もこなせる役者までいる。各局のドラマからよくもこれだけの人気者を集めたもの。あっぱれですね。今後どのような展開になるのか気になります」

 医療モノといえば、“あたし、失敗しないので”をポリシーとするテレビ朝日「ドクターX~外科医・大門未知子~」(主演・米倉涼子)のように、患者を助けることが第一であることはもちろんだが、今回の2作品の主人公にもそれぞれポリシーがある。

「ナイト・ドクター」の波瑠が“いつでも、どんな患者でも絶対に受け入れる”に対し、「TOKYO MER」の鈴木は“待っているだけじゃ、助けられない命がある”。最後に笑うのはどっち?