『ブラタモリ』の女性アナウンサー 大出世 番組中に「局内のエース」に育てる、タモリの凄さ

なるほど

 

『ブラタモリ』の女性アナウンサーが、なぜかこぞって「大出世」するワケ(週刊現代) @moneygendai

『ブラタモリ』の見どころの一つは、タモリとアシスタントのかけ合いだ。女性アナの素朴な反応に、視聴者はなごみ、心を奪われる。実は、この構図の中で、次なるNHKの看板アナが作られていた。

売り出したいアナを投入

どの世界においても、出世を約束されたエリートコースがある。それはアナウンサーの世界でも同じなのかもしれない。

2月9日にNHKが発表した「春の大改編」について、いつになく注目が集まっている。4月から、看板番組の顔ぶれが入れ替わる「サプライズ人事」が行われたのだ。

午後10時から放送している報道番組『クローズアップ現代+』は『クローズアップ現代』と旧タイトルに名前を戻して、6年ぶりにゴールデン帯の午後7時台に放送することが決まった。

新しく単独キャスターに就任するのが桑子真帆アナ(34歳)だ。現在、桑子が担当している朝の情報番組『おはよう日本』を引き継ぐのは、首藤奈知子アナ(42歳)。夜の報道番組『ニュース7』には林田理沙アナ(32歳)がMCに抜擢された。また、ドキュメンタリー番組『ファミリーヒストリー』の司会には、浅野里香アナ(28歳)が就任する。

NHK『おはよう日本』の公式webサイトより引用NHK『おはよう日本』の公式webサイトより引用

すでにエースアナとして活躍している桑子は別だが、首藤と林田、浅野は「出世コース」に乗ったと考えていいだろう。

実は、この改編の中心人物となった4人には共通点がある。全員が『ブラタモリ』のアシスタントを務めているのだ。

テレビ業界では、かねてから『ブラタモリ』を担当した女性アナは出世すると言われているが本当なのか。NHK関係者はこう語る。

「『ブラタモリ』を担当したから出世するというよりは、局にとって売り出したい女性アナを『ブラタモリ』の担当にしているんです。誰もが知るこの番組を担当させて世間の好感度を上げてから、番組を卒業した後に『ニュースウオッチ9』などの帯番組を任せようという算段です。

ただ、放送当初はこういう立ち位置の番組ではありませんでした。3代目の桑子が成功したことで、売り出したい女性アナを出演させるようになったんだと思います」

これは、『ブラタモリ』が歩んできた道のりと、歴代アシスタントを務めた女性アナを振り返ってみるとわかりやすい。

'08年に番組が始まる前、制作陣が頭を悩ませたのがアシスタント探しだ。他の番組では聞き役に徹するタモリだが、『ブラタモリ』ではロケをリードする役回りのため、マニアックなトークで視聴者を置き去りにする恐れがあった。番組プロデューサーの尾関憲一氏は、著書『ブラブラ仕事術』でこう振り返っている。

〈なるべくシロウト目線で、視聴者の気持ちを代弁して「それはなんですか?」と質問できる立場のアナウンサーがいいと思ったのです〉

自然にキャラが立つ

こうして初代アシスタントに抜擢されたのが久保田祐佳アナ(39歳)だった。尾関氏は久保田に2つの「指令」を出す。それは「わからないことがあれば質問すること」「事前に勉強しないこと」だった。

要は「気負わず自然体でいなさい」という指示だ。結果的に尾関氏の狙いは当たる。タモリと久保田のかけ合いが視聴者にウケたのだ。コラムニストの亀和田武氏はこう解説する。

「シニア層の男性視聴者は、番組を見ながらタモリさんと自分を重ね合わせます。タモリさんの博学ぶりにアシスタントが畏敬の眼差しを向けることに思わずニヤリとしてしまう。久保田さんがこうした役回りを自然にこなしたことで、番組のひな形が作られました」

番組は'12年にいったん幕を閉じたが、タモリが長年司会を務めてきた『笑っていいとも!』(フジ系)の放送が終了したことを機に、'15年になって『ブラタモリ』は復活する。

ちなみに、レギュラー放送が始まる前の正月スペシャル番組で一度だけアシスタントを務めたのが首藤だった。

3代目アシスタントに抜擢されたのが桑子だ。彼女は久保田の路線を受け継ぎながらも、自身の個性を生かしたことで番組は新境地に達した。女子アナウォッチャーの丸山大次郎氏が語る。

「桑子さんは男性が喜ぶような受け答えができるんです。印象に残っているのは熱海の回。タモリさんやスタッフから温泉に入るよう促されて、『靴下しか脱ぎませんよ』とアタフタし、『いやらしい』と突っ込んでいたシーンが忘れられません。収録を重ねるごとに機転が利くようになっていました」

普段は硬いニュース原稿を読むことから、なかなか内面が見えにくかったNHKの女性アナにとって、これほどキャラクターが伝わる番組はなかったと言える。当時の桑子は『ニュース7』を担当していたこともあり、『ブラタモリ』で見せる素顔とのギャップが視聴者の心をくすぐった。

実際、'15年にオリコンが発表した「好きな女性アナウンサーランキング」において、前年までランク外だった桑子は5位にランクインしている。

'16年に『ブラタモリ』を卒業した桑子は『ニュースウオッチ9』や『紅白歌合戦』を任されるようになり、現在に至るまでNHKの「顔」として第一線に立ち続けている。

局の上層部は、『ブラタモリ』のアシスタントを務めたことが桑子の成功に繋がったと考え始めたという。

あるNHKのベテラン局員は、『ブラタモリ』には「女性アナの成長を楽しめる」要素もあると確信したと話す。なぜなら視聴者はタモリとアシスタントとのやり取りを見て、女性アナの魅力に気づくからだ。その凄さについて後編の『『ブラタモリ』女性アナ出世のウラで…番組中に「局内のエース」に育てる、タモリの凄さ』でお伝えする。

『週刊現代』2022年3月5日号より

 
 

2月9日にNHKが発表した「春の大改編」に注目が集まっている。4月から看板番組の顔ぶれが入れ替わる「サプライズ人事」が行われたのだ。その改編の中心人物となった4人の女性アナウンサーには共通項がある。それが『ブラタモリ』だ。

前編記事『『ブラタモリ』の女性アナウンサーが、なぜかこぞって「大出世」するワケ』では、同番組に出演する女性アナウンサーは出世するという噂の真相をNHKの番組担当者に聞いた。引き続き彼女たちが「エース」として評価されるに至った経緯をお伝えする。

成長を見守る気分

NHKのベテラン局員がこう明かす。

「『ブラタモリ』には『女性アナの成長を楽しめる』要素もあると確信したのです。担当したばかりだと、タモリさんの博覧強記ぶりに目を丸くするばかり。それが、タモリさんと距離を縮めていくうちに一緒に番組を楽しめるようになる。

そんな成長譚に視聴者はグッときて、いつの間にか女性アナを好きになってしまう。この構造を上手く利用しようと考えた上層部は、より番組の雰囲気にマッチするキャラクターのアシスタントを選ぶようになりました」

Photo by gettyimagesPhoto by gettyimages

桑子の後任を務めたのは近江友里恵アナ(33歳)だ。「おじさん転がし」が上手な桑子とは違って、少し抜けた天然キャラが持ち味だった。コラムニストの亀和田武氏はこう絶賛する。

「近江ちゃんは、桑子さんのように計算高い返しができるわけではありません。ただ、タモリさんが話しているときに適当に相槌を打つのではなく『初めて知りました』と素直な反応ができる。桑子さんとは好対照の彼女が大ブレイクしたことで『ブラタモリ』は黄金時代に突入したと思います」

その後にアシスタントに就任したのが「リンダ」こと林田だ。東京藝大出身という異色の経歴ながら、近江のような天然キャラを存分に発揮して、たちまち人気を獲得した。

 

「はじめは見ている側が心配になるくらい緊張でガチガチでした。ただ、何とか番組に馴染もうと頑張っている姿勢が伝わってくるんです。その上、リアクションもいい。

秋田県男鹿半島を巡る回で、林田さんがナマハゲに囲まれて『怠け者はいねが〜!』と迫られる演出があるのですが、『働いています!許してください』と逃げ回ってしゃがみこむのがかわいらしかった」(女子アナウォッチャーの丸山大次郎氏)

林田がEテレで出演中のコント番組『植物に学ぶ生存戦略話す人・山田孝之』の脚本家を務める竹村武司氏はこう語る。

「収録の現場に台本を持ち込んでいる姿は一度も見たことがありません。いつも完璧に台詞を覚えてきていました。現場では『この台詞はどういう表情がいいですか』と相談してくれる。『ブラタモリ』で好感度を上げたのは、どんな現場でも一生懸命に取り組む姿が画面越しにも伝わってきたからだと思います」

そして、'20年から現在までアシスタントを務めているのが浅野である。近江と林田と同じように愛嬌抜群で、人の懐に入り込むのが上手かった。

NHK『ブラタモリ』の公式webサイトより引用NHK『ブラタモリ』の公式webサイトより引用

埼玉県の長瀞回ではタモリが地学に関する話をしていると「わからない……」と困惑。タモリから「『おなかへったなあ』とか思ってたんじゃない?」と突っ込まれて、「それもありますけど……」と恥ずかしそうに返すやり取りが印象に残る。

残念ながら、浅野はコロナ禍であまりロケに行くことができていない。

ただ、収録中はタモリを感染させないように健気にソーシャルディスタンスを保ちつつも、本当は近くに行きたそうにしている様子が何ともいじらしかった。こうした親しみやすさで視聴者から大きな支持を受けた。

軽妙に気の利いたコメントを言える桑子の後に、近江や林田、浅野のような天然キャラの女性アナが配置されたのは決して偶然ではないだろう。

「知らないことには無邪気に感心してしまうような女性アナを見ると、視聴者は優越感を覚えやすくなります。結果的に、女性アナとタモリさんの二人が孫とおじいちゃんのように見える関係性が強くなったのではないでしょうか」(丸山氏)

前編で紹介したように、歴代アシスタントはまず『ブラタモリ』に出演して世間の好感度を上げてから、満を持してNHKの看板番組に進出していったのだ。

タモリの貢献度は計り知れない。視聴者はタモリとアシスタントとのやり取りを見て、女性アナの魅力に気づくからだ。

コラムニストの桧山珠美氏はこう解説する。

「他の大御所タレントと違い、タモリさんは決して自分から前に出ようとしません。『ブラタモリ』のロケも、ただアシスタントと散歩しているようにも見えます。どこか気の抜けたような空気感だからこそ、女性アナの存在が引き立つんです」

番組が始まる際、初代アシスタントの久保田には気負わず自然体でいることが求められた。だが実は、タモリこそがその姿勢を体現していた。それどころか、あえて「何もしない」ことで女性アナの魅力を引き出すという、仙人のような能力を見せていたわけだ。

福岡放送局から選ぶ

NHKとしては、アシスタントに指名された女性アナには何とかタモリに気に入ってもらわなければならない。ベテラン局員はこう話す。

「この4月から担当する野口葵衣アナ(27歳)は天然キャラなので、番組の雰囲気に合うと思います。

彼女は福岡放送局に籍を置いたままアシスタントを務めるのですが、近江も林田も東京に来る前の赴任地は福岡です。少しでも福岡出身のタモリさんと息が合うようにと、意図的に福岡から選ばれていると思います」

それほどNHKがタモリに気を遣う理由は他にもある。タモリと共演することで、お茶の間の好感度が上がるだけではなく、アナウンサーとしての実力も身につくからだ。

「タモリさんは収録後に反省会を行いません。だから共演者は『どうすればよかったのか』と自主的に考えるようになる。ここで新たな才能を開花させることもあります。あの加賀美幸子アナも、昭和50年代にタモリさんと共演したときのユニークなかけ合いが評価されて全国区となりました。

一緒に仕事をするだけで好感度が上がるだけではなく、アナウンサーとしての実力もつく。こんな大御所は他にいません」(元・日テレプロデューサーの吉川圭三氏)

NHKにとって、こんなにありがたい話はない。期待の新人は、福岡放送局に赴任させてから『ブラタモリ』の担当にすれば、看板アナへと成長するからだ。タモリには、出演ギャラ以外にも「育成料」を払ったほうがいいのかもしれない。

『週刊現代』2022年3月5日号より

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