中心街の衰退に拍車
釧路市の複合商業施設「アベニュー・クシロ」が、8月末にも閉店することが明らかになった。
利用者や中心街の商業者に驚きや落胆が広がる中、閉店後の同施設の利用も決まっておらず、中心街の衰退に拍車がかかるとの懸念も出ている。
途方に暮れる利用者
「週2回以上は利用している。閉店は本当に困る」。
医薬品を購入するために来店していた釧路市宮本在住の杉浦正夫さん(86)は、閉店を知って途方に暮れた。家の近くにはスーパーがなく、車の運転もできない。
「路線バスで通いやすいのはここだけ。閉店したらどこに行けばいいのか」と嘆いた。
同施設には、ドラッグストアの「ツルハ」や衣料品、靴、雑貨など28店がテナントとして入居。1階には、千種類の駄菓子が並ぶ道東最大級の駄菓子コーナーもある。
子ども二人を連れた釧路市文苑在住の主婦(29)は、「子どもが大好きなコーナー。(無くなるのは)残念です。寂しくなります」と肩を落とした。
跡地利用は未定
アベニューは、総合スーパー長崎屋釧路店が撤退後の2003年、施設を運営する武田商事(釧路)がテナントを誘致して再スタート。
最盛期には50店近いテナントが入居したが、11年に中核テナントのスーパー「フクハラ」が撤退。
さらには、大型テナントだった100円ショップ「ダイソー」も閉店するなど、人気テナントの撤退により客足の減少に拍車がかかり、空きスペースも目立っていた。
今年1月には経営効率化や耐震化対応のため、3階から5階を閉鎖して売り場を1、2階に集約。しかし、収入源のテナント賃料が激減し、コストの圧縮を図ったが赤字経営を改善できなかった。
近年は施設の老朽化も激しく、外壁タイルの剥落も目立つ。
今後は、築40年の施設の改修なども想定されるが「多額の費用をかけても、テナントの増加が見込めない」と閉店を決断した。
同社は3月27日にテナントを集めて説明会を開き、8月末から9月上旬に閉店する意向を正式に伝えた。
物販店の店主(71)は、「いつか来ると覚悟していた。施設も老朽化し、仕方がない」と諦め顔。
別の衣料品店の店主も、「中心街では営業は厳しい。(アベニュー・クシロの)閉店とともに店を畳もうと思う」と静かに語った。
姿消す大型店
釧路市は、人口17万人を数える道東の中心都市。
しかし、郊外に大型店の建設が進む一方で、中心部では1990年代から2000年代にかけて、丸井今井やKOM、オリエンタルデパート、丸ト北村、パルコ、ステーションデパートなどの大型店が相次いで撤退。
アベニューの閉店によって、釧路の駅前から全ての大型店が姿を消すことになる。
釧路駅西商店街振興組合の山口和泉理事長は、「閉店により相乗効果が失われる」と中心街の集客への影響を懸念した。
同社の菅原忠管理部長は、「長崎屋時代から含めて40年間営業してきた。長い間市民に利用して頂き、感謝している」と話している。
なお、閉店後の跡地利用は現時点で未定。
編集後記
アベニュー・クシロ (旧・長崎屋釧路店) の8月末での閉館のニュースにショックを受けました。
旧・長崎屋釧路店は、釧路に住んでいた時、十條サービスセンター、イトーヨーカドーとともに三大デパートして君臨していた存在でした。
地方都市の衰退というのは、少年時代の思い出の建物が消えていくことなのかもしれません――。
【記事引用】「北海道新聞」「都市商業研究所」
【画像引用】「アベニュー・クシロ」「釧路愛好会 ~くしろよろしく~」