アニメ映画、『サマーウォーズ』を見ました。
一言感想は、『おもしろいです、が』といったところです。
主役の男の子は数学的能力は日本一に近いほどある高校生です。
ヒロインは同じ部活の、先輩の女の子。
主役は夏休みに、ヒロインの子の企みにより、
間に合わせですがヒロインの子の実家に
ニセの恋人として連れて行かれます。
主役たちが実存の人間達が大勢集まる田舎にいる間に
架空の人たちが集まるネット世界に異常がおきて
世界がいろいろ大変になったので、主役と主役の友達、
ヒロインの子の親戚一堂は人脈などを通じて力を得て、
ネット世界と現実世界の危機を救うのでした。
……というお話です。
笑いどころ、見せどころは、ぼちぼちと『用意』されています。
かっこつきの『用意』であるのは、それが配置されている意図が
あまりに透けて見えるように思えるためです。
簡単に言えば、あざとい、でしょうか。
ストーリーは、ざっくばらんに言うならば、
ネット上に発生したコンピュータウイルスを
パソコンを使って駆除する話です。
でも、舞台には電脳世界もあり、人がそこに潜っていって、
戦う手段として肉弾戦のようなことをするのです。
たとえばそれは、映画『攻殻機動隊』での電脳ダイブのようなもの、
映画『マトリックス』でのマトリックス内戦闘のようなものでは
ありますが、見ている最中はまったく思い出せませんでした。
むしろ何かに似ているとずっと思っていて、
ひらめいたのが少年向け漫画です。
たとえば作ったプラモをジオラマの中に入れて
外部にある操縦席で操作するだけで、
あたかもプラモ自体に意志があるように描かれるような、表現です。
でも、そういう漫画は基本的には戦闘がメインの、
『バトルモノ』というジャンルになり、
戦うさまをドラマチックに描くことが目的とされます。
カテゴリとしては、SFではなく、ファンタジーです。
一方、『攻殻機動隊』は、SFのくくりに入るでしょう。
このカテゴリを語弊込みで訳すなら、
ファンタジーは夢物語、SFはフィクションでありながら
現実の息づきを感じさせるものとでも言い換えられます。
その点からこのサマーウォーズを見ると、
リアル世界は日本の夏、日本の田舎、というものを
においたつように描いています。
でももう片方のネット世界は設定がすかすかで、
SFちっくにはとらえられず、あくまでファンタジーとしか
見られないつくりになってしまっています。
たとえばネット世界のキャラが、映画上で
笑う、泣く、顔を覆う、というシーンでは、
プレイヤーはどう操作していたのでしょうか?
自分の感情が極まったシーンだからそれを表現したい、と
ヒロインの女の子が考えて、キャラに顔を覆う動作をさせるために、
『/わーん』などと入力して決定キーを押していると考えるならば
一気に興ざめしてしまいます。
そんなことを考えずに見られればいいのですが、
日常が実際の日常に近すぎるように描かれているために、
現実からつながるネット世界にもその土台での虚構を
求めてしまっていたのだと思います。
逆にそういうものを考えずに、ヘルメット一つ、
腕に装着する機械一つで、架空世界に入り込んだり
現実世界に空想上のものを出したりして戦える漫画に
しっかり熱くなれる年代の子が見れば
すなおに楽しめるかもしれません。
でも、そこを狙っているとするならば、
盛り上がりの一つである花札の『こいこい』が微妙です。
わたしも、こいこいのルールははっきりとはわかりません。
たしか交換のできない、引いて加えるだけで役を作っていく
ポーカーみたいなもので、攻撃手があるうちは連鎖して
高得点を狙いやすいけれど、邪魔をされると
すべてが終わってしまうというような、
半分は運頼みのゲームだったはずです。
けれど、流れではそんな勝負の駆け引きは一切示されず、
無敵モードで進んでいってしまいます。
格闘ゲーム風の場面あり、魔女っ子アニメ風の変身シーンあり、
どこかの映画風の場面あり、という状況では、
それもカードバトルかなにかのパロディか、
見せ場だけうまくつまんでみたようないやらしさも感じました。
その他も、一つの状況をすこしずらした別の状況と重ねて描く、
という手法も頻繁に取り入れられています。
たとえば、ネット世界での戦いと、
現実世界でのまったく関係ない野球の試合の戦い、と
いった具合です。
それもあまりにきっちりずれて、きっちり描かれすぎているので
どこかいごこちの悪さを感じました。
話だけ見るなら、変な言い方をすれば、
『丸ごとのカニが入ったラーメン』を食べているようです。
カニをアピールしたいのはわかりますが、
殻ごと入っていたら食べづらくてしかたありません。
殻をむいてほぐして入れるなり、
だしとしてつかうにとどめるなり、
もっと食べやすい形にして欲しいと思うのです。
お昼にお店に入って、カニラーメンか何かを適当に頼んだときに
そんなのが出てきたら、わたしなら麺だけ食べて
カニはまったく食べられずに残して出てきてしまうかもしれません。
そんな気分になる映画でした。
その他を見ると、声がすべてを台無しにしていました。
声質が合う合わないの問題ではありません。
キャラがキャラになっていませんでした。
個人的には、海外に輸出されたものが
逆輸入されて、日本語でちゃんとした声優が
吹き替えしているものを見てみたいです。
全体としては、見ておもしろかったのですが、
あざとさが鼻についた感じでした。