日記の皮を被った何か

駄文垂れ流し。

昔の思い出にフィクションを大量投入してみる

2019-04-23 10:44:25 | 日記

無駄に蒸し暑いその夜、僕は酷く後悔をしていた。

当然の事を主張しただけなのに何故か一人で暗い山道を懐中電灯の頼りない灯りと共に歩いていた・・・


この春、高校を卒業し専門学校へと進学した僕はとある地方都市で一人暮らしを始めた。
不安と期待に胸を踊らせていたがいざ一人暮らしを開始しても劇的な変化はなかった。
本質が変わっていないので当然である。
どこをどう切り取ってみても僕は僕のままだった。

強いて変わった所と言えば家事は全て自分でこなさなければならなくなった事と毎日の挨拶に対して応えてくれる同居人がいなくなったくらいだろうか?

その当時の僕の数少ない楽しみの一つに趣味の事についてのサイト運営があった。
しかしながら我が家にはパソコンはあれどインターネット環境が無かったし、この頃はまだ今のような月定額での常時接続などというのはごく一部にしか普及していなかった。
なので普段からサイトの更新や内容の編集は自宅で行いアップロードとBBSでのやり取りなんかは学校のパソコンで行うというのが日課であり1年365日8時から18時まで開放されていたこの環境は実にありがたかった。

そんな日課をこなしていたある日唐突に僕に声をかけてきたのがルイだった。
声をかけて、といっても普通の挨拶程度だったが異性に対してあまり免疫の無かった僕からしたら驚くには充分な出来事だったし当然の事になかなかに挙動不審な反応を返していたように思う。

その日限りの事かと思っていたらほぼ毎日それが続きいつの頃からか普通の会話が増え気が付けばいつも一緒に遊びに行くようになり、勝手に複製した合鍵でしょっちゅう我が家に入り浸るというなんとも訳の分からない関係になった。


遡って冒頭の数時間前の事

その日もご多分に漏れず奴はいきなり訪れた。
しかし頼れる門番ことドアチェーンが行く手を阻む。

わずかな隙間からは抗議の声がとんでくる。
流石に近所迷惑なので用件を尋ねると近くで遊んでいたが家まで帰るのが面倒になったので泊めなさい。と上から目線の要求。

辛うじて公共の交通機関は動いている時間なので素直に帰るように促すも

「ならば玄関前で寝る!季節的に死にはしないさ!」

と、謎のサムアップ

素直に帰るという選択を放棄したこの人が風邪を引こうが蚊に喰われようが正直知った事ではないが本当にこのまま寝られては僕の方が社会的に死にかねない。
一つ溜め息をつき小さく両手を上げ降参の意を示すとドアの隙間には満足気な笑顔が現れた。
実の所、僕はこの人の笑顔に多少の被害ならあっさり水に流してしまう程度には弱かったりする。
我ながら実にチョロいとは思うが世の年頃童貞男子など概ねこんなものだろう。

かくして見事我が家への侵入を果たした奇人は鞄から1本のビデオテープを取り出し勝手にビデオデッキへそれを押し込む。

「夏と言ったらコレだよね~。」

小さなブラウン管に映し出されたのは所謂怪談物の映像作品だ。
どこかで見聞きした事があるような内容の短編がいくつか収録されている良く言えばオーソドックス、悪く言えばありきたりな代物だった。

それでも怪談の類が好きな僕は先の展開なんかを予想しながら視聴し、それなりに楽しんでいたのだが持ってきた張本人は退屈だったようで途中で汗を流したいからシャワーを浴びると中座する有り様だ。

一時停止ボタンを押し、一応再生を停めておくか確認を取ると

「それ前に見たやつだからいい」

では何故持ってくるものにコレをチョイスしたのか、御丁寧にテレビ番組の録画とかではなくわざわざここに来る前にレンタルショップで借りてきているのに。

そんな事をぼんやり考えている間にもルイはいそいそと小さなタンスから勝手にバスタオルと何故か収納されている彼女の下着を持ってバスルームへと消えていった。

シャワーを浴びている女性を無言で待つのも自分の中で何かバツの悪い物があるのでブラウン管の中で恐怖の表情を浮かべたままのオッサンを自由にしてやる事にした。

テープの内容が終わる頃ルイがバスルームから出てきた。

・・・下着姿で。

慌てて目を逸らしちゃんと服を着るように抗議をするも
「暑いから嫌。それに家ではパンイチが標準だし。ブラしてるだけでも大したものよ?」
うん。あなたの家であなたがその格好なら何も問題はない。
しかしここは僕の家であって僕という男の視線があるのだ。

この状況で咄嗟に考えたのは3つ
①誘っている。
②手を出せないヘタレ認定。
③そもそも男と思われてない。

「まあ、どうせアンタ手を出す度胸もないヘタレだし」

どうやら正解は②のようだ。
が、面と向かってヘタレ呼ばわりされて黙っているのも癪なので食ってかかるとルイは不敵な笑みを浮かべて呟いた。

「じゃあ、ヘタレじゃないって証明してみる?」

・・・数分後僕はバイクのエンジンをかけていた。
どうしてこうなった?
あの流れなら普通は男女のあれこれではないのか?

「県内のお爺ちゃん家の近くに出ると有名な廃墟があります。」

バイクの暖機が終わる頃身支度を終えたルイが玄関から出てくる。

「なのでこれからそこへ肝試しに行きます。」

いつの間に用意したのか自分用のヘルメットを被り僕の後に跨る。

「ちゃんとやりきったらヘタレ認定は一時撤回してあげます♪」

乗り物的にある程度密着しなければならないが暑苦しいからあまり密着するなと言ってしまうあたりが童貞なりのしょうもない意地だ。

運転手のやる気のなさが伝染したかのようにノロノロと二人を乗せたバイクは都市部を離れ同県内の山間部を目指して走り出した。


前振り長くなりすぎたので続きは後日(誰も楽しみにはしてないだろうけど・・・)



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