さて、話を進めヨウ
仮説として、聞いて下さい
…勅使接待の三日目の朝、寝つけなかった綱吉は目を真っ赤にして起き上がった
…それから、思い詰めた
絶対に、絶対にとっちめてやる、(今の言葉で言えば、)
あの、ふぬけの、たわけの2人めが!今度は絶対に粗相をさせないからな!
2人とは、指南役の吉良上野介と、2人の勅使達を担当した浅野内匠頭だった
同時に院使の方の接待を担当していた伊達左京亮は関係なかったが、この際、似たような失敗をしないように、彼にも釘をさしておく必要があった
そこで綱吉は、儀式の始まる数時間前に、彼らに使いをやり、他の大名よりかなり早めに登城させた…
まず初めに吉良と伊達が呼ばれ、江戸城の広間に横に並んで平伏し、そこへ綱吉が入ってきて、前方の一段高い座敷に座った
両側には、2人の小姓が長刀と太刀を持ち、控えた
…そこで綱吉はえんえんと、愚痴と叱責を述べたてた
その方達、なんと心得おるか、特に吉良よ、貴様は指南役を務めておるのか
しっかりせい
伊達の前で恥をかかされた形の吉良は、綱吉の叱責の原因は聞いてわかったが、ただ、はい、はい、申し訳ございません、と言うしかなかった
内心、困った上様じゃ、何も勅使殿は不興でおいででないのにのう、やたら勘ぐられるお方じゃ…
とつぶやいていた
みな:お前は、吉良の内心の声まで、わかるんか?!
わい、制して:まあ、細かいことは気にせず、行こうやないか、それで、
長々と一人かもねん…やなかった、説教が続き、やっと伊達は解放された
吉良は、その場に残れと、言われた
後から、浅野内匠頭が来るからだ
…伊達が部屋を出て廊下を歩くと、呼ばれてやって来た浅野とすれ違ったので、挨拶を交わした
浅野は、一体何事だろうと、いぶかしみながら、部屋へ入った
そこには異様な雰囲気が漂い、一瞬、鬼がいるのかと見間違うほど、憤怒の表情の綱吉がこちらをにらんでいた
まるで、髪の毛が逆立っているようだった
浅野は冷静さを装い、へいつくばっていた吉良の右隣 (廊下側) に同じように座り、お辞儀をして挨拶をした
そして、
「お召しの件、いかがいたしましたでしょうか…」
と問いかけると、
「いかがではない!」
と、怒声が飛んできた
それから、えんえんと、今度は伊達に対するよりもっと激しく厳しく、説教と叱責が続いた
濡れ衣ではないが、かといって些末な出来事で、浅野も吉良も、何故上様がそこまで1つの小さな、ミスとも言えぬミスに執心なさるのか、わからなかった
ただ、日頃の生類憐みの令を見てもわかるように、時に神経質になられるお方だとはわかっていたので、2人共とりつくろい、とにかく儀式が始まるまでにこの怒りを解いておかねばと、思った
2人はただひたすら、口答えせぬよう、はい、はい、おっしゃる通りでございます、大変申し訳ございませんでした、今後気をつけます、と従順に繰り返していたが、あまりに長く説教が続き、そろそろ儀式の支度もあるので、吉良がたまりかねて、
「上様、昨日の勤めにつきましては、わたくしも見守っておりましたが、無事、勅使殿達はご機嫌うるわしく…」
と言いかけると、やおら綱吉は立ち上がり、興奮して眉根をつり上げ、
「おのれ、口答えする気か!」
と叫ぶと、左後ろに控えていた小姓から左手で長刀を取り上げ、右手に持ち換えると、段から降りざまに、ざっ!と吉良めがけて振り下ろした
「あっ!」
顔を上げかけた吉良の額を、長刀の切っ先がかすった
驚きあわてて吉良は片手で額を押さえると、後ろを振り向き、「誰か…」と弱々しく言いながら、(長ばかまで、すぐに立てないので、) よつんばいで逃げようとした
「おのれ、逃がさんぞ!」
激昂した綱吉は、2太刀目を、吉良の背中に浴びせた
吉良はのけぞり、前へぐったりと倒れた
この有り様を、吉良の隣にいた浅野は呆気にとられて見ており、すぐには止められず、また、上様をしもべの自分が止めてよいのだろうかと、一瞬迷いがあった
(むろん、長ばかまでは、自分もすぐに立てないし、動けない)
すると、小姓達の叫び声で、隣室側 (廊下の反対側の廊下?)にいた家来達が、障子?を開けて、飛び込んで来た
そして、仁王立ちになっている綱吉を口々になだめながら羽交(はが)い締めにし、長刀を取り上げた
一瞬のことで、どどどっと、一同は綱吉を今来た側の奥に、連れ去った
後には、茫然とした浅野と、痛がってうめいている吉良が残され、医者じゃと誰かの叫ぶ声があり、まもなく医者が薬箱を持って飛んできた
「ここでは何もできぬ、急いで部屋の用意を!」と医者が身近に来た者に呼びかけ、やがて数人が吉良を連れ去り、浅野は一人になった
…まもなく、1人の落ち着いた武士がやってきて、丁重に、こちらへ…と浅野を案内した
彼は、小部屋に通され、しばらく待つようにと言われた
そこは通り抜けができる控えの間のような所で、彼が部屋の中央に正座すると、付き添い役の武士が1人、浅野の右斜め前の隅にこれも正座し、自分は見張られているなと、思った
(続く)
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