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報告書のPDF: The Journal of CESNUR, Volume 8, Issue 6
解説
2022年の安倍元首相の暗殺事件を契機に、日本政府が統一教会(現・世界平和統一家庭連合)に対して解散請求を行う動きが本格化しました。この報告書はフランスの弁護士パトリシア・デュヴァル氏によるもので、日本の解散請求が国際人権基準に反していると指摘しています。
具体的には、長年にわたり信者が脱会させられるために拘束される「脱会屋」問題や、「公の福祉」という曖昧な概念を用いて信教の自由が制約されている点が挙げられています。日本では新たに「不当な寄付勧誘を防ぐ法律」や「特定の不法行為の被害者を救済する法律」も制定され、これにより統一教会の信者や資産が厳しく監視されています。
また、未成年の信者を対象とした「カウンセリング」制度や、学校での人権教育の一環として「SOSレター」を通じた家庭からの脱出支援も提供されており、政府の新たな脱会プログラムとして機能する可能性があると報告書は指摘しています。
デュヴァル氏は、日本政府が未科学的な「洗脳」理論に基づき、統一教会の排除を図ることで、信者の自由意思を侵害していると批判しています。この報告書を通じて、日本の信教の自由に対する取り組みのあり方が問われています。
詳解
1. 背景
報告書は、統一教会(現・世界平和統一家庭連合)が日本政府によって標的にされ、解散手続きを受けている状況について述べています。特に、2022年の安倍晋三元首相の暗殺が契機となり、統一教会に対する非難が再燃しました。安倍元首相は、統一教会系団体である「平和連合」のイベントに参加したことがあり、犯人はその支持を批判して事件を起こしたと述べています。
2. 国際人権法との対立
デュヴァル氏は、日本政府の解散請求が、日本が加入している「市民的及び政治的権利に関する国際規約(ICCPR)」に違反していると主張しています。この規約では、信教や信念の自由が保証されており、国家はこれに干渉すべきでないとされています。日本政府が信者の宗教的行為を「社会的に受け入れられない」とすることを理由に違法とするのは、同規約の趣旨に反するものであると指摘しています。
3. 強制的な脱会活動(「脱会屋」問題)
1980年代以降、統一教会の信者が家族や脱会活動家によって拘束され、脱会を強制されるという事件が多発しました。この「脱会屋」活動には、一部の弁護士や宗教団体も関わっており、信者が強制的に教会を離れさせられた後、教会を訴えるように仕向けられています。報告書では、これが違法行為であり、信教の自由に対する重大な侵害であると指摘しています。
4. 「公の福祉」を理由にした制限
日本の憲法と宗教法人法には、「公の福祉」の名のもとに信教の自由が制限される規定があります。デュヴァル氏は、「公の福祉」という概念が曖昧であり、国際基準を超えた不当な制約が可能であると批判しています。特に、統一教会の解散請求は、この「公の福祉」に基づくものであり、国際的な人権基準に照らして許容されないとしています。
5. 新しい法律の施行
2022年12月には「不当な寄付勧誘を防ぐ法律」が成立し、宗教団体が信者に寄付を求める際に「自由意思を抑制しないように」する義務が課せられました。この法律は統一教会を標的にしたものとされ、同教会の教義に含まれる「カルマ」や「地獄」の話が「人を不安にさせるもの」として、寄付を無効にする要因になる可能性があるとしています。また、寄付の取り消しが可能な期間を通常の5年から10年に延長する特別措置も盛り込まれています。
さらに、2023年には「特定の不法行為の被害者の救済に関する法律」が成立しました。これにより、解散請求を受けている宗教法人の資産管理が厳格に監視され、被害者が賠償請求を容易に行える体制が整えられました。この法律に基づき、統一教会の資産が凍結される可能性があり、信者の寄付が返還請求されるリスクも増大しています。
6. 未成年信者に対する支援計画
日本政府は、統一教会の未成年信者や元信者に対して「カウンセリング」などの支援を行うと発表しました。この計画では、元信者が「相談員」として訓練を受け、信者の子供たちに「カウンセリング」を提供する仕組みが整えられています。この措置は、信者の子供たちに対して教会の教義から離れるよう促す新たな「脱会プログラム」として機能する可能性があると報告書は指摘しています。
また、教育機関にも「人権教育」が導入されており、統一教会の子供たちが「SOSレター」を通じて家庭からの「逃避」を求めることができる仕組みも整えられています。これにより、政府は信者の子供たちに対し、親や教会の影響から脱却する道を提供していますが、これは信教の自由に対する侵害であるとしています。
7. 結論
報告書は、日本政府が「洗脳」や「精神的な操作」という未科学的な理論を基に、統一教会を排除しようとしていると強調しています。日本の裁判所は、統一教会が信者に「不当な影響」を与えたと見なし、信者の自由意思を無視した判決を下しています。こうした判決を根拠に、日本政府は統一教会の解散を求めているのです。
また、デュヴァル氏は、統一教会に対する差別的な取り扱いが続けば、同教会の信者は日本国内での信仰維持が困難になり、他国に移住するか、信仰を放棄することを余儀なくされると警告しています。この一連の対応は、日本政府が信教の自由に対する国際的な義務を無視している証拠であり、深刻な人権侵害であると強く主張しています。
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この報告書は、統一教会に対する日本政府の対応が、特定の宗教団体に対する過剰な干渉であり、国際人権法に違反しているとする強い批判の内容です。
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