ミシャグジさま、ミシャグチさま。
諏訪のほうで有名な、正体不明とされている古い神様です。
……が。古代神道の研究をしてきたわたしが今回調べたところ、
その正体と本名を明らかにできましたので
一応述べてみようと思います。
Aパートで正体を
Bパートで本名を
述べていきます。
・はじめに
既存の説では、
グジは『宮司』であるとか、グチは『口』であるとか、
シャグジで『石神』であるとか、
さまざまなものがありますが……
どれも取るに足らない、参考にすらならないゴミのような話です。
なぜならどれも、語源研究の常識、
神道研究の常識すらもっていないからです。
ひとつの発音に、ひとつの語源をこじつけようとするのは
単なる駄洒落です。
語源研究とは駄洒落の発表会ではありません。
言葉の語源、言葉の元、神様の本質を考えるには、
ものごとを広く見て、まとめる力が必要です。
参照までに既存の説が何の意味もないという話を。
ミシャグジさまには、
『ミシャグジ』、『ミシャグチ』
という二つの発音がありますが……
語源は『~~グジ』のほうだと考え、
『宮司』であるとか、『石神』であるとか述べる人間は、
もう一方の発音についてはどう説明するのでしょうか。
『宮司』や『石神』が、『~~グチ』という音を生み出したと、
本気で述べているのでしょうか。
その変化が起こった証拠がどこかにあるのでしょうか。
それとも、『~~グジ』だけ考えて、
『~~グチ』は無視しているのでしょうか。
あるいは、語源は『~~グチ』のほうだと考え、
『口』であるとかどうとか述べる人間は、
もう一方の発音についてはどう説明するのでしょうか。
『口』などの言葉が、『~~グジ』という音を生み出したと、
本気で述べているのでしょうか。
その変化が起こった証拠がどこかにあるのでしょうか。
それとも、『~~グチ』だけ考えて、
『~~グジ』は無視しているのでしょうか。
こんな説しか出せない人間は、考えが破滅的に浅すぎます。
自分が考えたいことだけを考え、
述べたいことだけを述べるのにご執心で、
サンプリングも比較検討もろくにやっていないのでしょう。
……やっていればそんな説をまともな顔で
出せるわけがありませんから。
では、本来はどう考えるものか。
言葉や古代神道の常識があるものなら、
どう分析するのか。
それをのべていきましょう。
A-1 大まかなアタリつけ
ミシャグジさまには、
『ミシャグジ』、『ミシャグチ』という二つの発音があります。
常識的に、言葉や古代神道の常識がある者なら、
『ミシャグジ』、『ミシャグチ』という二つの発音があるなら
語源は、両方の音を出せるものだとまず考えます。
なぜなら、言葉とは、神様の音とは
『そういうものだから』です。
……わかりますか?
常識上、歴史上、統計上、『そういうもの』なのです。
常識的に考えても、
現代において意味がはっきりとわかり、
発音も正しくはっきり伝わっている単語が、
揺らぎを起こした上に、意味を消失するなんてことが
あるわけないでしょう?
現在では言葉の意味を失うくらいの言葉と発音だからこそ、
語源があいまいになって発音も揺れるのです。
そんなこと、言葉や神様について調べたことがあるならば
常識として持っている知識です。
そんな常識すら知らない人間がどう述べたところで、
それがまともな話になることはありません。
というところで、くだらない既存説は一切忘れてください。
気にしたところで何の意味もありません。
では、『ミシャグジ』、『ミシャグチ』という
二つの発音揺らぎを作る単語は、
どのようなものが考えられるでしょうか。
……と言えば、『蛇』です。
多少知識のある人であれば、
まっさきに思いつくのは『蛇』ではないでしょうか。
なぜなら、蛇には
『カガシ』
『カガチ』
と名前が揺らぐものもあれば、
『ヲロシ』
『ヲロチ』
と揺らぐものもあります。
『シ』・『チ』の揺らぎでもっとも有名かもしれない単語だからです。
ならば、同じ揺らぎを持つ
『ミシャグジ』
『ミシャグチ』
も、何かしら蛇をあらわしているのだろうと
まず、仮定できます。
ここで、
蛇は『シ』・『チ』なのはわかったが、
ミシャグジさまは『ジ』と『チ』だから違うだろう
と思った人は、言語や神様の常識が欠けています。
一般人なら別に知らなくて当然なので別にいいですが、
研究者がそれを思うなら、ふざけるなと言いたいです。
こんなものは研究以前の常識です。
非研究者向けに軽く述べておくと、
言語の揺らぎの世界では、濁音も清音も同じものです。
たとえば『降り(ふり)』は
『雨降り(あめふり)』でも『土砂降り(どしゃぶり)』でも
『ふ』と『ぶ』は同じもので、概念上は同じ音でしょう?
言葉の発音は口当たりで清濁揺れるので、
揺らぎを考える上ではなにも問題にしなくていいのです。
よって、ミシャグジさまの『ジ』・『チ』の揺らぎは
蛇の『シ』・『チ』の揺らぎと同じ。
これについてはさんざんまとめてきましたので
カテゴリ『自作本』にある、語源のたどり方などを参照してください。
これくらいのことは、語源を考える際の基礎の基礎です。
知っていなければ話にもならないどころか、開始点にも立てません。
これさえも知らないような人が、駄洒落で語源譚をでっちあげるので
世の中の語源はめちゃくちゃにされているのです。
日本の語源や神様の名前、由来は……
どこの考えなしが言い出したのだかわからない、
腹立つ駄洒落ばかりでまとめられているので、
調べているとほんっとうに不愉快で
腹立たしくてしかたありません。
それはさておき。
ここまでのまとめ。
仮定1:ミシャグジ・ミシャグチさまは、音からすれば蛇である
A-2 ミシャグジさまのシンボル
諏訪のほう、ミシャグジさま関連の地には、
棒の上に膨らんだ頭がついたようなものが
飾られている、祭られていることがあります。
人によってはこれを男性器のシンボルだとするようです。
が……ここで、
仮定1:ミシャグジ・ミシャグチさまは、音からすれば蛇である
を思い出してください。
ミシャグジさまは名前からすれば蛇なのですから、
この仮定に基づけば、
棒の上に膨らんだ頭がついているという形は、
男性器どころか、普通にただの蛇であると考えるほうが合理的でしょう。
では、ここまでのまとめ。
仮定1:ミシャグジ・ミシャグチさまは、音からすれば蛇である
仮定2:棒に膨らんだ頭がついたものは、蛇を模したものである
A-3 ミシャグジさまの性質
諏訪のほうでは、ある範囲の四方の角に
柱を立てるというものに目が留まります。
これが何を意味するかと常識的に考えれば……
昔の世界観が連想されます。
昔の宗教や昔の信仰においては、
空や天は丸く、地面は四角いという概念があります。
これを知っていれば、四角に柱を立てて祭るのは、
地面の安定を願っているのだろう、と考えることができます。
つまり、
ミシャグジさまは、地面の安定に関係する神様かもしれない、
と仮定できるわけです。
では、ここまでのまとめ。
仮定1:ミシャグジ・ミシャグチさまは、音からすれば蛇である
仮定2:棒に膨らんだ頭がついたものは、蛇を模したものである
仮定3:四方柱で囲まれるのは、地面の安定に関わるからである
A-4 ミシャグジさまの属性
ミシャグジさまが地面の安定に関わると考えると、
どういう属性を持っているとすべきでしょうか。
大地を守り育て、祭ると豊作や豊猟をもたらしてくれるような
やさしい恵みの神様でしょうか。
それとも、祭らないと厄災をもたらすような、
おそろしい破壊の神様でしょうか。
ここで、周囲の伝説・伝承を探すと、
ミシャグジさまにはイケニエを捧げた、
というようなものが目に留まります。
食べ物などのささげものをするのとは違い、
人間の命をささげるイケニエとは、
突然の大量の死を避けるための、命の少量先払い制度です。
これを行うということは、ミシャグジさまは
突然、大量の命をもぎとっていく性質があるようだと
考えるしかありません。
では、ここまでのまとめ。
仮定1:ミシャグジ・ミシャグチさまは、音からすれば蛇である
仮定2:棒に膨らんだ頭がついたものは、蛇を模したものである
仮定3:四方柱で囲まれるのは、地面の安定に関わるからである
仮定4:イケニエをささげるような、破壊系の神様である
A-5 ミシャグジさまの性別
生贄の話をさらに調べると、
ささげられたのは男の子だった、という話が見つかります。
人間は神に、人間と同様の人間性を見ているので、
男の子を捧げるならば、その相手は女性神です。
ミシャグジさまのシンボルを、立った男性器と考える人は、
このイケニエが矛盾します。
男性同性愛の神など基本的には存在しませんし、
もしそんな特殊な神がいたなら、
はっきりとその性質は残されます。
その言い伝えが残っていない理由を考慮に入れるべきです。
あるいは、このいけにえと神は無関係だと考えれば
全部解消できますが、そんなことをするならば、
世界のすべての事象がばらばらになって意味がなくなります。
手からりんごを離したら下に落ちるのは
『りんごは手から離すと落下する法則』というものがあり、
手からみかんを離したら下に落ちるのは
『みかんは手から離すと落下する法則』というものがあり、
二つはまったく関係ない法則で、重力などは存在しないし考えない
と言っているようなものです。
では、ここまでのまとめ。
仮定1:ミシャグジ・ミシャグチさまは、音からすれば蛇である
仮定2:棒に膨らんだ頭がついたものは、蛇を模したものである
仮定3:四方柱で囲まれるのは、地面の安定に関わるからである
仮定4:イケニエをささげるような、破壊系の神様である
仮定5:イケニエが男の子なので、女性神である
A-6 ミシャグジさまの系統
これまでの仮定4~5を踏まえ、、
女性の神で、人の命を奪い、男性に変にかかわる性質がある存在を
考えます。
そんな神様はいるでしょうか。
……といえば、一般的には、山の神様にその性質が伺えます。
ミシャグジさまも、山に関係する神様だと
まっさきに仮定してみることができます。
では、ここまでのまとめ。
仮定1:ミシャグジ・ミシャグチさまは、音からすれば蛇である
仮定2:棒に膨らんだ頭がついたものは、蛇を模したものである
仮定3:四方柱で囲まれるのは、地面の安定に関わるからである
仮定4:イケニエをささげるような、破壊系の神様である
仮定5:イケニエが男の子なので、女性神である
仮定6:イケニエなどから考えると、山関係の神である
A-7 ミシャグジさまの仮定まとめ
さて。仮定がいくつかでてきました。
この中に、共通する概念をもったものがあるのがわかるでしょうか。
言葉を変えれば、
仮定の中に、共通概念を見出せるでしょうか?
共通を持つのは仮定3~6です。
これは、ミシャグジさまは、
・地面の安定に関わる
・破壊の神である
・命を奪うこともある女性神である
・山関係の神である
というようなものでした。
これらをひとつにまとめられる概念があるのがわかりますか?
女性を思わせる山で、
地面の安定が崩れ、
破壊と命の喪失をもたらすもの
それは――
『蛇』
です。
山の安定が崩れて命を奪う破壊現象、
すなわち山崩れや地すべり、土石流のようなものを、
昔の人は、『蛇』という概念、言葉であらわしました。
現代でもよく知られるのは『蛇崩』という言葉でしょうか。
現代人でも、谷筋を通って土砂崩れが動いていく画像を見れば、
蛇という印象はわかるのではないかと思います。
仮定3~6、あるいは、諏訪で見られるものの四つは、
『蛇』という共通概念から下った行為、下った概念である、と言えます。
では、ここまでのまとめ。
仮定1:ミシャグジ・ミシャグチさまは、音からすれば蛇である
仮定2:棒に膨らんだ頭がついたものは、蛇を模したものである
仮定3:四方柱で囲まれるのは、地面の安定に関わるからである
仮定4:イケニエをささげるような、破壊系の神様である
仮定5:イケニエが男の子なので、女性神である
仮定6:イケニエなどから考えると、山関係の神である
仮定7:仮定3~6は『土砂崩れの蛇』の概念に統括されるものである
A-8 ミシャグジさまの正体
さて。
仮定1は蛇をあらわし
仮定2も蛇をあらわし
仮定3は蛇から出て
仮定4も蛇から出て
仮定5も蛇から出て
仮定6も蛇から出て
仮定7も蛇から出た
ということになりました。
諏訪のほうにある、いろいろな伝説や風習、言葉は
すくなくとも七つが『蛇』という概念でまとめられるのです。
この仮定をすべて満たす結論は、
『ミシャグジさま』は、
蛇に見える、『命を奪う山崩れ』のことである
とするしかありません。
こうするとさらに二つ、諏訪のほうにあるものに
意味も通せるようになります。
一応、参照までに述べておくと、一般論は、
・ミシャグジの名前は、『宮司』や『石神』であり
ミシャグチとは関係しない
・ミシャグチの名前は、『口』などであり、
ミシャグジとは関係しない
・棒に膨らんだ頭がついたものは、男性器である
・なぜかわからないが、柱を四方に立てる
・なぜかわからないが、イケニエを欲する
・なぜかわからないが、イケニエは男の子
というようなものでしょうか。
言い伝えや風習が、すべて蛇をさしているのに、
まとめて考えることもせず、
蛇をふかめることもなく、
すべてをばらばらのままばらばらで放っておくような
投げっぱなしの話です。
神様のことをきちんと調べ、いろいろな神様の情報を集めて
サンプリングしていけばわかりますが、
神様の伝承や神社の形式などは、
神様の本体とだいたいが関わります。
10個の伝説や伝承があれば、後にこじつけられたものは除いて、
まず半分くらいは本体からこぼれおちたものなのです。
全部がばらばらで、なぜかわからないけれど
意味なく存在している、というものではありません。
……ものごとを広く見られない、物事同士の関連を考えられない、
散らばった物事の共通を考えられないという
解釈能力の低い人間が、声ばかり大きく
駄洒落を語源だのなんだの述べようとするのが本当に迷惑です。
受け取る人も、話の正誤や論理などどうでもよく、
偉い人が言えば正しい、
力のある組織に所属している人が言えば正しい、など
考えることを放棄した者ばかり。
ただただうんざりです。
わたしは地位も名誉も所属もない人間ですから、
わたしがどう言ってみたところで
論文書いてみたところで
研究まとめてみたところで、
正誤を考えることさえしたくないような
ごみ以下のものにしか見えないことでしょう。
こうしてまとめてもなんにもなりませんが、
一応わたしの説の補強をしておきましょう。
B-1 ミシャグジさまの確認
さて。
『ミシャグジさま』は、蛇に見える、
『命を奪う山崩れ』のことである
と述べました。
この説は、有名人や有力者が述べるものとはまったく違うので、
わたしが述べる限りは誰にもまともに受け取られないことでしょう。
でも、
『ミシャグジさま』は、蛇に見える、
『命を奪う山崩れ』のことである
とすると、さらに諏訪のほうにあるものに、
意味を通せることに気づくでしょうか。
それは――
というのはいったん保留。
興味があれば以下をどうぞ。
・語源のたどり方・見分け方 4

駄洒落でごまかさない語源研究のしかたとその結果を
人生かけてまとめていますので
意味があると思えば見てみてください。
諏訪のほうで有名な、正体不明とされている古い神様です。
……が。古代神道の研究をしてきたわたしが今回調べたところ、
その正体と本名を明らかにできましたので
一応述べてみようと思います。
Aパートで正体を
Bパートで本名を
述べていきます。
・はじめに
既存の説では、
グジは『宮司』であるとか、グチは『口』であるとか、
シャグジで『石神』であるとか、
さまざまなものがありますが……
どれも取るに足らない、参考にすらならないゴミのような話です。
なぜならどれも、語源研究の常識、
神道研究の常識すらもっていないからです。
ひとつの発音に、ひとつの語源をこじつけようとするのは
単なる駄洒落です。
語源研究とは駄洒落の発表会ではありません。
言葉の語源、言葉の元、神様の本質を考えるには、
ものごとを広く見て、まとめる力が必要です。
参照までに既存の説が何の意味もないという話を。
ミシャグジさまには、
『ミシャグジ』、『ミシャグチ』
という二つの発音がありますが……
語源は『~~グジ』のほうだと考え、
『宮司』であるとか、『石神』であるとか述べる人間は、
もう一方の発音についてはどう説明するのでしょうか。
『宮司』や『石神』が、『~~グチ』という音を生み出したと、
本気で述べているのでしょうか。
その変化が起こった証拠がどこかにあるのでしょうか。
それとも、『~~グジ』だけ考えて、
『~~グチ』は無視しているのでしょうか。
あるいは、語源は『~~グチ』のほうだと考え、
『口』であるとかどうとか述べる人間は、
もう一方の発音についてはどう説明するのでしょうか。
『口』などの言葉が、『~~グジ』という音を生み出したと、
本気で述べているのでしょうか。
その変化が起こった証拠がどこかにあるのでしょうか。
それとも、『~~グチ』だけ考えて、
『~~グジ』は無視しているのでしょうか。
こんな説しか出せない人間は、考えが破滅的に浅すぎます。
自分が考えたいことだけを考え、
述べたいことだけを述べるのにご執心で、
サンプリングも比較検討もろくにやっていないのでしょう。
……やっていればそんな説をまともな顔で
出せるわけがありませんから。
では、本来はどう考えるものか。
言葉や古代神道の常識があるものなら、
どう分析するのか。
それをのべていきましょう。
A-1 大まかなアタリつけ
ミシャグジさまには、
『ミシャグジ』、『ミシャグチ』という二つの発音があります。
常識的に、言葉や古代神道の常識がある者なら、
『ミシャグジ』、『ミシャグチ』という二つの発音があるなら
語源は、両方の音を出せるものだとまず考えます。
なぜなら、言葉とは、神様の音とは
『そういうものだから』です。
……わかりますか?
常識上、歴史上、統計上、『そういうもの』なのです。
常識的に考えても、
現代において意味がはっきりとわかり、
発音も正しくはっきり伝わっている単語が、
揺らぎを起こした上に、意味を消失するなんてことが
あるわけないでしょう?
現在では言葉の意味を失うくらいの言葉と発音だからこそ、
語源があいまいになって発音も揺れるのです。
そんなこと、言葉や神様について調べたことがあるならば
常識として持っている知識です。
そんな常識すら知らない人間がどう述べたところで、
それがまともな話になることはありません。
というところで、くだらない既存説は一切忘れてください。
気にしたところで何の意味もありません。
では、『ミシャグジ』、『ミシャグチ』という
二つの発音揺らぎを作る単語は、
どのようなものが考えられるでしょうか。
……と言えば、『蛇』です。
多少知識のある人であれば、
まっさきに思いつくのは『蛇』ではないでしょうか。
なぜなら、蛇には
『カガシ』
『カガチ』
と名前が揺らぐものもあれば、
『ヲロシ』
『ヲロチ』
と揺らぐものもあります。
『シ』・『チ』の揺らぎでもっとも有名かもしれない単語だからです。
ならば、同じ揺らぎを持つ
『ミシャグジ』
『ミシャグチ』
も、何かしら蛇をあらわしているのだろうと
まず、仮定できます。
ここで、
蛇は『シ』・『チ』なのはわかったが、
ミシャグジさまは『ジ』と『チ』だから違うだろう
と思った人は、言語や神様の常識が欠けています。
一般人なら別に知らなくて当然なので別にいいですが、
研究者がそれを思うなら、ふざけるなと言いたいです。
こんなものは研究以前の常識です。
非研究者向けに軽く述べておくと、
言語の揺らぎの世界では、濁音も清音も同じものです。
たとえば『降り(ふり)』は
『雨降り(あめふり)』でも『土砂降り(どしゃぶり)』でも
『ふ』と『ぶ』は同じもので、概念上は同じ音でしょう?
言葉の発音は口当たりで清濁揺れるので、
揺らぎを考える上ではなにも問題にしなくていいのです。
よって、ミシャグジさまの『ジ』・『チ』の揺らぎは
蛇の『シ』・『チ』の揺らぎと同じ。
これについてはさんざんまとめてきましたので
カテゴリ『自作本』にある、語源のたどり方などを参照してください。
これくらいのことは、語源を考える際の基礎の基礎です。
知っていなければ話にもならないどころか、開始点にも立てません。
これさえも知らないような人が、駄洒落で語源譚をでっちあげるので
世の中の語源はめちゃくちゃにされているのです。
日本の語源や神様の名前、由来は……
どこの考えなしが言い出したのだかわからない、
腹立つ駄洒落ばかりでまとめられているので、
調べているとほんっとうに不愉快で
腹立たしくてしかたありません。
それはさておき。
ここまでのまとめ。
仮定1:ミシャグジ・ミシャグチさまは、音からすれば蛇である
A-2 ミシャグジさまのシンボル
諏訪のほう、ミシャグジさま関連の地には、
棒の上に膨らんだ頭がついたようなものが
飾られている、祭られていることがあります。
人によってはこれを男性器のシンボルだとするようです。
が……ここで、
仮定1:ミシャグジ・ミシャグチさまは、音からすれば蛇である
を思い出してください。
ミシャグジさまは名前からすれば蛇なのですから、
この仮定に基づけば、
棒の上に膨らんだ頭がついているという形は、
男性器どころか、普通にただの蛇であると考えるほうが合理的でしょう。
では、ここまでのまとめ。
仮定1:ミシャグジ・ミシャグチさまは、音からすれば蛇である
仮定2:棒に膨らんだ頭がついたものは、蛇を模したものである
A-3 ミシャグジさまの性質
諏訪のほうでは、ある範囲の四方の角に
柱を立てるというものに目が留まります。
これが何を意味するかと常識的に考えれば……
昔の世界観が連想されます。
昔の宗教や昔の信仰においては、
空や天は丸く、地面は四角いという概念があります。
これを知っていれば、四角に柱を立てて祭るのは、
地面の安定を願っているのだろう、と考えることができます。
つまり、
ミシャグジさまは、地面の安定に関係する神様かもしれない、
と仮定できるわけです。
では、ここまでのまとめ。
仮定1:ミシャグジ・ミシャグチさまは、音からすれば蛇である
仮定2:棒に膨らんだ頭がついたものは、蛇を模したものである
仮定3:四方柱で囲まれるのは、地面の安定に関わるからである
A-4 ミシャグジさまの属性
ミシャグジさまが地面の安定に関わると考えると、
どういう属性を持っているとすべきでしょうか。
大地を守り育て、祭ると豊作や豊猟をもたらしてくれるような
やさしい恵みの神様でしょうか。
それとも、祭らないと厄災をもたらすような、
おそろしい破壊の神様でしょうか。
ここで、周囲の伝説・伝承を探すと、
ミシャグジさまにはイケニエを捧げた、
というようなものが目に留まります。
食べ物などのささげものをするのとは違い、
人間の命をささげるイケニエとは、
突然の大量の死を避けるための、命の少量先払い制度です。
これを行うということは、ミシャグジさまは
突然、大量の命をもぎとっていく性質があるようだと
考えるしかありません。
では、ここまでのまとめ。
仮定1:ミシャグジ・ミシャグチさまは、音からすれば蛇である
仮定2:棒に膨らんだ頭がついたものは、蛇を模したものである
仮定3:四方柱で囲まれるのは、地面の安定に関わるからである
仮定4:イケニエをささげるような、破壊系の神様である
A-5 ミシャグジさまの性別
生贄の話をさらに調べると、
ささげられたのは男の子だった、という話が見つかります。
人間は神に、人間と同様の人間性を見ているので、
男の子を捧げるならば、その相手は女性神です。
ミシャグジさまのシンボルを、立った男性器と考える人は、
このイケニエが矛盾します。
男性同性愛の神など基本的には存在しませんし、
もしそんな特殊な神がいたなら、
はっきりとその性質は残されます。
その言い伝えが残っていない理由を考慮に入れるべきです。
あるいは、このいけにえと神は無関係だと考えれば
全部解消できますが、そんなことをするならば、
世界のすべての事象がばらばらになって意味がなくなります。
手からりんごを離したら下に落ちるのは
『りんごは手から離すと落下する法則』というものがあり、
手からみかんを離したら下に落ちるのは
『みかんは手から離すと落下する法則』というものがあり、
二つはまったく関係ない法則で、重力などは存在しないし考えない
と言っているようなものです。
では、ここまでのまとめ。
仮定1:ミシャグジ・ミシャグチさまは、音からすれば蛇である
仮定2:棒に膨らんだ頭がついたものは、蛇を模したものである
仮定3:四方柱で囲まれるのは、地面の安定に関わるからである
仮定4:イケニエをささげるような、破壊系の神様である
仮定5:イケニエが男の子なので、女性神である
A-6 ミシャグジさまの系統
これまでの仮定4~5を踏まえ、、
女性の神で、人の命を奪い、男性に変にかかわる性質がある存在を
考えます。
そんな神様はいるでしょうか。
……といえば、一般的には、山の神様にその性質が伺えます。
ミシャグジさまも、山に関係する神様だと
まっさきに仮定してみることができます。
では、ここまでのまとめ。
仮定1:ミシャグジ・ミシャグチさまは、音からすれば蛇である
仮定2:棒に膨らんだ頭がついたものは、蛇を模したものである
仮定3:四方柱で囲まれるのは、地面の安定に関わるからである
仮定4:イケニエをささげるような、破壊系の神様である
仮定5:イケニエが男の子なので、女性神である
仮定6:イケニエなどから考えると、山関係の神である
A-7 ミシャグジさまの仮定まとめ
さて。仮定がいくつかでてきました。
この中に、共通する概念をもったものがあるのがわかるでしょうか。
言葉を変えれば、
仮定の中に、共通概念を見出せるでしょうか?
共通を持つのは仮定3~6です。
これは、ミシャグジさまは、
・地面の安定に関わる
・破壊の神である
・命を奪うこともある女性神である
・山関係の神である
というようなものでした。
これらをひとつにまとめられる概念があるのがわかりますか?
女性を思わせる山で、
地面の安定が崩れ、
破壊と命の喪失をもたらすもの
それは――
『蛇』
です。
山の安定が崩れて命を奪う破壊現象、
すなわち山崩れや地すべり、土石流のようなものを、
昔の人は、『蛇』という概念、言葉であらわしました。
現代でもよく知られるのは『蛇崩』という言葉でしょうか。
現代人でも、谷筋を通って土砂崩れが動いていく画像を見れば、
蛇という印象はわかるのではないかと思います。
仮定3~6、あるいは、諏訪で見られるものの四つは、
『蛇』という共通概念から下った行為、下った概念である、と言えます。
では、ここまでのまとめ。
仮定1:ミシャグジ・ミシャグチさまは、音からすれば蛇である
仮定2:棒に膨らんだ頭がついたものは、蛇を模したものである
仮定3:四方柱で囲まれるのは、地面の安定に関わるからである
仮定4:イケニエをささげるような、破壊系の神様である
仮定5:イケニエが男の子なので、女性神である
仮定6:イケニエなどから考えると、山関係の神である
仮定7:仮定3~6は『土砂崩れの蛇』の概念に統括されるものである
A-8 ミシャグジさまの正体
さて。
仮定1は蛇をあらわし
仮定2も蛇をあらわし
仮定3は蛇から出て
仮定4も蛇から出て
仮定5も蛇から出て
仮定6も蛇から出て
仮定7も蛇から出た
ということになりました。
諏訪のほうにある、いろいろな伝説や風習、言葉は
すくなくとも七つが『蛇』という概念でまとめられるのです。
この仮定をすべて満たす結論は、
『ミシャグジさま』は、
蛇に見える、『命を奪う山崩れ』のことである
とするしかありません。
こうするとさらに二つ、諏訪のほうにあるものに
意味も通せるようになります。
一応、参照までに述べておくと、一般論は、
・ミシャグジの名前は、『宮司』や『石神』であり
ミシャグチとは関係しない
・ミシャグチの名前は、『口』などであり、
ミシャグジとは関係しない
・棒に膨らんだ頭がついたものは、男性器である
・なぜかわからないが、柱を四方に立てる
・なぜかわからないが、イケニエを欲する
・なぜかわからないが、イケニエは男の子
というようなものでしょうか。
言い伝えや風習が、すべて蛇をさしているのに、
まとめて考えることもせず、
蛇をふかめることもなく、
すべてをばらばらのままばらばらで放っておくような
投げっぱなしの話です。
神様のことをきちんと調べ、いろいろな神様の情報を集めて
サンプリングしていけばわかりますが、
神様の伝承や神社の形式などは、
神様の本体とだいたいが関わります。
10個の伝説や伝承があれば、後にこじつけられたものは除いて、
まず半分くらいは本体からこぼれおちたものなのです。
全部がばらばらで、なぜかわからないけれど
意味なく存在している、というものではありません。
……ものごとを広く見られない、物事同士の関連を考えられない、
散らばった物事の共通を考えられないという
解釈能力の低い人間が、声ばかり大きく
駄洒落を語源だのなんだの述べようとするのが本当に迷惑です。
受け取る人も、話の正誤や論理などどうでもよく、
偉い人が言えば正しい、
力のある組織に所属している人が言えば正しい、など
考えることを放棄した者ばかり。
ただただうんざりです。
わたしは地位も名誉も所属もない人間ですから、
わたしがどう言ってみたところで
論文書いてみたところで
研究まとめてみたところで、
正誤を考えることさえしたくないような
ごみ以下のものにしか見えないことでしょう。
こうしてまとめてもなんにもなりませんが、
一応わたしの説の補強をしておきましょう。
B-1 ミシャグジさまの確認
さて。
『ミシャグジさま』は、蛇に見える、
『命を奪う山崩れ』のことである
と述べました。
この説は、有名人や有力者が述べるものとはまったく違うので、
わたしが述べる限りは誰にもまともに受け取られないことでしょう。
でも、
『ミシャグジさま』は、蛇に見える、
『命を奪う山崩れ』のことである
とすると、さらに諏訪のほうにあるものに、
意味を通せることに気づくでしょうか。
それは――
というのはいったん保留。
興味があれば以下をどうぞ。
・語源のたどり方・見分け方 4
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駄洒落でごまかさない語源研究のしかたとその結果を
人生かけてまとめていますので
意味があると思えば見てみてください。