期待されたポピュリズム政党出身の若きローマ市長、無能さを発揮してローマはカオス状態

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期待されたポピュリズム政党出身の若きローマ市長、無能さを発揮してローマはカオス状態

苦境に立たされたビルジニア・ラッジ市長(GettyImage)

 38歳でローマ市、初の女性市長として期待されたビルジニア・ラッジ氏。美人市長としても話題になった彼女だが、市政の采配振りは就任僅か70日にして指揮能力の無能さを露呈して、ローマ市はカオス状態にある。

 彼女が籍を置くポピュリズム政党「五つ星運動(M5S)」の創設者グリッロ氏からも、「もっと通りに出て、市営の乗り物に乗ってローマ市民の気持ちを探ることが必要だ」と忠告される始末だ。

イメージ戦略だけで候補を推したM5S

 M5Sがローマ市長の候補者にM5Sのビルジニア・ラッジ氏を選んだのは、彼女がローマ第三大学卒の弁護士で、話術は上手く、容姿も良く、しかも女性で あったことが大きな要因だ。なにしろ、これまで女性がローマ市長に就任したことはなかったのだ。そのため、立候補すれば注目されて期待が集まり、票が取れ るはずだとグリッロ氏は判断したわけだ。

 ポピュリズム政党M5Sは2009年の創設で、政権を担った経験がないこと。そのため、話題性だけで当選はしたものの、その後の政権運営の難しさがどれ程のものなのか党本体も想像出来なかったようだ。

 ましてや、ローマ市という大都市は、これまでも市政に裏切られた市民が政治家に切望感をもち、一方では市の多くの職員の間では怠慢が横行し、マフィアも 市政に関与して来るという困難な状況にある都市だ。そんな修羅場に、容姿で市民を魅了させることで、政治の素人を市長として選ばせたのだ。その結果が市民 を裏切るものになることは当初から明白であった。

 この70日間、何が起きていたのか。美人市長として就任し、いざ蓋を開けて見ると、行政の改革を実践する前に、彼女の指導力の無さが一挙に表面化したの だ。就任から70日にして助役と予算局長が辞任した。と同時に、市が運営している問題のゴミ処理と交通機関の公的企業のトップもぞれぞれ辞任したのであ る。

街をネズミが闊歩し、バスの中にはゴキブリが

ローマ市の抱える問題 

 そう、ローマ市にとって、特に表沙汰になって市の行政を混乱に陥れているのはゴミ処理と交通機関の乱れである。

ゴミ処理の問題

 ローマ市のごみ処理は、収納コンテナの利権にマフィアが絡むなどさまざまな問題を抱えている。収納コンテナの契約料は年間1000万ユーロ(11億円) とも言われており、これらは6億5000万ユーロ(715億円)あるというAMAの負債をさらに悪化させている。このひどい状況のせいで、ローマ市内には ゴミが溢れかえっており、トル・ベーリャ・モニカ地区では、子どもたちの間で5分間にどれだけネズミを見つけることができるかという、ポケモンGOならぬ ネズミGOなる遊びが流行っているんだそうだ(ちなみに、その事実を報じたニュースでは、5分間に25匹のネズミを見つけた)。

交通機関の問題

 ATACという市営の交通機関運営組織は、13億ユーロ(1430億円)の負債を抱え、うち7億ユーロ(770億円)は、車両の取り換えパーツをこれま で提供して納品業者に未払いになっている金額だという。バスは故障も多く、清掃も不十分で(2300万ユーロも清掃につぎ込んでいるのに!)、15路線で バス車内にゴキブリが見つかったという。(参照:「abc」)

・道路事情の問題

 更に問題になっているのが市内の凸凹穴でいっぱいの道路事情の悪さである。それが理由で怪我をしたとして市役所に賠償請求が毎日3件あるという。それで、市役所が賠償金として毎年2000万ユーロ(22億円)を支払っているそうだ。(参照:「abc」)

無策を露呈し市民の心が離れる

 こうした問題について、M5S出身のビルジニア・ラッジ市長は選挙中の公約でこれらの諸問題を解決するのは容易であるかのような解決理論を流暢に語り続 けたという。しかし、彼女が実際に政権に就くと、事態は容易ではないというのが分かったようだ。それで陣頭指揮を取って解決に取り組んでいるのかという と、そうではなく、右往左往しているだけ。涙を流しながら、解決に向け取り組んでいると語った場面もあったという。

 更に悪いことに、彼女は、財政支出節約アピールで、イタリアオリンピック委員会が招待したリオ五輪への招待航空券を公の場で破るという行動に出たのだ が、これが裏目に出てしまった。ラッジ市長的には、財政赤字に苦しむローマでの開催に反対しているのだが、在ローマ企業にとっては大きなビジネスチャンス なわけだ。これにより、市民からだけでなく、ローマの企業家をも敵に回してしまったという。

 ポピュリズム政党候補者の直面した現実。果たして若きローマ市長は今後どのような方向に舵を切っていくのだろうか。

<文/白石和幸
しらいしかずゆき●スペイン在住の貿易コンサルタント。1973年にスペイン・バレンシアに留学以来、長くスペインで会社経営する生活。バレンシアには領事館がないため、緊急時などはバルセロナの日本総領事館の代理業務もこなす。

 

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