26日からパリで開催される夏季五輪。パリ開催は100年ぶり3度目のことだという。前回は1924年、前々回は1900年にさかのぼる。
夏季五輪の始まりはフランスのクーベルタン男爵が、普仏戦争に敗れ意気消沈している青少年を元気づけるため、スポーツ教育に注目したことにある。クーベルタンは、近代スポーツが盛んで特に心身を鍛えるパブリックスクールでの教育を学ぶため英国に留学経験がある。
パリジェンヌのイチ押し
1894年には古代ギリシャのオリンピックの復活を提唱し、賛同者とともに国際オリンピック委員会(IOC)を設立。そのような経緯もあり、第1回夏季五輪は1896年、まずアテネで、第2回が4年後のパリで開催されたわけである。ちなみに冬季五輪の第1回もフランスのシャモニーで1924年に開催されている。
移民による暴動や政権の不安定さに揺れるフランス、パリで無事に開催されることを祈るばかりだが先日、興味深いネットニュースの記事を目にした。
「パリジェンヌから圧倒的な支持を集めたイケメン日本人アスリート」と題し、11日放送のフジテレビ番組でパリ在住の女優、杏さんが、現地の女性にインタビューした報告があったという。イケメン日本人アスリートは誰か聞いたところ、柔道のヒフミ・アベ(阿部一二三選手)を支持する声が圧倒的で、しかも「背負い投げがすごい」と技にも言及があった。
確かに阿部選手は東京五輪で、男子柔道66キロ級の金メダルを獲得しており、柔道選手には珍しく顔はアイドル系だ。同じ柔道選手で金メダリストの妹、詩(うた)さんともそっくり。しかしなぜパリジェンヌがわざわざ技の名まで出すほど柔道に詳しいのだろう。
実はフランスは柔道が大変盛んな国で、柔道人口は日本の4倍の53万人もいる。子供はごく当たり前のように柔道教室に通うという。その背景には「フランス柔道の父」でマスター・カワイシこと川石酒造之助(みきのすけ)の存在がある。
川石氏は兵庫県飾磨郡手柄村(現・姫路市)の造り酒屋の出身だ。日本の「柔道の父」と呼ばれる嘉納治五郎氏が神戸・灘の酒造業者一族の出であることを思うと興味深い。嘉納氏はIOCの委員として日本に初めて五輪を招致した人物である(ただし日中戦争の激化で返上となった)。
パリジェンヌが選ぶイケメン日本人選手がどうしたというのだ、それが五輪とどう関係するのだ、まったく女というやつはイケメンにしか興味がないのか、スポーツ選手なら実力だけ評価しておけ、と言われるかもしれない。
魅力と免疫力の高さ
ところが動物行動学的見地に立てば、イケメンとスポーツの能力は関係ないどころか、切っても切れない関係にあることがわかってくる。
ルックスがいい、声がいい、筋肉質の体をしている、ケンカが強い。これらは主に男において、免疫力の高さとの相関があることがわかっている。
ルックスがいい、声がいい…ほど免疫力も高いのだ。
しかもそれらは男の魅力であり、モテる条件である。つまり、男の魅力とは本人の免疫力の高さの証しなのだ。また病気に打ち勝ち、生き延びるという極めて重要な能力を体現するからこそ女に、魅力と感ずる心理が進化したのである。
女子は本能的に知っている
ではスポーツと免疫力との関係はどうかということになるが、スポーツに関係する要素があまりにも多く、複雑だからだろう、まだこれといった研究がない。
しかしスポーツには「筋肉質の体」は必須であるし、腕っぷしの強さや攻撃性がものを言う、「ケンカの強さ」も関係するだろう。これだけでも免疫力との相関があって当然と思われる。
いや、そんなことよりも説得力を持つのは、既に小中学生の頃からスポーツのできる男の子は女の子たちから熱視線を浴び、キャーキャー言われるということだ。女の子は本能的にスポーツができる子=免疫力が高いと知っているのである。
このようなことからスポーツが得意な男、それもオリンピックに出場するような超一流選手ともなると免疫力も素晴らしく高く、その証しとして顔もいけている、つまりはイケメンである可能性が高いのである。
スポーツとは、個人で行う、単に走ることや泳ぐこと、そしてやり投げのような投擲(とうてき)競技は狩猟採集時代にその起源があるのだろう。集団で行う、球技などの対抗戦は部族間の争いを思わせる。五輪で国別のメダル獲得数が取り沙汰されるのも、国家間の現実の争いがスポーツによる平和的な戦いとして転化されているからだ。
しかしスポーツの起源がどうであれ、女がスポーツをする男に求めるのは、免疫力。その手掛かりがスポーツの能力とイケメンの度合いなのである。(たけうち くみこ)