米スタンフォード大医学部の研究発表が話題になった。
「人の老化は漸次進むのではなく、
44歳、60歳前後の2期に加齢変化が集中する…」
生活文化の違いというか、
日本人を調査したら、ちょい違う気もするんだけど、と思った。
年代で経験する人生のイベントは大まか類似しているし、
グローバルな時代に、似た食文化の影響はあり得るだろうと納得したものの、
欧米の加齢変化は日本人よりかなり早く起こるのかも知れない。
そう言えばコロナのスウェーデン方式が話題を呼んだ時。
他国(?)の記者がスウェーデンの当事者(高齢者)をインタビューすると、
「若い人たちの為ですから…」てなニュアンスの言葉が返ってきた。
その高齢者夫婦の年齢は60代前半だった記憶がある。
スウェーデン社会は、60歳が現役引退(?)で
『60歳を過ぎたら経済発展には不要な存在、後は死を待つのみ』
そんな意識が社会の中で一般化しているような答えに驚いた。
それにしても日本人の60代前半のイメージより老けた高齢者に映ったのは何故だろう。
「病院は若い人優先です。高齢者は自宅で療養するように…」だなんて。
「Aさんとランチをしてお店を出ようとしたときよ。
”親子でお食事ですか…”と声を掛けられたの。
私たち同級生よ。ショックが大きくて…」
日本人の多くは目鼻立ちのバランスが子供顔だ、海外では実年齢よりかなり若く見られることがある。
母親にされた女性の目鼻立ちのバランスは整っていて、Aさんの子供顔に並ぶと年上に見えたのだろう。
この「見た目の年齢」の要因は、もちろん顔のバランスだけでもない。
少なくとも彼女の見た目年齢は、前述したスウェーデンの高齢者前後で、
実年齢はその10歳ほど上になるんだから。
女にとって(?)、見た目年齢はかなりの関心事のようだ。
先月のこと、近所の女性が激怒して捲し立てていた。
「あたまに来たんだから。なんであんなお婆さんが私より年下なのよ!」
どうやら、ご主人が、彼女より十数歳ほども年上の女性を、
彼女より若いと思っていた事にご立腹のようだ。
でもね、思うに「自分の顔に責任を持て」というのも案外当たっていて、
私たちが情報発信する態度や言動、それも「見た目年齢」を刻んで行くものだからね。
ファッションや化粧の仕方一つをとっても、「見た目年齢」は「実年齢」と異なって映る。
男にあるジェラシーは女にもあって、
上から下へと舐めるようなチラ見をしながら「よく、あんな服着られるわよね」とくる。
半分羨望(?)の眼差しだ。幾つになっても女心は複雑なのだ。
若い少女たちはおばさん達の嫌味な視線を跳ね返しても、
中高年はみんなで同じ穴の狢になり、同族意識で溶け込むことに安堵する。
欲望と怠慢に忠実な時間が積み重なった結果は、
皆で共有すれば怖くないということかな…。
「若くないし、そんな服は似合わないから」
「この体型じゃ着られるわけないでしょ」
言い訳をして、お洒落ごころは欲望と怠慢が蓄積した体形に拒否される。
その怠惰な時間を積み上げたお腹周りが、
あなたが憤慨する「見た目年齢」に加算され、一役、否、二役買うのだから。
ところが、女たちは表向き同じ穴のムジナに入り込んだ振りをするのだけれど、
何故だか、たった一歳の歳の差すら大きな出来事のように固執をするのだ。
エステや化粧品、美容と健康サプリなど
「効果は個人の感想です」と小さく表示された一行は見て見ぬ振りしてあれこれ購入。
キャッチコピー「簡単に痩せられます」に誘惑され、ハウツー本も購入。
女心を逆撫でし、不安を煽ったりして美健マーケットの商戦は花盛りだ。
美しくありたいのは男も一緒で、男性化粧品も男性美容整形も大きなマーケット。
数十万円は掛かるサロンの脱毛や美顔は少年少女もターゲットにし始めた。
美顔施術やネイルサロンは「男のくせに」とか、「いい年をして」という嫌悪の対象ではなく、
そう言う美意識が若者受けがするし、男のたしなみという時代になったようだ。
周りを見わたすと、腰やお腹周りが立派な中高年って多い。
そう、「筋トレサポータ」をしている女性陣、十年選手の経歴を持つにも拘らず、
彼女たちお腹周りは立派すぎる。それでも、そんなお腹周りも解消されるから。
そう、中性脂肪・体脂肪も様々な対処商品が開発されて、
スマートな体系をゲットできる(幻想?)らしいし。
それにね、近い将来、人類を悩ませてきた「年齢」というカテゴリーは意味を持たなくなるかも。
「年を重ねていけば一つひとつ無くしてゆくものがある、
それをどのように受け入れていくかが大切だ」なんて精神論、それは過去の話で、
「一切にわがものなし」じゃなく「一切にわがものあり」だ。
そう、近代化していく日本の貧しさを象徴したドロドロの道路が、
アスファルトに整備されていくと、未舗装の道路に貴重な文化財を見つけたかのように、
豊かな時間と郷愁を感じるというのもいかがなものかってね、司馬遼太郎が皮肉った話。
普遍的な価値観だと思っていた支えも、全て気ままにゆらぐ時代だしね。
どちらにしても、詰まるところ不動の価値などないということ。
表現の自由という偏った認識の価値観などもね。そう同情や共感が高らかに闊歩する社会もだ。
でもね大丈夫、そもそもいい加減な不動の価値など揺らいだって、誰も置いて行かれはしないから。
何処かの立派なスローガンにあるでしょ。
「誰一人取り残さない」って…
美容整形は当たり前になったし、デザイナーベイビーもリアルな時代。
老化防止の先端科学、きっと、IPS細胞で若返りという人類の夢も夢ではなくなる時が来る。
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「iPS細胞をつくるための4種類の遺伝子を限定的に使って、
細胞を若返らせる研究が進んでいます」
『還暦から始まる』講談社+α新書/山中伸弥・谷川浩司著より
なんだかな~~