気分が乗ってきたので、古代日本の結構大きな謎、
八幡の神様について調べてみました。
ざっと調べたら、大元は宇佐神宮だそうです。
今は通称で、宇佐八幡と呼ばれているとか。
宮の名前が宇佐神宮というのは、よくわかります。
宇佐の神様を祭っているので、宇佐神宮というのでしょう。
宇佐の神様、と言えば、役職名としての神様名はすぐに連想できるくらい
とてもわかりやすい神様です。
……では、『八幡』の神様ってなんなのでしょうか?
宇佐神宮は、八幡の総本社だと言っていますが、
『宇佐神宮』のどこに『八幡』の神さまがいるのでしょうか。
宇佐神宮の、役職名としての神様の名前はわかっても
神様の本名はわからないので調べてみたところ、
宇佐神宮の神様は誉田別のミコトという名前で、
天皇の先祖だそうです。
宇佐神宮のご祭神の本名は誉田別のミコト。
そう言われればそうなのかもしれません。
宇佐の神様、ホムダワケを祭る神社で、宇佐神宮。
……じゃあ、『八幡』は?
八幡について調べると、八幡の神は同じくホムダワケだそうです。
が。そんなわけないでしょう。
宇佐神宮の神様がホムダワケだとしたら、
宇佐神宮の意味は、『ホムダワケ神の宮』。
八幡の神様がホムダワケだとしたら、
宇佐八幡宮の意味は、『ホムダワケホムダワケ神の宮』になってしまいます。
二回も同じ神様の名前を繰り返す神社なんて、わたしは知りません。
たとえば、うちのそれなりに近くでアニメで知られるくらい有名なのは、
氷川神社です。
祭神は須佐之男だということです。
それゆえ、氷川神社は須佐之男の神の社と言い換えることができます。
でも、須佐之男の神の社は全国にたくさんあります。
「埼玉の、この神の社のことを話題にするんだ」というときには、
なんと言い換えて区別するかといえば、
大宮氷川神社と言います。
大宮という場所にある、氷川神社、つまり須佐之男の神の社と
いうような意味です。
これを、氷川須佐之男神社と言ったり、
須佐之男氷川神社と言ったり、
氷川氷川神社と言ったり、須佐之男須佐之男神社と言ったりは、
絶対にしません。
ほかの神社でもそうです。
よって、宇佐の神がホムダワケではないか、
八幡の神がホムダワケではないか、どちらかが伺えます。
そこで、八幡がホムダワケと言われているわけを調べると、
宇佐神宮の縁起かなにかでこのような話がありました。
ある日、その後神社になる場所の近くで霊っぽいものがでて、
いろいろやったらところ、その霊が
「自分は誉田天皇廣幡八幡麻呂だ」
というようなことを言ったので、
ホムダワケを八幡の神として祭ることにしたそうです。
……でも。
なぜそれでホムダワケが八幡になるのでしょうか?
そもそも廣幡八幡麻呂と言っているのですから、
ヒロハタ神社になってもいいし、
八幡麻呂神社になってもいいはずでしょう?
スサノオも『スサの男』でスサノオと呼ばれていると考えられ、
スサノオ神社と同時にスサ神社が存在していますが、
スサ神社でもご祭神は『スサノオ』です。
八幡神社のご祭神が『八幡様』と呼ばれるように、
『スサ様』などとは決して呼ばれません。
ここから見ても、八幡さまが
廣幡八幡麻呂と名宣るホムダワケであるというのが
疑わしくなってきます。
ホムダワケの本名に八幡が入っていたというのであれば、
ヒロハタは修飾辞とできるので理解できますが、
そのこどもの名前を見ても八幡を受け継いだ漢字や感じはないので
本名には入っていないのではないかと思います。
でも、現在は八幡神として固定され、
有名な鶴岡八幡宮や岩清水八幡宮などで祀られています。
この神社の名前は、地名+八幡宮(神社の名)だということはわかるでしょう。
氷川神社の大宮氷川神社も、地名+氷川神社(神社の名)というつくりです。
これを踏まえて。
昔、日本史で出たのをうろ覚えで知っている人も多いだろう事件を
すこし見てみましょう。
宇佐の宮のご神託を道鏡が捏造した――と言われる事件、
なんと教えられてきたか、思い出せますか?
……答えは、『宇佐八幡宮神託事件』です。
では、こういった、宇佐の宮で出されてきたご神託、託宣を
集めた書物の名前をご存知でしょうか?
……答えは、『八幡宇佐宮託宣集』です。
わかりますか?
宇佐八幡ではなく、八幡宇佐。
八幡+宇佐+宮です。
本来は、宇佐八幡宮ではなくて、八幡宇佐宮なのです。
日本語は、基本的に大事なものがあとに来る言語です。
たとえば――
「わたしは昨日、東京は立川の駅ビルで、
今までずっと見ているだけだったお店で、
おいしそうだと思っていたソフトクリームを(■■■)」
ソフトクリームを、どうしたのでしょうか?
文章の重要なもの、内容は後ろにくるのがわかるでしょう。
これが英語だと、
「わたしは 食べた ソフトクリームを that...」
などと重要な部分を最初に持ってきます。
物の名前もこれと同じで、日本語では後ろに来るほうが重要なもの、
根幹であることを基本的には示します。
そもそもこの場所は何なのかといえば、『宮』。
最重要なので一番後ろに来ます。
では何の宮なのか。
宇佐の宮なのか、八幡の宮なのか?
といえば……宇佐の宮だから宇佐宮。
どんな宇佐宮なのかといえば、八幡の宇佐宮だから、八幡宇佐宮。
言語的には、このような作りの言葉です。
神社の名前は、基本的に 地名+神社の名 でできていましたから、
これは、八幡(地域名)+宇佐宮(神社の名)であると見え、
宇佐神宮の本体は宇佐宮であり、宇佐の神だということになります。
宇佐神宮の神様がホムダワケで、
八幡の神様がホムダワケだとするなら、
宇佐神社の神様を分霊なりするわけですから、
鶴岡に呼べば鶴岡宇佐宮になり、
岩清水に呼べば岩清水宇佐宮にならなくてはおかしいです。
なのに、宇佐宮は無視して、八幡を神様だとして、
鶴岡八幡宮、岩清水八幡宮というものができています。
つまり、八幡様の正体はホムダワケではありません。
八幡様を正しく祭っている神宮なら、
そもそも名前が宇佐八幡宮であるはずです。
でも、いまだに宇佐神宮の名前は宇佐神宮で、
宇佐の神の宮という名前を掲げています。
それに、八幡様が本当のご祭神であれば、
『八幡宇佐宮託宣集』なんて書かれることはありえません。
ところで。
神社の鳥居には、大きく言って二つの種類があるのをご存知でしょうか。
ひとつは、漢字の『丹』のように、鳥居の真ん中に点があるニブ鳥居。
もうひとつは、丹の真ん中の点のない、名無し鳥居。
ピラミッドでは、壁に王の絵や名前が書かれたり彫られたりしますが、
後の人がそこの王を完全に抹殺したいと考えたときには、
壁画の顔を削り取ったり、名前の部分を削り取ったりしたそうです。
日本の鳥居でも、古代天皇関係者が、自分たちに関連付けようとした、
もしくは自分たちに邪魔になるから抹殺しようとした神様は、
鳥居の額(丹の中点)を奪って名無し鳥居にしているのではないかと、
わたしはぼんやり考えています。
もしかしたら道場破りのように、奪った名前の額をだれかがどこかに
集めていたりするのかもしれません。
なお、宇佐神宮も、伊勢神宮と同じく、名無し鳥居です。
それはそれとして、結局八幡とはなんなのかと言えば、
これだけ神格化されていることを考えても、
八幡宇佐宮という名前から考えても、
もともと八幡という地名があり、
そこの神様だったと考えるのがよさそうです。
ところで、この八幡。
『はちまん』とも『やはた』とも読めますが、
どちらが言葉の源流に近い読みかわかるでしょうか。
これは、『やはた』のほうが源流に近い、古い言葉です。
『やはた』のあとに『はちまん』と呼ばれるようになりました。
でもこの『やはた』も、源流の言葉ではありません。
源流から分岐した、支流の言葉です。
よって、神様も『やはたの神』ではありませんでした。
これについては研究中ですが、
『やはた』のひとつ前の言葉まではわかりました。
でもそれも、源流の手前でしかないことがわかっています。
真の源流はなんなのか、どうしてその言葉ができたのか。
おおもとの元が知りたくてたまりません。
うっかり調べだすと、気づいたら5時間や6時間が
一瞬で過ぎているのでとても危なくてこまります。
藤原が焚書さえしなければ、そんな由来や縁起の資料なんて
簡単に見つけられたでしょうに。