大きなレストランの、シェフの統括のような女性が主役です。
主役は自分の姉妹の残した女の子を引き取ることになり、
それによって起こるいざこざが描かれます。
途中で同じレストランに新しくやってきた男性とも
いさかいを起こしながらも親しくなり、
最後は三人で家族のようになるのでした。
……というようなお話です。
誰か(たいていこども)を引き取ることになって
騒動がおきながら主役が変わっていく、という
よくあるタイプの家族再生話です。
この手の話はすでに何本もあるのに、
なぜいまさらこれなのかがわかりません。
見ながら、ここらへんでなにか騒動が
起こるんだろうなと思えば
本当に起こってしまうような、
予想の範囲から出ないようなお話のわりに
起こるできごとは不愉快なものばかりなので
見ていていちいち疲れました。
わたしはレシピとは材料表のように思っていたので
タイトルの『幸せのレシピ』は
幸せの材料表のように受け取っていたので
意味が不明でしたが、どうやら作成手順書と
いったような意味だったようです。
つまり、タイトルを簡単に言い換えると、
『幸せのつくりかた』。
映画の終わりのほうで、人生にレシピがあったら
どんなにいいだろう、というような言葉が出てきますが
それ以外は基本的にありません。
レシピがない、というようなことを言っているので、
人生の幸せのつくりかたも手順なんてなく、
行き当たりばったりでやるしかない、というような
意味の映画なのでしょうか。
見ていて一番気になったのは、引き取ったこどもと
主役との間に完全な断絶があることです。
たとえば主役は姉か妹かを交通事故で無くしますが、
そのこどもの前で悲しみをあらわすのは、
駆けつけた病院で話したときくらい。
主役一人では冷蔵庫の中で泣くシーンがありますが
あとはつとめて普段の自分であろうとします。
こどもがひとりだけで悲しんでいるつもりに
なっているときも、自分だって悲しいということを
一切あらわしません。
それは不自然な気がしました。
また、こどもが自分の中では
レストランを手伝って生活費を稼いでるつもりに
なっていると言って問題になったときでも、
主役はレストランに行かないように言うだけで
どうしてかの理由も、それに対する感想も言いません。
普段余計な事はいうのに、なぜそれを言わないのかは
見ていて不満と疑問が残りました。
問題を問題のまま残して積み重ねて、
次の話につなげようとしているような作為を感じて
いやな気分でした。
主役がすることといったら、料理と文句。
こどもがすることといったら騒動と嫌味。
男がやるのが、二人の仲を取り持つことと、ばか。
とにかく主役もこどもも直接お互いに向けてのことは何もせず、
間に男を挟んで間接的にかかわるしかしないのが、
一切好感ももてないつくりになっていました。
いまひとつでした。