【大手町の片隅から】「攻めの廃線」なぞあり得ない 乾正人

有権者のみなさん! 知事はちゃんと選びましょうね

 

【大手町の片隅から】「攻めの廃線」なぞあり得ない 乾正人

明日は、鉄道の日。新橋―横浜間に日本最初の鉄道が開通したのは、明治5年10月14日のこと。

一番列車には明治天皇がご乗車になったほか、西郷隆盛や大隈重信、勝海舟に渋沢栄一と維新のオールスターが乗り込んだ。日本の近代化が、目に見える形で動き出したのが、この日だった。

川勝知事「入り口の感覚」

昨年は150周年という区切りの年とあって当方も便乗し、ただひたすら列車に乗るだけの記事を連載させてもらった。もう一度読みたいという奇特な方は、「令和阿房列車で行こう」(飛鳥新社)をどうぞ。

だが、鉄道を取り巻く環境は、日に日に厳しさを増している。

鉄道の未来を担うリニア中央新幹線の建設は、川勝平太静岡県知事の「妨害」といっても過言でないふるまいによって開通のめどすら立っていない。JR東海が、知事の理解を得ようとトンネル掘削工事による大井川の流量減少対策などいろいろと提案しても「1合目より少し進んだが、入り口との感覚を持っている」(10日の記者会見)とにべもない。

知事が協力的な神奈川県では、JR橋本駅近くの地下深くに建設中の神奈川県駅(仮称)が、威容を現し始めたのとは対照的だ。14日には、駅予定地で無料コンサートが開かれるほど地元は盛り上がっている(入場にはスマホでの予約が必要)。

ローカル線問題も深刻だ。

日本近代化の先兵となってきた鉄道だが、少子高齢化によって進む地方の過疎化によってローカル線の赤字額はさらに拡大し、多くの路線が廃線の危機にさらされている。

今月1日には、「改正地域公共交通活性化再生法」が施行され、地方鉄道のバス転換を含めた存廃議論を加速するための協議会を国が主導して設置できるようになった。

 

JR芸備線などが廃止検討の対象になろうとしているが、安易なバス転換は、地方をさらに衰亡させると断言していい。既に北海道で「失敗」が実証されているからだ。

よそ事でない夕張の惨状

4年前、JR石勝線夕張支線が廃止され、夕張市の中心部から鉄路が消えた。当時の鈴木直道市長が「攻めの廃線」と称して同線の廃止を自ら提案し、JR北海道から多額の補助金を得てバス路線を充実させた。

ところが、4年後のいま、廃線直前に8049人だった人口が、瞬く間に2割近くも減少し、今や6531人にまで減ってしまったのだ。

鈴木市長は、市が所有していた観光施設を中国系資本の会社に格安で売却したが、そのほとんどが廃線後に営業を休止し、夕張の街は文字通りゴーストタウン化してしまった。

鈴木市長は、その後、道知事に〝栄転〟するが、鉄道軽視の姿勢はまったく変わっていない。

北海道新幹線が札幌まで延伸されることに伴うJR函館本線の長万部―小樽間の存廃問題でも、乗客の比較的多い小樽―余市間の存続を求める地元の声を無視して道は強引にバス転換の方針を決めてしまった。

 

運転手の人手不足が深刻化し、今あるバス路線でさえ維持が難しい現状を知事は知らないのか。夕張の惨状への反省がまったくみられない。

 

有権者のみなさん! 知事はちゃんと選びましょうね。(コラムニスト)

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