夏の体育の授業で、その日はプールの日でした。
自由時間になって、初めのうちは浅い所でひとりでふざけていた僕ですが・・・
知らないうちに中央の深いほうへ移動してしまい、ついには足でぴょんぴょん跳ねないと水面から口が出ないような状態にまでなっていました。
大変です。
だって、その頃の僕はほとんど泳げなかったのですから。
ところが、あっぷあっぷしながらも、その時の僕は溺れているという自覚がありません。
ぎりぎり息はできていたからでしょうか。
なので、「助けて」とも叫びませんでしたし、手は上げようとすると体が沈んでしまうので水中におろしたままです。
これって、今でいう「子供は静かに溺れる」という状況だったのかもしれません。
(イメージ)
ほかのみんなは、思い思いに遊んでいて誰も僕を見ていません。
その時、プールサイドにいた担任の先生が僕の異変に気付き、ものすごい勢いで走ってきて水に飛び込み、僕を引き上げてくれました。
半分溺れかかっているくせに、ちゃんと見えていました。
もうすこし先生が気付くのが遅かったら、僕はプールの底に沈んでいたことでしょう。
普段は物静かでおっとりした感じの女性の先生でしたが、僕を助けに来てくれた時は別人のようでした。
プールサイドに上げられ、みんなに心配そうにのぞき込まれて、初めて事の重大さに気付きました。
先生、ごめんなさい。