日銀金融政策決定会合“見直し”の本質 不毛な論議を減らす一助?

高橋洋一

日銀金融政策決定会合“見直し”の本質 不毛な論議を減らす一助?

日銀は19日の金融政策決定会合で、金融政策の現状維持を決めた。と同時に、決定会合の年間開催回数について現在の14回から8回に減らす一方、景気や物 価の見通しを示す「経済・物価情勢の展望(展望リポート)」については現在の全文公表2回、中間評価2回を、全文公表4回へ増やすことを明らかにした。

 さらに政策委員の経済・物価見通しについて現在の「最大・最小を除いた見通し幅と中央値」の公表から「全員の個別見通し」へ、そして議事内容については、議事要旨の公表に先立ち、主な意見を1週間後に公表するなど、2016年1月から変更することを決めた。

 決定会合の回数は減るが、米連邦準備制度理事会(FRB)や欧州中央銀行(ECB)は年8回なので、まったく違和感はない。年4回の経済・物価見通し公表も世界の標準なので、これも当然だろう。

  筆者が注目しているのは、政策委員の経済・物価見通しについて、これまで、すべての政策委員の見通しのうち最大値と最小値を除いた幅、それらの中央値だけ が記載され、政策委員個人のものがまったくわからなかったが、来年からは政策委員全員の個別見通しが公表されることだ。

 筆者は、経済学 で論を戦わせるときに常に違和感を覚える。筆者のバックグラウンドである自然科学の場合には、勝負をつけるのは比較的簡単だ。作った理論に基づき予測し て、実験を行ったり自然現象を観測したりすればいい。そして、予測が当たっていれば、その理論のほうが正しいと思うだけだ。

 経済学は社会科学だから、実験ができないにしても、理論から将来予測をすることができる。それなのに、経済学者は議論ばかりして、誰も予測しようとしな い。金融機関のエコノミストやアナリストという人たちは、予測するが、単に商売のためのネタ作りなのか、さっぱり当たらない

 いわゆる「デフレ派」は、これまで金融政策ではデフレ脱却できない、失業率は低下しない、逆に金融緩和すると国債暴落、財政破綻する-などと主張してきた。

  ところが、アベノミクスの異次元緩和の結果、消費増税さえなければデフレ脱却しただろうし、失業率はデフレ派の予想をはるかに下回っている。国債暴落も起 こらず、財政破綻にもなっていない。実績データで勝負あったはずであるが、デフレ派学者やエコノミストは相変わらず跋扈(ばっこ)している。

  日銀の政策委員の中にも、金融緩和をやめるべきだと主張している人もいる。その人の経済・物価見通しは絶対に外れているはずだ。というのは、緩和をやめる べきだという人は、失業率が下がらず、物価が上がりすぎるという見通しに基づいているはずだからだ。政策委員の中で、誰の経済・物価見通しがよく当たって いるのかがわかれば、その委員の政策提言が最も確かであろう。

 決定会合の開催回数が減ったことを問題視しているマスコミもいるが、政策委員個人の見通しがわかるのだから、年間で見れば情報量は増える。その分、質の高い記事を書いてほしいものだ。 (元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

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