なんとなくおなかがすいたようなすいてないような。
でもなんとなく何かを食べたいような。
お菓子でもなく主食でもなく、
なにか変なものを食べたい気分です。
そんなとき、ふと冷蔵庫にところてんのパックが
あったことを思い出しました。
ところてん!
お菓子じゃないけどおかずでもない、
おとなじゃないけどこどもじゃない、
そんな水色時代のにおいがします。
そこでわくわくと取り出しに行き、パックに切れ目を入れて
ざるにあけようとすると――出てきません。
普段なら多量の水と一緒に透明なところてんが
うねうねとざるに出てくるはずなのに、
水がすこしこぼれただけです。
なんだろうと蓋をはがしてよく見てみると、
でんとした半透明の物体がパックにおさまっていました。
……キレテナーイ
思わずひげそりを思い出しながら途方に暮れます。
そういえばこのまえ100円ショップに行ったとき、
ふと竹でできたところてん機械を見つけて、
なつかしいなんて笑い合っていたのですが、
あれは今日という日の布石だったのでしょう。
あのとき買っていれば……!
でも悔やんだところでどうにもなりません。
とりあえず寒天みたいに、黒蜜ときなこでもかけたら
お菓子としては食べられるのではないでしょうか。
そう思って一列を厚く切って、黒蜜をかけてみました。
きなこは探したけど見つかりませんでした。
食べてみたところ、感想は……気持ち悪かったです。
なんというか、無味無臭といった感じではなく、
基本線がわかめです。
ひとくち食べたあとの鼻腔を通るかおりはまさしく海草。
わかめサラダに黒蜜をかけたものを想像してください。
はげしく後悔しましたが、とりあえずそれは食べました。
でもわかめ系の食べ物となると、甘味では合いません。
せめてすっぱさわやかなしょうゆ方面が必要です。
こうなるとやっぱりところてんをにゅるにゅると出す、
ところてん機械が欲しくなってきました。
むかし家の中で、どこかで見たはずだと
いろいろ探しますがなかなか見つからず、
別の食べ方を考えながらテーブルに戻ったら
食べきったはずがまだ残っていた黒蜜ところてんが
半分くらいありました。
それを食べてみたらやっぱりどうにも気持ち悪くて
さらに探すことにします。
そうして見つけたところてん機械は
たぶん十数年も使われていなかったせいか、
なんだか薄汚れていました。
ひとまず洗ってみますが、内部まで手が届きません。
どうにも薄汚れた感じが気になったのですが、
これを使う以外にあのところてんの塊を
食べる方法も思いつきませんでした。
しかたなくそれを使うことにして、
適当に列で切ったところてんをつかみ、
枠の中にすべらせます。
次に棒を入れてぐいと押せば――四角いところてんが出てきて、
お椀の中でにょろっと広がります。
今まで生きてきて、ところてん機械なんて
はじめて使った気がします。
最後の最後がなぜか切れずに残りますが、
押し出したものが勝手に切れるというのは
微妙にわくわくを感じます。
エッグスライサーにたまごを乗せ、
輪切りに切ったら次を切りたくなる、あの感じがあります。
とりあえずパックを全部押し出して、しょうゆと酢をかけて
わさびを載せて食べてみました。
でもタレになにか一味たりなくて、気分が乗りませんでした。
たべながら残りのところてんを見ていたら、
透き通っていてきれいで、なんだか宝石か何かを
食べているようでした。
ざくろの実のひとつひとつも、赤い宝石みたいできれいです。
こういうのを陽の光にすかしながらさわやかにたべたら
気分だけでも晴れやかに食べられそうだなあと
すすりながらそんなことを考えていました。
ところてんに、夏のにおいを感じました。
むにゅ~ってやりたいです!
夏のにおいを感じますねぇ(磯の匂いかも)
本物の酢はむせないとかどうとか聞きましたけど、
安物しか食べた事無いのでわかりません。
あのむせるのもところてんの一部、というような気がします。
ところてんを押し出すのは人生経験としても
ぜひやるべきです。
切れてないところてんと100円ショップのところ
てん機械を買って
挑戦してみてください。