パレスチナ報道、「被害者」規定の偏向 イスラム思想研究者、麗澤大学客員教授・飯山陽

 

【新聞に喝!】パレスチナ報道、「被害者」規定の偏向 イスラム思想研究者、麗澤大学客員教授・飯山陽

毎日新聞は7月7日、「イスラエル軍事作戦で住宅900戸破壊 3000人が自宅戻れず」というウェブ記事を出した。この中で国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)の広報官は、パレスチナ自治政府はインフラ復旧にあたっているが「被害は甚大」で支援が必要だと訴え、パレスチナでの戦闘について「不必要に多くの命を奪い、悲しみや痛みをもたらす」と批判した。当該記事はイスラエルを圧倒的強者であり加害者、パレスチナを無辜(むこ)な弱者であり被害者と規定し、パレスチナに加害者の側面があることには全く言及しない。

同じく当該記事に言及はないものの、日本は1993年以来、パレスチナに22億ドル以上を支援してきた。UNRWAへの拠出金は世界で5番目に多い。パレスチナに対する支援はすでに極めて手厚い。

一方、当のパレスチナ自治政府は昨今、中国に急接近している。

6月に訪中したパレスチナ自治政府アッバス議長は習近平国家主席と会談、中国国営テレビのインタビューで中国は私利私欲ではなく中東と世界の平和だけを追求する誠実な国だうんぬんと絶賛し、中国ならパレスチナ問題を解決できると期待を寄せた

加えて「われわれは中国領土の一体性を支持する」と述べ、中国には歴史的領土のすべてを所有する権利があるとし、その筆頭に台湾を挙げた上で、「われわれは中国に敵対する国に対しては断固立ち向かう」と述べた。

他方パレスチナ自治政府高官のアッザーム・アフマド氏は6月、パレスチナは北朝鮮や中国、ベトナムの革命路線に倣い、歴史的権利に基づき領土の完全回復を目指すべきだと主張した。自治政府が今もテロ実行者とその家族に年金を支払い続けている事実を、日本メディアはほとんど報じていない。

 

かわいそうなパレスチナ」をとにかく支援しろという毎日の主張に賛同し、パレスチナを無条件に支援し続けるのが果たして本当に正しいのか、われわれは再考する必要がある。日本の支援は日本ではなく中国の国益に資するかもしれないし、パレスチナの虐げられた一般市民ではなく過激派の手に渡るかもしれないからである。

サウジアラビアやアラブ首長国連邦、エジプトといった中東諸国も「中国の主権と領土的統一」「一つの中国」原則の支持を公式に表明している。中国は言質をとり着実に外堀を埋めつつある。台湾問題に関して中東諸国は中国の味方だという現実から、目をそらしてはならない。

 

【プロフィル】飯山陽(いいやま・あかり)

昭和51年、東京都生まれ。イスラム思想研究者。上智大文学部卒、東大大学院博士課程単位取得退学。博士(文学)。麗澤大学客員教授。著書に『中東問題再考』など。

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